起業と投資に共通する3ステップ
【はじめに】
あっという間に4月も終わりました。
4月から新社会人として会社勤めを始めたのと同じく
4月(や9月)といった区切りの時期に起業・開業をする
個人事業者は多いようです。
起業・独立して1か月、
資格起業であれば業界への連絡や申請、挨拶等で忙殺され、
事務所内の整理も終了し、少しは落ち着いた頃ではないでしょうか?
今後は、当初の事業計画通りに進んでいるかどうか?
自信半分、不安半分で日々を過ごしていくことになります。
どんな業態での起業・開業であっても
最初に頭に浮かぶことはまずは認知を広めたい。
早く仕事の電話やメールを貰いたいと思うのは当然です。
そこでまずは宣伝・告知活動を考えます。
起業・独立の際には殆どの場合、ホームページの作成や
Facebookやインスタ、Xで認知拡大を図ろうとします。
昭和の時代であれば、NTTのタウンページ等に番号掲載や
ポスティングで開業案内のチラシ配り、または事務所前に
看板を掲げるといった策で認知を広めようとしていました。
ですが、1か月以内にアクションを起こしてくるのは
残念なことに待ち望んだ「お客様」ではなく、
貴方を「お客様」にしようとする営業や勧誘が大半なのです。
さらに開業して1年を経過する頃には、
上記以外の迷惑なアプローチ、いわゆる詐欺メールが
あの手この手で貴方を餌食にしようとするのです。
今日はそういった事例を紹介したいと思います。
【なぜか突然に連絡が】
上記でも書きましたが
昭和の時代も令和の今も営業活動や告知・認知拡大の為に
積極的に自分の会社名や事務所名を対外的に宣伝します。
昭和の士業関係の場合ですと
人通りの多い沿道に事務所を構えた、
電話帳に事務所の連絡先を掲載した
近隣の郵便受けにチラシも配布した、
事務所の正面に大きな看板も掲示した、
後は卓上の電話が鳴るのを
じっと座って待っていれば仕事が舞い込んでくる…?
令和の場合であれば
言われるままにFacebookで開業を告知、
ホームページを作成し、ブログの執筆も開始と
ネット環境をフル活用して自分の存在を世間に知らしめます。
そして、昭和と同様に
毎日電話かメールでの相談が入ることを
夢見てデスクに張り付いている…?
当然ながらこの時点で「私は開業したての新人です。」
という素性を明かしている訳です。
飲食店ならまだしも、士業等の場合、
相談者は「経験豊富な相手」に相談したいのです。
よほどの古い友人や前職で深い繋がりのあった得意先、
または前職場の上司や同期等でなければ相談はしません。
自分自身で考えてみれば分かることですが、
見も知らぬ素人に自分の相談案件を簡単に話す訳がありません。
こういう場合は打って出て自ら関係各所に出向いて
直接対面で営業をかけることが必須案件なのですが、
なかなか実行出来る資格起業者は少ないようです。
1か月間、電話は1回も鳴らない、メールもゼロ、
となれば焦りが出ても仕方ありません。
そんなタイミングで唐突に連絡が入り始めます。
「新規開業おめでとうございます。」
「ところで、仕事の方は順調に進んでいますか?」
「少しお時間を頂ければお話しさせて下さい。」
立て板に水のごとく話を進めて
「集客、仕事の受任」の為に必要な10のポイント的な
関心を惹く様な話に持って行きます。
実際仕事の受任どころか集客や認知拡大で躓いている訳で
電話であってもメールであってもつい話に乗ってしまう。
以前も何度かこのコラムで触れましたが、
初心者相手の怪しい集客成功セミナーや全12回コースの
有料サイトでの起業即成功講座等といった案件は
ほとんどの場合、効果なしという結果を迎えてます。
同様に書店に並ぶ起業成功者の啓発本等でも同様に
詳しい秘訣は以下のアドレスから有料会員になってからといった
より費用が発生するような仕組みで待ち構えています。
たった1ヶ月で想定通りの売り上げや顧客獲得が出来る?
ゼロとは言いませんが、成功した方は起業・開業前から
十分すぎる根回しや顧客候補へのアプローチを自分から
進めているはずです。
開業にこぎつけるので精いっぱいだった
(事務所物件探し、各種の届出や申請、費用の概算、事業計画等)
とても宣伝や営業なんて手が回ってなかった方が
いきなりの実績獲得というのは甘い考えです。
中には実に良心的で将来的にも信用出来るパートナーとなる様な
アドバイザーもいることはいます。
ですがそれを見抜く技量は新人である貴方にはありません。
運が良ければそういう出会いもありますが、
大半は先方の思うつぼに嵌まるのが落ちです。
2回目の注意すべきメール攻勢は
概ね開業後1~2年を過ぎた頃でしょうか?
ここでは現状をワンランクアップという誘い文句が並びます。
「抜群の宣伝告知効果を保証するWebライター」や
「1年で1,200万円、月100万円を稼ぐノウハウ教えます」
など等、今度は業務拡大や売上増大を主体としたメールや電話です。
当初の開業告知を把握していれば
そろそろ次の課題で悩む頃と見据えての連絡だと思われました。
計画通りに事業が拡大していればまだ冷静に判断も出来ますが、
逆にこのタイミングで売上げが未達、減少傾向にあれば
つい話を聞きたくもなるでしょう。
ここでも先に紹介したように
月1回年間12回コースで営業力アップを、
これからはネット集客で毎月新規顧客10人を保証、
このブログで会員数は倍増確実、
といった内容でアプローチしてくるのです。
~最近マンネリ傾向なので新しいことを始めてみるか?
~売上減少の理由が分からない、参考になればありがたい
~ブログの書き方を一度正式に学んでみようか?
こういった状況にあると、やはり耳を傾けてしまいがちです。
別のパターンでは「出版の勧め」です。
これは逆に仕事が軌道に乗って順調な方ほど嵌まりがちです。
特にテーマが貴方の成功の足跡を書籍化しませんか?
同じ世代に訴えたいことを本にまとめてみませんか?
こういった誘いにはなかなか魅力があるもので
いわゆる承認欲求を満たすアイテムとしても惹かれます。
とはいえ、それだけで済むはずがありません。
このケースでは最終的にこちらが出版費用の一部(あるいは大半)を
負担する事や最低何部は自分で買取りといった付帯事項が付いてます。
(私の経験では最低でも100部単位からでした)
私自身、これまで何回かにわたっていろいろな出版社から
この手のアプローチを受けましたが全てお断りしてます。
内容によって差はありますが、平均でも100万円台の費用負担は
発生しますし、本を出してそれが即集客や業務受任に繋がるという
期待はしない方がいいと思います。
せいぜい宣伝ツールとして活用できれば儲けもの、
といったレベルで考えるならば、決して安くはない
費用対効果も不明朗な「広告宣伝」にはなると思います。
開業1年を経過すると、歓心をそそるようなアプローチが
貴方に向けられますのでここでも冷静な判断力が求められます。
【怪しい請求や勧誘、問合せに要注意】
さて次の注意としては業務以外のメールでも発生する
身に覚えのない請求や場合によっては提訴も辞さないといった
「恫喝」的な内容で個人情報を提供させようというものや
既存の取引先金融機関名や通販会社からサイトの設定変更に伴って
個人情報を再度連絡して欲しいといった注意喚起的な詐欺メールです。
この手のメールは開業後や1年後といった区切りは関係なく
ある日突然大量に発生するのが特徴と言えるでしょう。
仮に士業を始めとする個人事業であれば
毎年の確定申告は必須の業務です。
その申告期間が過ぎた後に
「申告内容について」といったタイトルで
個人情報の提供を求めてくる。
あるいは、還付金発生に伴う振込先情報と個人情報の
インプットを促すメールが送信されてきます。
私の場合では既に3年間、
年中行事のようにこのタイミングで
同じ様な文面での催促が届いてます、無論即削除してます。
「確定申告の内容についてお尋ねします」
「修正箇所の問合せ」等といったこちらの不安感を煽るような
文言が並ぶメールとなればどうしても一抹の不安を覚えて当然でしょう。
一見すると文面も文章構成も
(残念ながら)いかにも本物っぽく、
文面だけ見ていると自分が何か手違いをしてたのか?
過少申告の連絡ならこれを無視したら最悪追徴課税かも!
とますます詳細な内容を確認したくなります。
特に開業1,2年で確定申告の手続きに
まだ絶対の自信が持てない時期にこれが届きますと
どうしても内容を知りたいとクリックを繰り返してしまう。
同じ様に経費管理の口座を持つ金融機関名のメールも
要注意です、これもおカネが絡みますから余計関心が高いでしょう。
ここでもご丁寧に「詐欺被害防止のため」といったタイトルで
IDアドレスを打ち込ませたり、パスワードの変更を促し
現行のパスワードを打ち込ませます。
あるいはサイト自体の全面リニューアルを行うので
以下の手続きに従って新しいサイトに移転するよう促すものも
これは金融機関の他に通販サイトでもありました。
業務に使用している口座ともなれば一時とはいえ
使用不能になるのは問題ですし、仕事用に使う書籍や
事務用品等をネット通販で揃えるといった場合でも
口座の維持・継続に気を付けるのも当然のことでしょう。
こういった心理を利用して口座番号やパスワード等の
重要な個人情報を入手する手口には細心の注意が必要です。
ではこの手のメールを見破るためには
最低限どういった点に注意しておくべきでしょうか?
以下は私が個人的に実践している注意項目ですので
参考になれば幸いです。
1)大量に送信されてくる
国税庁を名乗るメールが1日に23通届いたことがあります。
金融機関からも1時間に3度同じ内容のメールが届きました。
どちらもそんなに暇な部署ではありません。
またそれぞれのサイトを見ればこの手のメールは
発信していませんと謳ってあります。
恐らくは機械的な操作で一斉送信している詐欺メールです。
2)送信元のURLが意味不明な表示
少なくともメアドにはアルファベットで会社名や愛称的な
文言が含まれていますが、詐欺メールの場合不規則な文字配列で
全く会社名を連想される箇所がありません。
いかに連絡文書のレイアウトや文言がそれっぽくても
送信元のアドレスを確認することで怪しいメールの大半を
確認することが出来るはずです。
判断が難しい場合は、正規のアドレスから先方のHPを
呼び出して内容のチェックをしましょう。
くれぐれも怪しいメール内に設置された「HPはコチラから」
等をクリックしないように! そこも詐欺サイトです。
3)知らせていないはずの相手からのメール
一般的には事務所のパソコンに生活用品や娯楽品をオーダーする
通販サイトは利用しないと思います。
私自身、生活用の口座と事務所用の口座は厳密に分けて使用して
私的利用で事務所のパソコンは使わないようにしています。
それなのに通販各社や公共料金に関するメールが届くのは
それが詐欺である証拠にもなるのです。
要は教えていないはずの相手から事務所にメールが届く事、
この時点でまずは疑うべきです。
中にはうっかり私的な使用をしていた、常時している
といった方もいるでしょうから絶対とは言いませんが
ある程度自分で出来る詐欺メール分別方法と思います。
全てのケースに言えることですが、
先方の文書内にある問合せ先や公的機関のアドレスにも要注意です。
取引先金融機関や証券会社、または官公庁のアドレスであっても
それも先方が偽装した詐欺サイトという二重の罠のケースが多くあります。
確認する際には、面倒でもそのサイトを離れて
改めて正規のアドレスから情報の確認をするようにして下さい。
以上のことを習慣化できればかなりの確率で
詐欺被害を防ぐことは出来るのではないでしょうか?
相談者の中にもこの手のメールを不用意にクリックして
情報漏洩になったりなりすまし被害やカード悪用迄の実害を
蒙ったケースが複数ありました。
口をそろえて言うのは、
少し落ち着いて考えれば気が付いたはずでしたが、
その時の精神状態や気の緩みなどでうっかり返信や
サイトをクリックして情報を提供していました。
その後は
購入代金未払い、所得税の申告漏れ、会費未納など等
いろいろな「不安を煽りたてる」内容のメールが届き
身に覚えがなかったものの毎日が憂鬱で仕事に集中出来ませんでした
といった方もいらっしゃいました。
哀しいかな、人間ですから全くミスや見落としはしていない
記憶に漏れや失念は全くないと言える人は多分いないはずです。
もしかしたら? あの件で何かミスってたっか?
こう思って先方の用意したサイトに誘導されてクリックした為に
ウイルスに感染し、口座情報を抜き取られたり勝手にカード引落しで
買い物をされたりといった実害に遭ったケースは多々あります。
個人事業での起業・開業の場合営業も経理も経営も
全て自分ひとりの責任で行うことが大前提です。
忙しさにかまけてうっかりしていた?
売上が芳しくないのでこのサイトのセミナーを受けてみようか?
詐欺請求や怪しいセミナー受講の勧誘などは実に悔しいことに
こちらの実態を見透かしたようなタイミングで送られてきます。
この一瞬の隙を衝くことが彼らの仕事なのです。
【終わりに】
残念ながらコロナ明けになってからもこの手の実例は後を絶たず、
私の知るところだけでも4件の被害を確認しています。
内容としては
「高額な携帯電話代だったがそのまま請求額を振り込んだ」
開業半年の資格起業の方や
「年収1千万円を1年で達成」を謳ったWebビジネスセミナーで
多額の受講料がかかる「プラチナコース」まで参加してしまった
開業3年間赤字経営だった方などでした。
まさにこちらが不安定な状況にある時に
狙い撃ちしてきたような事例でした。
繰り返しになりますが、
ネット上で公開した貴方の情報には悪意を持って接触する存在がいる事
情報公開は諸刃の剣という意識を常に持つことです。
不安感や焦りを感じるような状況の時は
より慎重に熟考するという習慣を身に付けることが出来れば
ここに挙げたようなくだらない詐欺・迷惑メールに惑わされることも
最小限にとどめることに繋がりますし、それによって
本業の充実や拡大に向ける時間とパワーを生み出す事にもなるのです。