【リーダーシップ】管理職・経営層が「やり切る力=エグゼキュート」を成果に変える実践フレームと行動基準 [リーダーシップ⑥]

弥左大志

弥左大志

テーマ:リーダーシップ

「やる気はあるのに、高い目標の達成ができない…」管理職・経営層のジレンマ

「高い目標を掲げたけれど…」

たとえば、期初に「前年比200%」といった大胆な売上目標を掲げたものの、四半期・半期と進むにつれて「やっぱり厳しいよね…」「そもそも無理だったんじゃないか…」といった“あきらめムード”が組織内に広がってしまう。そんな経験はありませんか?

  • リーダー自身も、「達成しよう」と言葉では言っているけれど、具体的な打ち手が浮かばず、どこか「本音では諦めかけている」ように見える…。
  • 部下からは「結局、気合いだけじゃないか」「指示がふわっとしていて実行しづらい」といった声が漏れ始める――。

これは決して珍しい風景ではありません。

「やる気はある」「目標も掲げている」――それでも結果が出ない。多くの管理職がこのジレンマに直面しています。

  • 「リーダーが結果を出せない。」
  • 「無理だと思った瞬間に“できるわけない”と諦めてしまう。」
  • 「口では“やり切る”と言っていても、本気で達成できると思っていない。」
  • 気づけば「“やったかどうか”という基準になってしまっている…」

これは、現場の多くのリーダーが抱える実態です

目標を掲げることと、実際に“やり切ること”と、”必ず結果を出すこと”の間には、大きな壁があります。
そしてその壁を乗り越えるには、「エグゼキュート=やり切る力」を再現可能な形で組織に根付かせる必要があるのです。

背景にある構造的な問題と影響

目標未達の原因が「頑張り」や「やる気」の問題とされる一方で、肝心の「やり切る仕組み」や「打ち手を決める責任」が個人に任され、組織的に支えられていないことがしばしばあります。

特に、管理者・経営層自身がリーダーシップを発揮しきれず、周囲が難しいと感じている時こそ「必ず結果を前提に完遂する」という実行責任が曖昧になっていることが多いのです。
また、実際の現場では、以下のような状態が継続していることが多くあります:

  • 数字や現場の事実ではなく“願望”で判断している
  • ネガティブな情報の吸い上げが遅く、手が打てない
  • 判断を後回しにし、「やったこと」だけで自己満足してしまう

結果を前提とした「やり切る力=エグゼキュート」は、才能ではなく明確な行動基準として定義できるのです。

管理職が「やり切る力=エグゼキュート」を発揮するための実践フレームと行動基準

フレーム①:エグゼキュートとは?

ジャック・ウェルチは、成果を出すリーダーに共通する4つのEのうち、 最終的に最も重要なのが「Execute(エグゼキュート)=やり切る力」
だと述べました。

  • EXECUTE ~場外ホームランをかっ飛ばせ~

「エグゼキュートのある人物は、常に結果を出す。
当初の目標でさえ霞むほどの成果をあげる。
他の資質も、成果を上げるために活かされなければ無価値である。」
(出典:ジャック・ウェルチ『リーダーシップ4つの条件』)

つまり、エグゼキュートとは「計画通りに動くこと」ではなく、
「どんな状況でも成果を出し切る、最優先思考と行動への執着」を意味します。
エグゼキュート1

フレーム②:エグゼキュートの実践 4つの概念

  1. 現実直視:希望的観測を捨て、現場の事実を言語化し、意思決定に活かす
  2. 決断スピード:100点ではなく、70点でも最速で動く判断が成果を呼ぶ
  3. 成果執着:行動量ではなく“成果”にこだわり、打ち手を即時修正
  4. 人材配置:能力差を直視し、“やる気”だけで判断しない配置を徹底

特にマネジメントの現場では、「慎重すぎる判断」「前提条件の過剰整理」「部下の事情への忖度」などが、実行スピードを著しく阻害しています。
エグゼキュート型の管理職は、完璧を求めず、スピードと打ち手に執着し、結果を取りにいく姿勢を徹底します。
エグゼキュート2

フレーム③:チェックリストで自己評価する

次の10項目は、リーダーの「エグゼキュート力」を日常的に点検するためのスコアカードです。

No.視点チェック内容
1現実直視願望ではなく、現場の事実に基づいて判断しているか
2現実直視楽観的な見通しを疑い、悪い情報ほど早く吸い上げているか
3決断力7割の情報で意思決定している(完璧主義に陥っていないか)
4決断力判断を先延ばしにせず、動いた後に修正しているか
5成果執着毎週「成果指標」を明確に定義し、実行しているか
6成果執着“やったか”でなく、“成果につながったか”を自問しているか
7行動管理ToDoでなく“成果が出る打ち手”を最優先にしているか
8チーム配置パフォーマンスに応じた役割と期待値の見直しをしているか
9フィードバック部下に対し「率直かつ勇気あるフィードバック」をしているか
10巻き込み力チームの中で“自分が責任を持って旗を振っている”と言えるか

実践ステップ:残り1ヶ月でやり切る意思決定力を鍛える

以下は、体感ワークショップのケース事例です。実務に即した意思決定力を磨くための、実行フェーズの問いと解法が整理されています。

ケース条件

  1. 期末まで1ヶ月
  2. 目標:売上3億円に対して進捗70%(残差:9,000万円)
  3. 請求ベースでの達成が条件、追加人員なし、値引きNG

補足条件

あといくら請求すれば達成か?そのために何件成約が必要か?

  • 残差:9,000万円
  • 平均単価:300万円 → 必要件数:30件
  • ただし、今期中に請求できる商談数・金額は限られている

今期中に「請求できる確実性の高い商談」はどれか?

  • 受注済:3,000万円(全額)
  • 見込みA:3,750万円 × 50% = 1,875万円
  • 見込みB:5,600万円 × 30% = 1,680万円

合計請求見込み:6,555万円
このままでは未達:約2,500万円のギャップが残る

質問

  1. 「あなたが営業本部長だったら、この状況をどう突破するか?
  2. 「1ヶ月で“確実に成果が出る”リソース配分に変更するなら、どこに・誰を?」
  3. 「数字を“やり抜く”ために、何を見える化し、何を切り捨てるか?

エグゼキュート3

エグゼキュート思考の手順(回答事例)

【概念①:現実直視】

  • 現在の受注見込から、未接触案件は除外(実現可能性が低いため)
  • A/B案件で6,555万円の請求見込み ⇒ 残ギャップ:2,500万円
  • 受注から請求までのリードタイムを正確に把握し、短縮策を検討(例:請求処理の前倒し)

【概念②:決断スピード】

  • 売上確度が高いB案件に重点人材を再配置(営業メンバーA・Eを集中対応へ)
  • 会議での情報整理を省略し、SlackやKPIシートを即時判断材料とする
  • 未定案件への判断を保留せず、「切る」or「やる」を即決

【概念③:成果執着】

  • KPIの見直し:営業会議では“行動数”でなく“請求進捗率”を日次管理に変更
  • 顧客単価をもとに、「何件でギャップを埋めるか」を明確化(30件で9,000万円を埋める)
  • 「やった感」ではなく、「実際に請求された金額」をベースに自己評価を徹底

【概念④:人材配置】

  • パフォーマンス別に役割再設計:「未達続きのDさんには訪問同行」
  • 「成果率の高いEさんは受注クロージング専任」
  • プレイヤー比率の見直し:管理業務比重が高いCさんの業務を分担し、案件対応に集中
  • 必要であれば、社内別部署からの応援稼働を検討し、人員リソースを再定義

このように、“精神論で鼓舞する”のではなく、「成果を前提とした現実直視」と「役割の再設計」こそが、“やり切る力”を最大化させるリーダーの意思決定です。

実践に向けたチェックリスト

  • 現場事実をもとに判断しているか?(願望ベースになっていないか)
  • 悪い情報ほど早く吸い上げているか?
  • 7割の情報で即決しているか?
  • 判断を後回しにしていないか?
  • 毎週成果指標を定めているか?
  • 「やったか」より「成果が出たか」で自己評価しているか?
  • やるべきToDoより、成果が出る“打ち手”を優先しているか?
  • 役割や期待値を見直し、適材配置を実行しているか?
  • 部下へ率直なフィードバックをしているか?
  • チームの中心として旗振りの責任を果たしているか?

最後に:管理職が“やり切る力”を持つことで組織が変わる

  1. マネジメントにおいて最も重要なのは「結果を出し切る力」です。
  2. EXECUTEは精神論ではなく、行動基準と判断軸に基づいた“やり切る技術”です。
  3. “数字”と“現場”に向き合い、今あるリソースでやり切る。

これを体現できる管理職こそが、組織を本質的に動かす真のリーダーです。

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弥左大志(経営コンサルタント)

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