【管理職向け】なぜ同じ相談が続くのか?1on1案件レビューで成果と自走力を引き出す3ステップ[実行マネジメント⑦]

弥左大志

弥左大志

テーマ:実行マネジメント

「この案件、どう進めたらいいですか?」が続く状態から脱却するには

「同じような案件で毎回相談されてしまう」「メンバーの成長スピードに差がある」「自分で考えさせたいが、どう指導すればいいかわからない」
多くの管理職がこうした悩みを抱えています。
特に営業現場では、“案件レビューの質”がメンバーの成長を左右すると言っても過言ではありません。
また、これらの相談が頻発することで、1件あたりのレビューにかける時間が膨大となり、全員に目が行き届かなくなるという課題にもつながります。

背景にある構造的な問題と影響

管理職が1on1でアドバイスする際、体系立てたレビューや育成ステップを持たずに場当たり的な対応をしてしまうと、以下のような問題が生じます:

  • アドバイスの属人化
  • 教えすぎによる依存体質の助長
  • 案件の質的変化に対応できない
  • レビューに時間がかかりすぎて、すべての案件を支援しきれなくなる

育成視点の欠如により、案件進捗だけでなく部下の成長機会を逸してしまうのです。

1on1を活用した案件レビューで成果を最大化する方法とは

弊社では、クライアント企業の成果創出を何より重視し、現場で“使える”マネジメントの再現性にこだわってきました。
成長を促進させるための理想の1on1を実施するために必要な行動原則を、以下の3つに体系化し、仕組み化及び実行サポートをしています。

【フレーム1】人材育成のための教育手法の選定(5段階の育成ステップ)

ステップ育成段階補足説明
1凡事徹底ツールや仕組みがあれば成果が出るため、“当たり前”の基準をつくって徹底する
2仕組み化(ツール化)話すことができるが、ツールや仕組みによる補填が必要
3教育(トレーニング)一つ一つの案件に対する判断はできるが、トーク内容の修正や精度向上が必要
4レビュー・プレビュー同行しなくてもパフォーマンスは出せるが、案件ごとに判断や助言を要する
5同行・同席案件に対する進め方自体がわからず、同行しなければ成果に結びつかない

ステップアップのためには現在地の把握が重要

この5段階は、部下の能力を正しく想定し、成長ステップを上げていくことが重要です。
管理職の工数(時間や労力)にも関わるため、部下が今どのステージにいるのかを把握することが育成効率を左右します。
育成ステップ

【フレーム2】ハードルベースでのHARP手法(案件レビューの型)

  1. Hurdle:障害となる要因を洗い出す
  2. Action:その解決策を考える
  3. Reaction:相手の反応を事前に想定する
  4. Push:さらに一手を考える

構造的に案件を捉える4ステップ

Hurdle(ハードル)は、顧客が「なぜその提案を受け入れないのか」という“障害要因”です。
この障害を的確に整理するためには、BANT(バント)フレームを活用するのが有効です。
BANTとは:

  • B:Budget(予算) … 購買に必要な予算が確保されていない
  • A:Authority(決裁権) … 判断を下す決裁者が不在、もしくは不明確
  • N:Needs(ニーズ) … 現時点では明確な課題感やニーズを感じていない
  • T:Timing(導入時期) … 今すぐの優先事項ではない(先送りされる)

これらの要素は、営業現場における“よくある失注理由”と一致します。
つまり、案件レビューの際に「この案件のハードルは何か?」を問うときには、BANTのどこがボトルネックかを見極める視点を持つことが重要です。
また、以下も併せて意識すべきポイントです

  • リアクションとハードルが一致している場合、アクションが不十分だった可能性が高い
  • Push(さらに一手)とアクションが同じであってはならない

このように、HARPの各要素を切り分けて考えることで、短時間の1on1でも的確な支援と成長を両立できます。
HARP

【フレーム3】課題に応じた育成スタンス(ティーチング・トレーニング・コーチング)

“教える・鍛える・気づかせる”の使い分けが、育成の質を左右します。
問題の本質が「知らない」ことなのか、「やっていない」ことなのか、「再現できていない」ことなのかを見極め、適切なスタンスを選びましょう。

行動レベル対象者の状態上司のスタンス関わり方の粒度
できないやり方を知らないティーチング(教える)手とり足とり(初期)
できないやり方を知っているが定着していないトレーニング(鍛える)定着まで繰り返す
できる再現性が低い/場面で迷いが出るコーチング(気づかせる)問いかけ・内省支援
できる再現性があり自立している任せる(自律支援)承認・任せる

状況によって支援スタイルを変える

部下育成において、「とにかく考えさせる」ことが良いと捉えがちですが、すべての局面でコーチングが最適というわけではありません。
相手の状態に応じて、“教える(ティーチング)”“鍛える(トレーニング)”“気づかせる(コーチング)”という支援スタイルの切り替えが、成果につながる育成の鍵となります。
特に押さえておきたいポイントは以下の通りです:

1.「知らない」状態の部下には、まずは“教える”ことが最優先

理解していないことを「どう思う?」と問いかけても、効果は薄く、時間のロスになります。業務上の基本動作や考え方は、ティーチングで伝えることが必要です。

2.「知っているけれど、やれていない」状態の部下には“鍛える”支援が必要

ここではロールプレイや同行支援など、繰り返し実践する“トレーニング”が有効です。たとえば、「提案の切り返しトークは覚えているが、場面で出てこない」などが該当します。

3.「ある程度できるが、場面によってブレる」場合は“気づかせる”支援が有効

再現性を高めるためには、「なぜうまくいったのか」「なぜ今回は外したのか」といった内省を促すコーチングが有効です。この段階では問いかけによる“思考の深堀り”が鍵になります。

4.「すでに再現性があり、成果も安定している」部下には“任せる”という支援が適切

過干渉になると自立心を損ねるため、信頼して任せるスタンスと、成果を承認するフォローが重要になります。
このように、「どのスタンスが悪いか」ではなく、「どの状況にどの支援が適しているか」という視点で判断
することが大切です。
特に育成初期段階の部下には“教える→鍛える→気づかせる”の順で段階的に支援スタイルを変化させていく設計が有効です。
育成の変化

実践ステップ(具体的な流れを把握して活用する)

  1. Step1:週次のレビュー体制を設ける
  2. Step2:HARPフレームで案件を確認する
  3. Step3:スタンスを明確にし、育成の粒度を調整する
  4. Step4:アクション後の結果(Reaction)を確認し、Pushまでを支援する
  5. Step5:定例で振り返り、再現性を高める

実践に向けたチェックリスト

  • □案件進行における課題を部下が理解(ヒアリング)できているか
  • □案件に対して、行動仮説(次の一手)を立てているか
  • □HARPでPushまで明確になっているか
  • □上司のレビューを受けた後、次の案件に活かしているか
  • □スタンスに応じた支援(教える/鍛える/考えさせる)をしているか

最後に

1on1で案件を育成機会に変えることは、単なる営業成果だけでなく、メンバーの“自走力”を育むことにつながります。
「すべての案件に同行・同席しなければいけない」状態から脱却し、メンバーの段階に応じた適切な関与を実現することで、管理職自身の時間創出にも繋がります。

このコラムの内容は、以下のような企業様に特におすすめです:

  • 案件レビューの精度に課題を感じている営業組織
  • 同じような相談が繰り返されてしまう育成課題を抱える企業
  • 1on1やマネジメントの質を高めたい中小企業の経営層・管理職層

弊社では、管理者育成・マネージャー研修・組織マネジメント支援を一貫してご提供しています。
貴社にあった“成果の出るマネジメント支援”をお求めの際は、お気軽にご相談ください。

会社案内・サービス概要資料】をすぐにご覧いただけます

当社の特徴や提供サービスをまとめた「会社案内・サービス概要資料」「無料相談のご案内」をご用意しています。
「会社案内の資料」はフォーム入力なしで、すぐに内容をご確認いただけます。

ご検討中の企業様へ(1)|VCCの会社案内・サービス全体像ダウンロード

▼無料ダウンロードはこちら(フォーム入力なし)
「会社案内・5つのサービス」PDFを ”今すぐダウンロード” する

パスワード「 VCC2025 」を入力してください

ご検討中の企業様へ(2)|無料相談(予約制)のご案内

弊社(株式会社バリュー・コア・コンサルティング)では、以下5つのサービスを提供しております。

  1. 総合経営コンサルティング
  2. 勝ちパターン構築プログラム
  3. ワークショップ型 リアル研修プログラム
  4. ワークショップ型 eラーニング型 研修プログラム
  5. 講演・セミナー 開催

取材のご依頼や各種サービスに関するご相談・ご質問などに関し、『無料でご相談(オンライン)』をお受けしております。
以下フォームより、お気軽にお問い合わせください。

▼無料相談 予約URLはこちら
>無料相談(WEB)の日程調整をする



【Next Step】次に必要なマネジメント手法を知りたい方はこちら

  1. 【実マネ⑧ | モチベーション】部下の“やる気が出ない”のは“視点のズレ”? モチベーション管理
  2. 【実マネ(統合) | PDCA】PDCAが回らない本当の理由とは?成果が出る“高速PDCA”の実践法

【First Step】前工程としてのマネジメント手法を知りたい方はこちら

  1. 【実マネ① | 基本】管理職が育たないのはなぜ?マネージャー向け”人材育成5原則”
  2. 【実マネ② | 対策_絞込】部下が”やりきれない”…。「成果の出る"SCI"優先順位付け
  3. 【実マネ③ | 課題_特定】部下の“課題”が分からない…。課題特定3要素の導入ステップ
  4. 【実マネ④ | 目標_設定】目標設定がズレていませんか?“成果につながる“KPI設定3視点
  5. 【実マネ⑤ | 行動_やり切らせる】「やり切れない部下」を”最後までやりきらせる”行動管理
  6. 【実マネ⑥ | 成長_促進】部下育成で「なぜ学びが定着しないのか?」 “成長マネジメント

【Next Step】次に必要な『リーダシップ」の手法を知りたい方はこちら

  1. 【リーダー① | 基本】“人望”ある管理職・経営層が実践するリーダーシップ4Eとは?
  2. 【リーダー② | エネルギー】管理職が持つべき「情熱」とは何か?エネルギー言語化6要素
  3. 【リーダー③ | エネルギー】熱意があるのに伝わらない。管理職が陥りやすい落とし穴と“内面3軸”
  4. 【リーダー④ | エナジャイズ】組織エネルギーを高める!優秀管理職のエナジャイズ仕組と育成法
  5. 【リーダー⑤ | エッジ】厳しい意思決定を恐れない:チームを動かす“エッジ”の実践フレームとは
  6. 【リーダー⑥ | エグゼキュート】「やり切る力」を成果に変える実践フレームと行動基準
  7. 【リーダー⑦ | 理念浸透】理念浸透しない組織は伸びない?“組織文化醸成”のステップ
  8. 【リーダー⑧ | スタンス】優秀管理者のスタンス・マインドとは?—4E+「経験学習×探求思考」実践法
  9. 【リーダー⑨ | エンゲージメント】生産性を変える──リーダーが取り組むべき仕組みと実践法

【Next Step】次に必要な全社『問題解決』の手法を知りたい方はこちら

  1. 【問題解決①】問題解決で高めるエンゲージメント──“成果が出る”課題解決手法とは?

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

弥左大志
専門家

弥左大志(経営コンサルタント)

株式会社バリュー・コア・コンサルティング

企業にあわせた「勝ちパターン」を見出し、誰でも再現できる仕組みを構築。研修を起点に、現場での実行までサポートします。120%以上の売り上げアップの実績を誇り、金融機関やファンド会社からの依頼も多数。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

「勝ちパターン」で成果向上の仕組みをつくる経営コンサルタント

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のビジネス
  4. 東京の経営コンサルティング
  5. 弥左大志
  6. コラム一覧
  7. 【管理職向け】なぜ同じ相談が続くのか?1on1案件レビューで成果と自走力を引き出す3ステップ[実行マネジメント⑦]

弥左大志プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼