【リーダーシップ】理念浸透しない組織は伸びない?“理念浸透5ステップ”と”変革組織文化醸成”の手法 [リーダーシップ⑦]
エネルギーが伝わらない…リーダーとしての“壁”に悩む管理職へ
- 「目標を言語化しても、なぜか相手に伝わっていない気がする」
- 「熱意を込めて話しているのに、相手の行動が変わらない」
- 「思うように伝わらず、自分自身の熱意(エネルギー)が落ちてしまうことがある」
近年、マネジメントにおいて「数値管理」や「KPI達成」が重視される一方で、自分の言葉で思いを伝え、相手の心を動かす「エネルギーの発信」がうまくいかずに悩む管理職が増えています。
そのような中で、成果を出す“優秀なプレイヤー”から“信頼されるリーダー”へと役割転換を図る過程において、多くの管理職が壁にぶつかっています。
「人としてどう在るべきか」という“内面の軸”が不明確なままでは、言葉や行動に一貫性が生まれず、結果としてチーム全体のエネルギーが低下してしまうことも少なくありません。
背景にある構造的な問題とその影響
多くの管理職が、日々のマネジメントにおいて「人生観」や「仕事観」、さらには「真摯さ(誠実で誤りを正す姿勢)」や「受容性(他者の意見やフィードバックを受け入れる力)」を言語化・内面化できていないという課題を抱えています。
- 様々な場面で意思決定の軸がぶれる
- 組織としての価値観や文化が曖昧になる
- 下が上司を信頼できず、指示が形骸化する
- 中長期的ビジョンに共感が集まらず、組織の推進力が弱まる
このような悪循環を断ち切るためには、エネルギーの源泉となる「内面・発言・行動の軸」を明確にし、自分自身の在り方を定義することが不可欠です。それが、信頼されるリーダーとしての第一歩となります。
信頼されるリーダーに共通する“内面の軸”3要素とは?
弊社では、クライアント企業の成果創出を何より重視し、数多くの組織支援を通じて、チームを動かし成果を生み出すリーダーの共通項を明らかにしてきました。
【フレーム1】「人生観・仕事観」の有無が及ぼす組織的影響
人生観・仕事観は、自分の意思決定や行動の“ベース”となる土台です。
これが不明確なリーダーは、次のような問いに対して曖昧な反応をしがちです。
- 「会社の飲み会に参加することは義務ですか?」
- 「朝の掃除をすることは義務ですか?」
- 「部下に教えても、なかなか実行しないから自分で数字を作ってはダメですか?」
- 「数字が未達成だけど、プライドが許さないから自分のやり方を貫いてはだめ?」
さらには、
- 「あと1件契約ができれば、目標達成ができるので、どうしても獲得したい。とはいえ、もう最終日の終了時間ギリギリ…。でも、なんで目標達成をしなければいけないんだろう?別に…この目標はものすごく高い目標だし、この目標は達成しなくても良いんじゃないかな?」
という場面において、自分なりの言葉を出すことが出来ないケースがあります。
このような曖昧な姿勢では、価値観の共有も、チームの納得も得られず、自分自身やメンバーのエネルギーが奪われていきます。
一方で、明確な人生観・仕事観を持つリーダーは、判断に一貫性が生まれ、行動の動機が伝わり、組織の文化やチームの安心感を醸成します。
人生観・仕事観がある場合の効果:
- 意思決定に一貫性が生まれる
- 部下からの共感と信頼を得やすい
- 動機付けとレジリエンス(困難やストレスに直面した際に、それを乗り越えて回復する力)の源泉となる
- 組織に価値観ベースの文化を育てる
- ビジョンと戦略に魂が宿る
【フレーム2】真摯さ(Integrity)が持つ本質的意義と
真摯さの大切さ
ドラッカーは、「真摯さ(Integrity)」をリーダーが持つべき最も本質的な資質として位置づけています。
「厳しいプロは、高い目標を掲げ、それを実現することを求める。誰が正しいかではなく、何が正しいかを考える。頭の良さではなく、真摯さを大切にする。つまるところ、この“真摯さ”なる資質に欠ける者は、いかに人好きで、人助けがうまく、人づきあいがよく、有能で頭がよくとも、組織にとって危険であり、上司および紳士として不適格である。」
(『プロフェッショナルの条件』P.F.ドラッカー)
このように、能力や社交性以上に「誠実さ」「倫理性」がリーダーとしての適格性を左右すると、ドラッカーは断言しています。
なぜなら、「真摯さ」は他のスキルや資質と異なり、その土台がなければ、どんなに能力が高くとも、その力が組織を傷つける方向に働いてしまう危険があるからです。
実際、ドラッカーは次のようにも述べています。
「真摯さがなければ、他の資質も害をなす」
つまり、「真摯さ」は単なる“人柄の良さ”ではなく、「リーダーとしての最低条件」であり、それを欠く人材に責任ある役割を与えること自体が、組織にとって大きなリスクとなり得るのです。
真摯さを理解する
では、具体的に「真摯さ」とはどのような行動や判断を意味するのでしょうか。以下の問いを考えてみてください。
Q:以下の2つのケースは、“真摯”と言えるでしょうか?
- A) 不眠不休で患者のために尽力した末、医療ミスにより患者を死亡させてしまった
- B) その薬が患者に害を及ぼすと知りながらも、上司や権力に屈して投与した
→答え:Bは真摯ではない
この違いを理解するうえで重要なのが、古代ギリシャの医師ヒポクラテスの言葉です。
「知りながら害をなすな(First, do no harm)」
これこそが「真摯さ」の本質です。つまり、「知っていながら組織や他者に不利益を与える行動」は、いかに成果を上げているように見えても、“真摯ではない”と定義されます。
補足:真摯さのある組織がもたらす好影響
真摯なリーダーが組織に与える影響は計り知れません。具体的には以下のようなメリットがあります。
- メンバーが本音を話せる「安心安全な場」が生まれる
- 組織全体に倫理観が浸透し、判断の軸が明確になる
- フィードバックや対話が建設的になり、チームの成長速度が高まる
- 外部からの信頼も獲得し、パートナーや顧客との関係性が強化される
特に不確実性の高い時代においては、リーダーの“誠実さ”こそが、最大の安定要因であり、持続的な成果の源泉となるのです。
たとえメンバーの成長のために必要だと分かっていても、その欠点や改善点を指摘せずに黙っていることは、リーダーとしての「真摯さ」を欠いていると言えます。
【フレーム3】受容性による内観:盲目の窓を開く(ジョハリの窓
リーダーには、真摯さに加え、受容性(自分に見えていない部分を理解・受け入れる力)が必要です。
自らを開示し(Check1)、他者のフィードバックに耳を傾け(Check2)、未知へチャレンジする(Check3)ことで、エネルギーの最大化が可能になります。
これは、他者からのフィードバックに真摯に向き合い、自己理解を深める姿勢を指します。
「ジョハリの窓」では、以下の4つの窓があります:
| 領域 | 内容 | リーダーに必要な行動 |
|---|---|---|
| 解放の窓 | 自分も他人も知っている | 自己開示・信頼関係 |
| 盲目の窓 | 他人は知っているが自分は知らない | フィードバックの受容 |
| 秘密の窓 | 自分は知っているが他人は知らない | オープンマインド・誠実性 |
| 未知の窓 | 誰も知らない | 挑戦と成長 |
特に「盲目の窓」を開くには、受容性=他者の視点を内観する力が必要です。
リーダーがこの力を失えば、エネルギーの最大化は困難になります。
実践ステップ(具体的事例を使って読み解く)
STEP1:仕事観の言語化
まず、自分自身に問いかけてみましょう。
「なぜ、私は今の仕事をしているのか?」
「この仕事は、誰に、どんな価値を届けているのか?」
こうした問いを通じて、自身の仕事観を言語化し、リーダーとしての“軸”を明確にすることが重要です。
次に、経営層とのすり合わせを行います。リーダーは、組織の価値観を現場に“翻訳”し、部下に示していく立場です。だからこそ、組織のトップが持つ考え方を正確に理解し、自分自身の言葉で語れるようにしておく必要があります。
以下のような問いについて、経営層と議論を交わし、その意図や背景まで言語化することが求められます。
- 「会社の飲み会に参加することは義務ですか?」
- 「朝の掃除をすることは義務ですか?」
- 「部下が教えても実行しない場合、自分で数字を作ってしまっても良いですか?」
- 「数字が未達成でも、自分のプライドを優先して独自のやり方を貫いても良いですか?」
これらの問いは一見、行動に関するものに見えますが、価値観や判断軸を問う重要なテーマです。
「なぜ、それを良しとするのか/しないのか」まで掘り下げ、組織の価値観を自分の言葉で語れるようにしていきましょう。
STEP2:真摯さと受容性を高める実践(内観の導入)
次に、リーダーとしての**「真摯さ」と「受容性」**を高める取り組みとして、**内観の導入(ジョハリの窓)**を行います。
このステップでは、リーダー同士で相互にフィードバックを行い、お互いの「盲目の窓(自分では気づいていない他者から見た自分)」を開くことを目的とします。
フィードバックを伝える側のリーダーは、「真摯さ」を持って相手に正直に向き合い、
受け取る側のリーダーは、「受容性」を持ってその内容を受け入れ、自らの態度・姿勢を内省する。
このプロセスを通じて、自分では気づけなかった強みや改善点に気づくことができ、リーダーとしての信頼形成に大きな効果をもたらします。
ただし、この「盲目の窓」を開く作業は、自分自身が避けてきた面と向き合う行為であり、心理的に負荷がかかるものです。
そのため、支援者(質問者)側のスタンスが極めて重要です。
内観をサポートする支援者(質問者)のスタンス:
- 意見を押し付けず、問いを通じて気づきを促す。
- 問いかけたら、じっくり待つ。急かすのは支援者側の都合であり、主役はあくまで内観する本人である。
- 誘導尋問を避ける。意図が不明な質問は混乱を招く。
- 相手の言葉を丁寧にメモする。記録をもとに深掘りすることで、理解と信頼が生まれる。
- 質問はシンプルに。漠然とした問いは、思考を妨げる。
- 主役は発表者。常に発表者の気持ちを確認しながら進める。
- 「多く」より「深く」。気づきを一つずつ丁寧に導き、着実な変化を促す。
- 一つのテーマを深く掘る。話題が散乱している場合、深掘りができていない証拠。
- 「なぜ?どうして?」と詰問調にしない。萎縮を招き、内省が妨げられる。
- 納得するのは本人。支援者が結論を誘導してはいけない。
このように、内観のプロセスは「問いの質」と「関係の質」によって大きく左右されます。
リーダー自身が、自らの“見えない部分”と向き合い、他者とともにそれを受け入れる力を高めることが、チームを変える第一歩となるのです。
自己点検チェックリスト|信頼されるリーダーであるために
以下の項目を通じて、あなた自身が“信頼されるリーダー”であるかを自己評価してみましょう。
- □自分自身の「仕事観(何のために仕事をしているか)」を、明確な言葉で説明できる。
- □経営層と共有した「組織としての価値観・正しさ」に基づき、判断や行動に一貫性がある。
- □その判断に対して、自信と説明責任(Why)が持てる。
- □部下や関係者に対して、誠実で真摯な態度を常に示している。
- □他者からのフィードバックを、感情的に拒まず素直に受け止めている。
- □自身の“盲点”や“弱点”にも意識的に向き合い、内省し続けている。
- □現状維持に甘んじず、未知への挑戦を継続している。
- □成果や結果だけでなく、“人格”によって信頼を得ている実感がある。
最後に
仕事観や真摯さ、受容性を持つリーダーは、人格に基づいた信頼と、行動に裏打ちされたエネルギーを備えています。
管理職が本来持つべきエネルギーとは、自分の内面を深く見つめ、他者の信頼を得ながら、組織を前に進める力です。
これは、一朝一夕で身につくものではありませんが、その土台にあるのは、「仕事観」「真摯さ」「受容性」の3つです。これらを意識し、言語化・実践することが、マネジメントの本質につながります。
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