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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

マイナンバーカードの今

2022年10月20日

テーマ:最近の話題から

コラムカテゴリ:くらし


【はじめに】 

 既に導入から6年近く経ちますマイナンバーカード制度。
未だに過半数に達するかどうかといった状況に、ついに大きな動きが出ました。

 「今年度末までには全国民への普及を目指す」
という政府の方針のもとに先日「保険証とマイナンバーカードの一体化」が表明されました。

 本来のテーマである「起業・独立」とは直接関係はありませんが、社会人の基礎知識として
マイナンバーカードの今について紹介したいと思います。
 

【マイナンバーカードの概要】

 改めてごく簡単にマイナンバーカードを説明します。
 「本人の氏名、顔写真、個人個人に付与された12ケタのマイナンバー」
を記載した「ICチップ付きのカード」を指します。

 各種の行政手続きに必要な情報と紐づけられており、
国の行政機関や地方公共団体の間で情報のやり取りが行われるものです。

 2020年6月の時点では、「マイナンバーカードの取得は任意」となっています。

 取得の際は、郵送またはインターネットで申請が可能で、所定の手続きを経て、
市区町村の窓口で受け取ることになります。

 カードの機能としては、
身分証明書となり、ICチップには本人確認のための電子証明書が搭載されています。

【普及促進策は】

 マイナンバーカードの普及促進のために、マイナポイントが展開中です。

 詳細はここでは省きますが、
既に始まっているものとしては取得や交付申請をした場合に、
自分で選んだ電子マネーやクレカなどのポイントが付与され、
使用した金額に応じて上限で5千円分のポイントが付与されます。

 これに続くものとしては、
この6月をめどに、健康保険証としての利用を申し込むと、
7千5百円分のポイントが付与されます。

 さらに、公金の受取口座を登録すれば、
これにも同額のポイントが付与されます。


 ここでいう公金の受取口座とは「年金や児童手当」といった公的給付を指します。
この他、税金の還付金の振込先もここに含まれます。

 但し、口座を登録した場合は
「口座の金融機関名と口座番号」はデジタル庁へ登録される
ことになるということです。

 ですが、これによって口座の残高や入出金の履歴を閲覧されることはないとのことです。

【マイナンバーカードで出来る主な手続きとそのメリット】

 具体的な事例を以下に挙げていきます。

1)自宅からパソコンやスマホを使って確定申告が出来る。
2)処方された薬情報、医療費の確認が出来る(2021年9月分より)
3)コンビニで住民票や印鑑証明の取得が出来る(全国946の市区町村で対応中)
4)健康保険証として利用が出来る(この4月で全国の医療機関の18%で対応)
5)罹災証明書の発行等の電子申請が出来る(一部の自治体で対応)
6)転出届がオンラインで申請できる(一部の自治体で対応)



 自営業の方の場合、一番身近なものは1)の確定申告ではないでしょうか?
所謂「e-Tax」で申告を済ませることは確かにメリットがあります。

 私自身、事務所から作成した内容を24時間いつでも送信で済むというのは
従来の資料をプリントアウトして税務署の窓口まで持参する手間と労力を考えれば、
このサービスは大きなメリットとなります。

 加えて全国どこでも対応可能という点も評価出来る点だと考えます。


 2)に関しては、今でもおくすり手帳での確認が出来ますし、
領収書の管理が出来る方には利便性をさほど感じないでしょう。

 3)についても、確かに平日の開庁時間内にわざわざ出向いていかなければ
取得出来なかったころに比べると便利にはなっています。

 ですが、まだ都内でもすべてのコンビニで対応可能とまではなっていないようですし、
正直な話、転勤族のサラリーマンを除けば住民票や印鑑証明を頻繁に取得するような機会があるでしょうか?

 私見ではありますが、
6)についても対象者の多くは転勤族だと思えば、2,3年に一度の手間となり、
頻繁に利用することはまずないのではと思います。

 年に一度、あるかないかの手間であれば、
窓口に出向くこともさほどの手間とは感じないかもしれません。

 4)の健康保険証としての利用に関しては
10月13日に担当大臣が「マイナンバーカードとの一体化」と
「2024年秋まで」といった期限まで明言されました。 
これについてはこの後に別途紹介します。

 上記に示した以外にもまだ先の話とはなりますが、
今年度中にハローワークの受付票としての利用開始や、
2024年度末までに運転免許証との一体化を図ると言った予定があるようです。
(但し警察関係からのコメントでは先の保険証とは違い現行の免許証は存続させる方向のようです。)


 最近では公的なサービス以外に、
一部の民間企業でもマイナンバーカードの電子証明書の活用が図られるケースが出てきています。

 三菱UFJ銀行では住宅ローンの手続きが自宅で出来るサービスを開始。
 メリカリでも本人確認の手段のひとつとして利用を開始しているとのことです。

【普及低迷の理由は?】

 以上、ざっくりとマイナンバーカードの今を紹介してきました。
以下に未だに普及が芳しくない理由について、個人的な見解を述べます。

 ひと言でまとめると「未だに絶対に使いたいと思えるサービスが無い。」
「マイナンバーカードを取得していない今でも不便を感じない。」
ことだと思います。

 私自身未だに有効期限が残る「住基カード」を所有したままです。
なんとなくもったいないから期限切れまでは使い切ってやろうとも思っており、
強いてマイナンバーカードへの切り替えをする気になれないのです。

 一例ですが、冒頭に紹介した確定申告ですが、
e-Taxで利用出来るのはマイナンバーカードだけではありません。

あくまでも「暫定的処置」と謳っていますが、
「ID・パスワード方式」での申告が今年も適用されています。

 一部のサービスに対応していないという点を除いても、
カードもリーダライタ―も使わず、申告画面から容易に申告が出来るこの方式。
使い勝手の良さは却って「このままでいいや」という気持ちになりました。

 以前もこのコラムの中で触れていますが、
なかなか普及が進まない最大の要因は個人情報を一つにまとめる事へのリスクへの不安、
これの払しょくが未だに不十分という点ではないでしょうか?

 ですが、いろいろと周囲の方への聞き取りをしたところ、
個人情報の漏洩リスク以外にも個々の事情からの阻害要因が見えてきました。

【申請から交付までの手続き】

 現在のマイナンバーカードの申請と交付の手続きを
品川区を例にしてごく簡単に紹介します。

 申請の方式には郵送申請、オンライン申請、マイナアシストによる申請等4つあります。
このうち郵送申請を例にしますと、申請の際に自治体の窓口に出向く必要はなく
(但し受け取りは窓口となります)自分の分だけでなく同居家族等の分を同封することも可能です。
ですが、同封出来るのは7名分までです。

 現在の一般的な家族構成から見ても、同居7名というケースもあまり耳にしませんから、
事実上は家族分の同封での郵送申請は可能と考えていいかと思います。

 マイナアシスト申請の場合は、窓口に出向いての申請ですが、ID付き申請書の方が対象で
その場で写真撮影も可能で10分前後で申請が出来ると紹介されていますが、
この場合は、申請者本人が出向く必要がありますので、家族揃って窓口に行かなくてはいけません。

 受け取りの際はより煩雑になります。

 申請に不備がない場合、概ね1か月後に交付のお知らせが届きます。
それを以て、自治体のどの出先の窓口で、何時受け取りに出向かを「事前予約」することとなります。

 通知が来たから、いつでもどこででも交付されるというものではありません。

 あくまでも窓口の空き時間にこちらが合わせることが前提となるのです。
こちらの都合で、自由に窓口に出向いての即時交付とはいきません。
 
 先に書きました家族分一緒に郵送申請したとしても、
交付のお知らせは当該の人物一人ひとりに届きます。

 時間差も出てくるでしょうし、予約も個人個人で設定することになります。
家族揃って同じ場所で同じ時間で交付が叶う保証はありません。

 当然ながらマイナンバーカードは国民全員が取得するものという前提です。
赤ちゃんでも中学生でもカードの交付をすることになります。
但しその場合、15歳以下の子供には保護者=親権者の同行が必要になります。

 確認したところ、いくらしっかりした子であっても、15歳未満の場合は
単独で訪問された場合は交付はしないとのことでした。

 そうなりますと、
受け取りの日程も子供の都合と親の都合、窓口の空き時間が一致しなければ
受け取りに出向くことが出来ません。

 また交付の際の本人確認書類も品川区のHP内に別途規定が定められており、
非常に細かな分類が掲載されています。

 未就学児童(6才未満の子)の場合は、完全に親が代理人として受け取ることになり、
その場合は、子供の本人確認書類に加えて代理人である親の確認書類も持参しなくてはいけません。

 自分自身の受け取りに必要なもの、
 子供の受け取りに必要なもの、
 代理人として受け取る場合に必要なもの…

 慣れていない方には、自分がどこに該当するかの確認も手間取りそうです。

 さらに、代理人による受取にも厳しい規制が定められています。

 ただ単に高齢の親に出向かせるのが忍びない
 遠距離通勤や通学で出向けるような時間の余裕が作れない
 年中無休の自営業なので昼間に店を閉めてまで出向きたくない

 この程度の理由では代理人による受け取りも許可されません。

 この規定についても品川区のHPに詳しく記載されていますので、
関心のある方は直接確認をお願いします。

 恐らく大多数の自治体のHPにも同様の掲示はされていると思いますので、
各自居住地を管轄する自治体にお問い合わせください。


 HP以外にも相談窓口の連絡先がありますし、その連絡先も掲示されていますから、
不明点や疑問点の問い合わせは、電話でも可能です。

 ですが私が試しに10月中旬に当該窓口に電話連絡をした際には、
10時から11時半までの午前中に5回話し中で、
お昼を挟んでの1時間後の6回目のチャレンジで漸く繋がりました。

 平日の昼前後の時間帯でこれですから、今でもかなりの混雑が続いていると感じたものです。

 さらに最寄りの自治体の窓口であっても
自宅からかなりの距離がある場合には余計申請も受け取りも腰が重くなることでしょう。。

 品川区の場合、現状において交付には期限が設けられていませんから、
却って問題先送りが可能なわけです、そうなれば日程調整は後手後手に回るのも頷けます。

 実際申請はしたものの交付のお知らせを通知しても受け取りに来ないというケースは
少なくないようで、中途半端なまま時間だけが過ぎていくという状況が問題なようです。

【不要不急の外出自粛】

 マイナンバーカードの交付申請が不要不急か否か?という問題は別にして、
やはりこの3年間のコロナ禍も普及促進を阻害した要因の一つと言えるでしょう。

 前述したように家族そろって(密になって)窓口に出向くのは自粛対象と考える。
受け取りの為だけに外出はしたくない、高齢の親に行かせたくない等など…

 
おまけに「不要不急の外出自粛」といった名分があれば、行かない理由も成り立ちます。

【サービスが出揃うまで待機】

 少数でしたが、以下のような意見もありました。
「毎年新しいサービスが利用できるとなると、その都度申請手続きに出向かなくてはいけない。」
「面倒なのでサービスが出揃った頃に一度で一気に手続きを済ませるのが効率的。」
「なので、今の時点で申請に出向くのは早計、今は待機します。」というものでした。

【現行の健康保険証の廃止と一体化について】

 さて、現在最も話題になっているのが2024年秋を以て、現行の紙製の健康保険証は廃止され
全てマイナンバーカードへ一体化という方針です。

 ここに来て当初の任意取得の姿勢から
取得の義務化という正面突破に180度方針転換を図ったと言っていいでしょう。

 確かにマイナンバーカードへの一体化によって、
従来の保険証、診察券、おくすり手帳の3点セットが不要になります。
(カード一枚なら)忘れない、(荷物として)かさばらない、(うっかり)失くさない
といった点は、特に高齢者の場合には大きなメリットになると思います。

 加えて、意識不明な状態で担ぎ込まれても
カード内に保管されている既往症やアレルギーの有無等の
貴重な診察前に欠かせない情報が確実に医療機関に伝わります。

 この点は年齢性別に関係ないメリットと言えるでしょう。

 ですが、現時点での最大の問題は
マイナ保険証の活用出来る医療機関の少なさです。

 残念ながら私が行きつけの医療機関すべてに質したところ、
聴き取り機器を設置済みの施設はゼロでした。
また近々導入の予定rありと答えた施設もありませんでした。

 全体でもまだ30%台の普及率に留まっているとありました。
マイナ保険証の一体化と共に、「全医療機関の窓口でマイナ保険証対応機器の完備」が
義務付けられることになるのですが…

 まさに「鶏が先か卵が先か」を彷彿とさせる事実でした。
患者側はかかりつけの病院が機器を設置したらマイナ保険証に切り替える。
医療機関は多数の患者側がマイナ保険証に切り替えたら、他の医療機関が設置したら装置を設置する。

 これでは普及が順調に進むことは難しいのではないでしょうか?

 ですがより大きな懸念は「機械任せ」への不安です。

銀行のATMが稼働不全となり、おまけに土日に発生したために
対応も後手に回り利用者に多大な迷惑をかけた件。 

通信会社の通信トラブルでスマホの利用が長時間にわたって支障が生じた件等、
記憶に新しいことと思います。

 極端な話、
マイナ保険証を持参したにも関わらず、突然の読み取り機器の不具合で受付出来ない場合、
従来の保険証の持参忘れと同じように高額の診察代を現金で払うことになるのでしょうか?

 持参忘れは患者側にも非がありますから、不承不承でも支払いに応じるでしょうが、
患者側に非がないケースでも同じような対応を受け入れるでしょうか?

 細かな点ではありますが、
トラブルの想定をしておきませんと現場がその尻拭いを強いられるのです。
現に医師会やその他の医療団体からはカード一本化への懸念が表明されています。

 幸いなことに実施予定まで2年の猶予があります。
この間にこういった身近な不安点や疑問点についてくまなく汲み上げて対応策を講じることが
2年後の一体化の達成に繋がるのではないでしょうか?

【全くの余談ですが…】

 ほぼ雑談レベルですが、
こんなことが出来たらうれしい、取得したいという要望の一部を紹介します。

・住民票並みに戸籍謄本や登記簿こそコンビニで取得できるようにして欲しい。
 
 ほとんどの方が「本籍地が遠隔地」「法務局が遠い」といったケースです。
 嫌な話ですが、高齢化社会は「多死社会」です。相続の手続きは確実に増加すると思われます。
 ですが少子化によって相続人が一人という場合も増えるでしょう。
 その都度本籍地とのやり取りをしなくて済むなら、大きなメリットと考えたようです。

・選挙の投票が自宅で出来るなら魅力あり。
 24時間対応ならば期日前なり投票日にわざわざ投票所に出向かなくて済む。
 コロナ禍のような事態が再び生じた場合も投票所に出向くというリスクを負うことがない。

・どうせならパスポートも一体化。
 手続きの手間の省略や、うっかり忘れのリスク軽減を想定したものと思われます。

最期は最も「過激な」マイナンバーカードの理想形の話です。

 超小型のチップにして、手のひらに埋め込む、盗難も紛失も事実上無くなる!?
今後どういったサービスが付与されるのか? 楽しみでもあり不安でもあります。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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