【リーダーシップ】厳しい意思決定を恐れない管理職へ:チームを動かす“エッジ”の実践フレームとは [リーダーシップ⑤]

弥左大志

弥左大志

テーマ:リーダーシップ

決断できない管理職が生む「現場の停滞」

  • 「成果が出ていない部下に、どう伝えればいいか分からない」
  • 「評価や配置の判断に迷い続け、結局先延ばしにしてしまう」
  • 「組織改革を進めたいが、全員の意見を聞いていたら動けない」

このような悩みを抱える管理職は少なくありません。特に、マネジメント層に求められる「意思決定力=エッジ(Edge)」を持てていない場合、チームの成長スピードや士気、企業の競争力に大きな影響を与えることになります。

背景にある構造的な問題と影響

現代のマネジメント現場では、「スピード重視の成果主義」と「多様性・対話重視の人間関係」の狭間で、意思決定が困難になっている構造があります。その結果…

  • 判断を先延ばしにし、部下の成長機会を奪ってしまう
  • 不適合な人材配置や評価の曖昧さがチームの不満につながる
  • 「言うべきことを言えない」ことで、信頼が低下する

つまり、管理者・経営層のリーダーシップにおける“エッジ(厳しい決断をする力)”が欠如していると、組織の推進力そのものが失われるリスクがあるのです。

チームを動かす“エッジ”の実践フレームとは


フレーム1:エッジ(意思決定力)とは何か?

「EDGE(エッジ)」とは、管理職がリーダーとして持つべき「厳しい判断を下す力」を意味します。ジャック・ウェルチの定義では以下のように記されています。

「エッジのある人物は、競争心に富み、スピードの価値を知っている。自信に溢れ、いつゴーサインを出し、いつストップをかけるかを心得ている。矛盾した状況でも迷うことはない」

つまり、“判断の遅れ”が組織全体の士気や方向性を鈍らせる中、信念を持ってスピーディに決断できることが、管理職に求められるリーダーシップの一つなのです。

フレーム2:エッジを形成する4つの意思決定観

エッジ2
エッジ

1. Rank & Yank(20-70-10ルール)

上位20%には報酬・機会、中位70%には育成、下位10%には配置転換または厳しい判断。パフォーマンスに基づく明確な判断基準を持ち、人材を区別することが重要です。

  • 明確な基準に基づいて人材に対する難しい決断を下す
  • この判断には、単なる数字だけでなく、その人の潜在能力や組織への貢献度を見極める深い洞察力が必要


2. ストレッチ目標(Stretch Goals)

実現可能な目標ではなく、あえて高い壁を設定し、現状を打ち破るための挑戦を促す判断力。未来から逆算し、変革を推進する姿勢が必要です。

  • 現状維持ではなく「未来を切り開くための大胆な意思決定」
  • その目標達成のために、従来のやり方や慣習を打ち破る「決断」が必要


3. 境界なき組織(Boundaryless Organization)

部門・役割・肩書を超えて議論し、情報を交差させる環境を構築。意思決定においても「どこから提案されたか」より「何を言っているか」を重視する姿勢です。

  • 従来の縦割り組織の慣習を打ち破る「変革への意思決定」が必要
  • 異なる部門や役職の人々の意見を統合し、最適な意思決定を下す


4. スピード・シンプル・自信(Speed, Simplicity, Self-Confidence)

複雑な判断を単純化し、迅速に意思決定するためには、「自信」も不可欠です。情報を集めた上で、最後は“腹をくくる”勇気が問われます。

  • スピード : 市場の変化に迅速に対応し、機会を逃さない
  • シンプルさ : 複雑な問題を単純化し、本質を見抜くことで、明確な意思決定を可能にする
  • 自信 : 自身の判断を信じ、迷いなく実行する力(裏付け含む)


フレーム3:9ブロックによる意思決定マトリクス(Rank & Yankに向けた視点)

実際に人材評価や配置判断を行う際、「感覚」ではなく、「成果」と「マインド」の2軸で構造的に整理するのが“9ブロック”です。(1. Rank & Yank(20-70-10ルール)活用時
このフレームでは、縦軸に「業績(パフォーマンス)」、横軸に「行動指針・マインド(価値観への適合)」を配置し、各メンバーを分類します。
エッジ3
たとえば、「成果は高いが価値観に合わない」人材と、「成果はまだだが誠実に行動している」人材とでは、今後の支援・配置方針が変わるはずです。
“数値だけ”“態度だけ”の評価ではなく、両軸のバランスをもって意思判断を行うことが、エッジあるマネジメントの基本となります。

実践ステップ(具体的事例を使って読み解く)

Step1:現状の人材マッピング(9ブロック評価)を実施する

まずは、自チームのメンバーを「成果 × 行動姿勢」で分類し、今の配置や評価が妥当かを見直します。リーダー自身の“思い込み”を排除するためにも、複数の視点(他部署・役職者など)からの意見を加味することが重要です。

特に、組織の屋台骨を支える「安定・実直」な人材が過小評価されていないか、「数字だけのエース」が風土を乱していないかは、エッジの効いた判断を要します。

Step2-1:ストレッチ目標を設定し、成長機会のワークを行う

優秀層に対しては、“現状維持ではない挑戦”を課すことで、さらに視座を引き上げる必要があります。ここで重要なのは「未来逆算で考える目標設定」です。
たとえば、以下のようなワークを経営者、管理者とで実施してみてください。

  • [ケース] 現状の延長線上にはない、非常に挑戦的な「ストレッチ目標」を設定してください。(例: 売上3年で2倍、新規市場でシェア1位など)


エッジ4

Step2-1:“境界”を壊し、異なる視点で意思決定を行う

組織には無意識の“前提”が根付いています。「この人は営業だから」「若手にこれはまだ無理」といった枠組みを超え、フラットな視点で情報を集め、意思決定を行う文化をリーダー自らが実践することで、組織は柔軟性を取り戻します。

[検討軸] そのストレッチ目標を達成するための

  1. 「境界なき」戦略(部門横断、既存の枠にとらわれない発想)を立案してください(この際、リソースの制約や既存の組織構造への影響も考慮に入れる)
  2. 達成のために乗り越えるべき最大の障害は何か、どのような「エッジ」の効いた決断が 必要か、などを議論してください。
  3. なぜ、そのような意思決定かを説明してください。


Step2-3:“シンプルでスピーディ"な視点で意思決定を行う

  • 実行に移すための 「シンプルでスピーディな戦略」を立ててください


“誰が言ったか”ではなく“何を言ったか”を評価軸にすることも、エッジの重要な要素です。

Step4:意思決定の精度とスピードを高める習慣を持つ

エッジのあるマネージャーは、「考え込まない」「迷い続けない」習慣を持っています。

  • 日々の判断に“タイムリミット”を設ける
  • 判断の根拠を3行でまとめる
  • 結果よりも“判断までのプロセス”を振り返る


こうしたトレーニングを通じて、意思決定力は磨かれていきます。

実践に向けたチェックリスト

  • □チーム内で「配置転換」や「ストレッチ配属」を検討したか
  • □部下の評価を“成果”だけで行っていないか
  • □フィードバック時に“伝えるべきこと”を曖昧にしていないか
  • □判断のプロセスを他の管理職と対話しているか
  • □今期、自分が最後に「迷わず決断した」事例は何か
  • □難しい判断を「避けてきたテーマ」は無いか


最後に(導入成果・未来像・管理職としての理想)

管理職の意思決定力(エッジ)は、単に「厳しい人」「白黒つける人」になることではありません。
“チームの未来を信じ、リスクをとってでも前進する”勇気と責任を引き受ける覚悟です。

メンバーの人生、組織の方向性、企業の競争力。
そのすべてが、日々の意思決定に宿ります。今こそ、“避けてきた判断”と向き合い、エッジあるマネジメントを体現していきましょう。

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弥左大志
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弥左大志(経営コンサルタント)

株式会社バリュー・コア・コンサルティング

企業にあわせた「勝ちパターン」を見出し、誰でも再現できる仕組みを構築。研修を起点に、現場での実行までサポートします。120%以上の売り上げアップの実績を誇り、金融機関やファンド会社からの依頼も多数。

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