【エンゲージメント向上⑳】「機械的な作業」を「魂の入った仕事」に変える条件:Kahnの従業員エンゲージメントで解き明かす、従業員が高いレベルで貢献する組織の作り方 [(18) Kahnの従業員エンゲージメント(心理的条件)]

弥左大志

弥左大志

テーマ:エンゲージメント向上

前回は組織との信頼関係を見ました。

今回は「エンゲージメント」という概念を理論化したKahn(カーン)の視点から、人が自然に役割へ自己を投じられるようになるための3つの条件をお伝えします。

なぜ「主体性」は失われ、役割からの「心理的な引き離し」が起きるのか

「役割はこなしているが、本人の主体性が感じられない」マネジメントの現場で、そんなメンバーの「心理的な引き離し(ディスエンゲージメント)」に不安を感じたことはありませんか?

  • 仕事に価値を見出せず、「単なる作業」として無機質にこなしている。
  • 失敗や批判を恐れ、「自分をさらけ出すリスク」を避けて無難な振る舞いに終始している。
  • 身体的・精神的に余裕がなく、仕事にエネルギーを注ぐための「余力」がない。

こうした状態は、単なる性格や気合の問題ではありません。

これらは、メンバーが仕事の役割から自分自身を切り離してしまう「ディスエンゲージメント」の兆候であり、組織の創造性を著しく低下させる要因となります。
今回は、エンゲージメントという言葉の生みの親であるウィリアム・カーンが提唱した、メンバーが「自分自身のすべてを仕事に投じる」ための3つの心理的条件を解説します。

1. エンゲージメントの定義:自分を投げ出す「3つの側面」

心理学者ウィリアム・カーン(William Kahn)は、エンゲージメントを

「組織のメンバーが自分自身を仕事の役割に適合させること」
と定義しました。(真にエンゲージメントが高い状態とは、単に「満足している」ことではなく、以下の3つの側面において、自己を仕事に投じ(情熱を注ぎ、集中をしている)、表現している(他者と心を通わしている)状態を指す)

  1. 身体的:エネルギーを注ぎ、活発に動いている状態。
  2. 認知的:知的に鋭敏で、高い集中力を保っている状態。
  3. 情緒的:他者と心を通わせ、自分の感情を偽らずに表現している状態。

これらが重なり合ったとき、人は自然に役割へ自己を投じ、最高のパフォーマンスを発揮します。
エンゲージメント

2. エンゲージメントを成立させる「3つの心理条件」

メンバーが「自分の時間(能力・エネルギー)を投じても大丈夫だ」と判断し、エンゲージメントを高めるためには、組織が以下の3つの心理的条件を整える必要があります。

  • 有意義感(意味の実感):「この仕事に自分を投じる価値があるか?」という問いへの答えです。自己を投じることで、それに見合うだけの「見返り(精神的な報酬)」が得られるという確信があるときに高まります。
  • 心理的安全性(安全の実感):「自分をさらけ出しても、傷つくことはないか?」という問いへの答えです。本来の自分(意見、失敗、感情)を見せたとしても、非難されたり評価を下げられたりしないという安心感が不可欠です。
  • 心理的可用性(可用性の実感):「今、自分には全力を出すための余力(資源)があるか?」という問いへの答えです。知的能力、感情の安定、身体的な活力が、目の前の役割を遂行するために備わっているという感覚です。

3. 理論運用の注意点:「意欲」だけで解決しようとしない

カーンの理論を現場で活かす際、マネージャーが陥りやすい罠があります。

「可用性(余裕)」を無視した目標設定

いくら仕事に意義(有意義感)があり、人間関係が良好(安全性)であっても、メンバーが心身ともに疲弊し、プライベートで問題を抱えているなど「心理的可用性」が欠如していれば、エンゲージメントは成立しません。
意欲があるならやれるはずだ」という精神論は、可用性の枯渇を招き、「ディスエンゲージメント(離脱)」を引き起こします。

「安全性」なき「意義」の押し付け

どれだけ仕事の意義(有意義感)を説いても、職場が「失敗が許されない」「本音が言えない」環境(安全性)であれば、メンバーは自己を守るためにエネルギーを使い果たしてしまいます。
エンゲージメントは、「安全」という土台があって初めて、意義へと目が向くものです。

「機械的な適合」をエンゲージメントと勘違いしない

ルールやマニュアルに完璧に従っている姿を「エンゲージメントが高い」と誤解してはいけません。
そこに「認知的」「情緒的」な自己表現が伴っていなければ、それは単なる機械的な順応であり、イノベーションは生まれません。

4. 現場での活用方法:診断とリデザイン

メンバーが自己を投じられる環境を創るための具体的なステップです。

3つの問いによる診断

定期的な1on1サーベイを通じて、以下の問いかけを行います。

  1. 有意義感:今の仕事に、自分の時間や能力を投資する価値を感じているか?
  2. 心理的安全性:チームの中で、失敗や懸念を率直に話せているか?
  3. 可用性:今、目の前の仕事に集中できるだけのエネルギー(余力)があるか?

ジョブ・リデザインと環境整備

  1. 意味」を最大化するために役割を再定義(ジョブ・リデザイン)し、「安全」を担保するために失敗を許容する組織規範を構築します。
  2. また、ウェルビーイングへの投資を通じてメンバーの「可用性(余裕)」を守ることも、リーダーの重要な役割です。

マネジメントの本質は「自分を出せる場」を整えること

エンゲージメントとは、外から「高める」ものではなく、条件が整ったときに内側から「溢れ出す」ものです。
リーダーの役割は、メンバーを管理することではなく、彼らが身体的認知的情緒的に自分自身を表現できる舞台を設計することにあります。

作業」をこなすだけの集団から、一人ひとりが「自分自身」として貢献する組織へ。
科学的な根拠に基づいた心理的条件の整備こそが、社員の魂を仕事に呼び戻し、圧倒的な組織力を生み出す鍵となります。

自社にこのような課題はありませんか?

  • 「メンバーが受動的で、指示待ちの姿勢が強い」:有意義感が欠如し、自分を投じる価値を見失っていないか。
  • 「会議で反対意見が出ず、活気がない」:心理的安全性が損なわれ、本来の自分を隠して役割を演じていないか。
  • 「優秀な社員が突然、燃え尽きてしまう」:心理的可用性の限界を見逃し、エネルギー管理を本人任せにしていないか。
  • 「仕事は速いが、ミスや改善の提案が少ない」:認知的・情緒的な関与が薄れ、機械的な職務遂行に終始していないか。

株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、こうした心理学的知見に基づき、現場メンバーが「自分自身のすべて」を仕事に投じられる「仕組み」と「マインドセット」の両面からサポートを行っています。

特に、「科学的アプローチでエンゲージメントを向上させるプロジェクト」による組織文化の再設計や、管理職の皆様がメンバーの心理的条件を適切に整えるための「マネジメントサポート」を通じて、個人の自己表現と組織の成長が同期する「自走する組織」を、私たちと一緒に創り上げませんか?

  • なお、本コラムにおけるエンゲージメント理論の解釈は、弊社独自の観点によるものであり、内容の一部を抜粋してご紹介している点をご承知おきください

次回予告| エンゲージメントを高める「24理論」をそれぞれ解説


組織や役割に自己を投影(重ねることが)できる環境の整え方を解説しました。

この中の「安心」をさらに深掘りしたのが、今のリーダーシップに不可欠な概念です。
次回は、エイミー・エドモンドソン教授の「心理的安全性」について詳しく記載します。

▼過去の「エンゲージメント向上」コラムはこちら

  1. 【エンゲージメント|前提】「管理」から「成長支援」へ:Gallup Q12から読み解く
  2. 【エンゲージメント|全体像】自社に最適なエンゲージメント向上方法とは?24理論全体像
  3. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】①マズローの五大欲求階層説
  4. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】②マクレランドの欲求理論(三欲求理論)
  5. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】③期待理論①
  6. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】④期待理論②(拡張モデル)
  7. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑤ERG理論
  8. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑥ゴール(目標)設定理論
  9. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑦内発的動機づけ理論
  10. 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑧自己決定理論
  11. 【エンゲージメント|(2)個人心理理論】⑨フロー理論
  12. 【エンゲージメント|(2)個人心理理論】⑩自己効力感
  13. 【エンゲージメント|(2)個人心理理論】⑪ストレングス・ベース(強みの活用)
  14. 【エンゲージメント|(3)職務設計理論】⑫職務特性理論
  15. 【エンゲージメント|(3)職務設計理論】⑬JD-Rモデル
  16. 【エンゲージメント|(4)組織心理学】⑭ハーズバーグの動機づけ 衛生(二要因)理論
  17. 【エンゲージメント|(4)組織心理学】⑮社会的交換理論
  18. 【エンゲージメント|(4)組織心理学】⑯公平理論
  19. 【エンゲージメント|(4)組織心理学】⑰心理的契約理論


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弥左大志
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