【エンゲージメント⑩】「命令」するほど、部下は動かなくなる:自己決定理論で解き明かす、指示待ち人間を「自走する人材」に変える科学 [(8) 自己決定理論]
前回は仕事への没頭(フロー)について考えましたが、そもそも「自分には遂行できる」という確信がなければ一歩を踏み出せません。
今回は、折れない心と行動力を支える「自己効力感」を高める4つの情報源について解説します。
なぜ期待は「成長」ではなく「ブレーキ」に変わってしまうのか
「期待を込めて任せたはずなのに、なぜか一歩踏み出してくれない」「良かれと思って褒めても、どこか他人事のように受け流される」マネジメントの現場で、そんなもどかしい状況に心当たりはありませんか?
- 部下の成長を願ってチャンスを与えたのに、「自分にはまだ早いです」と拒絶された
- 成功体験を積ませようとサポートしたのに、「今回は運が良かっただけ」と実力不足を理由に自信を持たない
- 失敗を恐れるあまり、正解を求めて指示を待つだけの「受け身の姿勢」が常態化している
こうした部下の反応は、単なる性格や気合の問題ではありません。
これらは組織全体の実行力を奪い、次世代リーダーの芽を摘んでしまう深刻な「成長のブレーキ」です。
今回は、行動を決定づける中核的な心理要素である「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」をテーマに、部下の「動けない」を「できる」に変える技術を解説します。
1. 自己効力感とは何か? ―「自分ならできる」という確信の力
心理学者アルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感」とは、
「ある結果を生み出すために必要な行動を、自分がうまく遂行できる」という確信・自信
- 「自尊心(自己肯定感)」が「自分は価値がある人間だ」という全般的な評価であるのに対し、
- 自己効力感は「特定の課題をやり遂げられる」という能力への評価を指します。
この効力感が低いと、たとえ能力があっても挑戦を避け、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。
2. 自己効力感を形成する「4つの情報源」
マネージャーが部下の自信を育む際、闇雲に「君ならできる」と励ますだけでは不十分です。
科学的には、以下の4つの経路(情報源)を通じて形成・強化されます。
- 直接的達成経験(過去の成功体験):実際に成功を収める体験。これが最も強力な形成要因です。
- 代理的経験(他者の観察):自分と似た状況の他人が成功している姿を見て、「自分にもできそうだ」と感じること。
- 言語的説得(励ましと論理的説明):周囲からの励ましや、成功の可能性を論理的に説明されること。
- 生理的・情緒的高揚(心身のコンディション):心身がリラックスし、適度な高揚感がある状態。不安やストレスの軽減が自信に繋がります。
3. 「自信がない」のか「組織を信じていない」のか?
部下の低エンゲージメントを分析する際、「2つの期待」マトリクスの視点が不可欠です。
- 効力期待(Can I?):「自分にその行動ができるか」という問い。
- 結果期待(Will it be rewarded?):「その行動に価値があるか、報われるか」という問い。
この組み合わせによって、部下の状態は4つのタイプに分かれます。
- 【A:積極的関与】 報われると信じ、自分ならできると確信している(理想の状態)。
- 【B:自己卑下・失望】 報われるとは思うが、自分には無理だと尻込みしている。
- 【C:抗議・離職リスク】 自分にはできるが、組織が正当に評価しない(報われない)と感じ、不満を抱えている。
- 【D:無気力・抑うつ】 自分には無理で、どうせ報われないと諦めている。
マネージャーは、部下の停滞が「自信(効力期待)の問題」なのか、それとも「評価や組織への不信(結果期待)の問題」なのかを見極め、適切な処方箋を出す必要があります。
4. 現場で活用する:自己効力感向上の具体的アクション
部下の背中を押し、自走を促すためのステップをご紹介します。
- 「スモールステップ」による成功のサイクル化:目標を細分化し、初期段階で徹底サポートを行うことで、「直接的達成経験」を意図的に作り出します。
- ピア・ラーニングの創出:身近なロールモデル(同僚など)の成功事例を共有し、「あの人にできるなら自分も」という「代理的経験」による心理的ハードルの低下を狙います。
- 逆説的フィードバックの回避:単に結果を責めるのではなく、プロセスの改善点と「次はこうすればできる」という具体的な期待(言語的説得)を伝えます。
マネジメントの本質は「可能性」を信じさせること
部下が動けない理由を「やる気」や「性格」の問題にしてはいけません。
リーダーの真の役割は、部下自身が自分の可能性を信じられるように、成功の舞台(直接的達成経験)と信頼できる環境(結果期待の醸成)をデザインすることです。
自己効力感は、適切な「情報源」を意図的に提供することで育むことができる科学的な「技術」です。
メンバーが「自分ならできる」という確信を持ち、自らの足で一歩を踏み出す時、組織の生産性は飛躍的に向上します。その確信を支えるのは、日々の小さな変化を見逃さない管理職の皆様の「観察」と、科学的な根拠に基づいた「環境設計」に他なりません。
自社にこのような課題はありませんか?
- 目標を立てても、現場が実行に移さない:高い壁を前に、メンバーが「自分には無理だ」と立ち止まっていないか。
- 若手の自信をどう育めばいいか分からない:単なる「褒める」マネジメントが、根拠のない気合や精神論に終始していないか。
- 営業フローを整備したが、現場が「自信がない」と動かない:仕組み(ハード)は整ったが、それを運用するマインド(ソフト)の醸成が追いついていない。
- マネジメントが精神論に寄り、若手の離職が続いている:具体的な道筋を示さず「頑張れ」と背中を押すことが、逆に部下を追い詰めていないか。
- 管理職が部下の「できない」の真因を掴めていない:スキル不足なのか、自信の欠如なのか、あるいは組織への不信なのかを峻別できていない。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、こうした心理学的知見に基づき、現場メンバーの実行力を高める「仕組み」と「マインドセット」の両面からサポートを行っています。
特に、
- 「科学的アプローチでエンゲージメントを向上させるプロジェクト」による組織全体の再設計や、
- 管理職の皆様一人ひとりを支える伴走型の「マネジメントサポート」
を通じて、個人の可能性を最大化し、組織全体の底上げを実現します。
そんな悩みをお持ちの経営層・管理職の皆様。科学的なアプローチで、社員が自律的に挑戦し続ける「自走する組織」を、私たちと一緒に創り上げませんか?
- なお、本コラムにおけるエンゲージメント理論の解釈は、弊社独自の観点によるものであり、内容の一部を抜粋してご紹介している点をご承知おきください
次回予告| エンゲージメントを高める「24理論」をそれぞれ解説
「できる」という自信を育むマネジメントの手法を解説しました。
自信がついたら、次は自分の「持ち味」をどう活かすかです。
次回は、欠点修正ではなく強みに注目する「ストレングス・ベース」の考え方を記載します。
▼次のコラムはこちら
【エンゲージメント|(2)個人心理理論】⑪ストレングス・ベース(強みの活用)
▼過去の「エンゲージメント向上」コラムはこちら
- 【エンゲージメント|前提】「管理」から「成長支援」へ:Gallup Q12から読み解く
- 【エンゲージメント|全体像】自社に最適なエンゲージメント向上方法とは?24理論全体像
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】①マズローの五大欲求階層説
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】②マクレランドの欲求理論(三欲求理論)
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】③期待理論①
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】④期待理論②(拡張モデル)
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑤ERG理論
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑥ゴール(目標)設定理論
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑦内発的動機づけ理論
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑧自己決定理論
- 【エンゲージメント|(2)個人心理理論】⑨フロー理論
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