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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

今年の確定申告、ここに悩みました

2021年3月10日

コラムカテゴリ:法律関連


【今日のポイント】

 従来でしたらあと5日で申告期限となる確定申告ですが、今年は4月15日まで1か月間申告期間は延長されています。確定申告を提出後に記載漏れや間違いに気付いた場合、申告期限内であれば何度でも修正した内容を提出すれば自動的に最新の日付のものの内容で受け付けてくれます。今年に限ればあと1ヶ月の余裕がある訳です。ですが、この期間を1日でも過ぎてしまえば修正申告することになるので出来る限り早めに完了させ、1回の提出で済むようにしたいものです。

 以前も確定申告の際の注意事項を紹介しましたが、今回は初めて発生した副業で得た収入の計上方法やコロナによる各種の給付金や支援金の取り扱いなどで私が直面した問題点について紹介したいと思います。

【雑収入】

 「決算書・収支内訳書作成コーナー」に「月別の売上(収入)金額及び仕入金額」を入力する項目があります。
ここの月別の記入欄の最後に「雑収入」という項目があります。

 ここには先の売上とは異なり1年分のトータル実績を入力します。月別の内訳は記載する必要はありません。 売上と雑収入を入力しますと「合計」欄に月別の売上とこの雑収入が合算された金額が自動で表記されます。

【雑所得】

 次に少し飛びますが、「決算書・収支内訳書作成コーナー」終了後に「所得税及び復興特別所得税の確定申告書作成コーナー」に進みます。
ここでは「総合課税の所得」の記入欄に「雑所得」という項目が出てきます。さらに雑所得は「公的年金等」「業務」「その他」に分類されています。

【雑収入と雑所得の違いとは?】

 まず「所得」とはどういうものを指し、どういう分類がされているかを紹介します。

・事業所得~農業や漁業、又は製造業などからの所得、私の業務もここに該当します
・利子所得~預貯金や債券等の利子
・配当所得~株や投信の配当
・不動産所得~土地や建物の賃貸等
・給与所得~勤務先からの給料や賞与
・退職所得~退職手当
・山林所得~山林伐採し譲渡した場合等
・譲渡所得~土地や建物を譲渡した場合
・一時所得~ ※後述します
・雑所得

 文字通り、先に挙げた9項目のどこにも当てはまらない所得が「雑所得」になるのです。 そして「雑収入」はトップに挙げた「事業所得」の一部という位置付けになっているのです。
 
 事業によって得られる営業外収益の中で、他の項目にも当てはまらない、又はあえて独立して別途処理するほどの金額でないものなどは「雑収入」で処理することになります。

 例えば自分でブログやHPに広告を載せる事で得られる「アフィリエイト収入」ですと本業に関連したものである場合で持続的に収入が確保されている場合であるものの、金額的には微々たるものである場合等はまさにこの「雑収入」の事例でしょう。他にも本業に関連するセミナーの講演料や専門誌や一般紙への原稿執筆なども定期的に開催や掲載が続いているのであれば、「雑収入」として計上した方が適当と思われます。 あくまでも参考ですが金融商品取引法では雑収入としての範囲は「営業外収益の10%」を基準としていますので、毎年継続して10%を大きく超える実績を挙げていると雑収入とは認められなくなる恐れがありますので、この点は注意が必要です。

 次に「雑所得」ですが、身近にある主な項目としては以下の4つがあります。

・公的年金
・ネットオークションでの販売利益
・FX、仮想通貨での利益
・著述家や作家以外で受け取る原稿料や印税、講演料や放送の謝礼等

 どちらかと言えば、雑収入とは「継続した期間安定した収入が得られる」「その為に多くの時間を費やしている」「独立した職業として認知されている」ものであり、雑所得とは「片手間で稼いだ所得」「事業性は認められないもの」という分類が出来ると思います。

 私の場合、昨年は定期的に専門誌や一般紙からの原稿執筆の依頼が続き、今年もその傾向が続くような見通しであった為、また依頼された内容が本業や取扱業務に密接に連動したものであったことから「雑収入」「雑所得」どちらで計上が適当かに悩み、ついに自身での決断が出来ず、税務署へ実態を説明し判断を仰ぎました。余談ではありますが、私の実績でしたらどちらに計上しても大差はなく、後から修正や何らかの指摘を受ける事はありませんと変なお墨付きをもらいました。

 相談の後の雑談の中で、以前「収入と所得の表現の違い」を気にしない方がいて、雑収入と雑所得の両方に同額を入力しており、課税対象額を自らアップさせていたというケースもあったようです。僅かな言葉の違いにも意味があるのですとのことでした!

【一時所得】

 紛らわしいものがもう一つ、同じく「総合課税の所得」の最後に今度は「一時所得」の記入欄があります。雑収入でも、雑所得でもない所得というのは具体的には何が該当するのでしょうか?

 大雑把な具体例になりますが、以下のものは「一時所得」として申告することになります。
・福引で当たった賞金や商品券の類
・懸賞で当たった賞品類(自動車や高額な家電製品等)
・公営ギャンブルでの払戻金
・生命保険の一時金
・損害保険の満期返戻金
・ふるさと納税の返礼品
・遺失物の拾得者や埋蔵物の発見者が受け取る報労金

 2番目のモノで受け取た場合でも「換金可能なもの」については時価換算の上計上しなくてはいけませんので注意が必要です。
同じく3番目もわざわざ申告しなくてもバレないのでは?と軽く考えては後から税務調査が入った場合に疑惑の追及の材料になってしまいます。
また生命保険金も一時金=一括受取の場合はここに該当しますが年金として分割で受け取る場合は「雑所得」に計上しなくてはいけませんのでこの点も注意が必要です。

 また今回だけ(と思いたいですが)発生したものの中で、9月に品川区独自策として支給された「3万円の活力応援支援金」はこの「一時所得」扱いになるのでこの項目に記入することになります。他にも「持続化給付金」を受給した場合も、その金額は「一時所得」扱いになるので、この欄にまとめて入力することになります。 
 ちなみに、6月に支給された国からの「10万円の特別定額給付金」は、確定申告に反映させるものではありませんので、どこにも記載(入力)する必要はありません。

 但し、この「一時所得」には「50万円の特別控除」が設けられています。私の場合、初めて3万円の活力応援支援金を受給し、一時所得を生じましたが、幸か不幸かこの3万円だけでしたので記入は不要となりました。 同様にふるさと納税の返戻品の場合も50万円を超える品を受け取るケースはまずあり得ませんので葬神経質になる事はないようです。

【雑所得と一時所得の違いとは?】

 具体例の違いは既に各項目で述べているので省きますが、概ね我々のような仕事に就いている場合は「雑所得」は副業に関連する所得と公的年金が該当し、それ以外については概ね「一時所得」に該当すると見ても大きな間違いにはならないと思いますが、気になる方は事前に税務署などへ確認を取り、正しい記入欄に入力するように各自で注意して下さい。
 対象としては、一時所得の場合は「特別控除枠」があること(50万円等)、雑所得は総収入額から必要経費を差し引いた額がそのまま対象になる事が違いです。
課税対象も一時所得の場合は特別控除後の一時所得を1/2にした金額が課税対象となり、雑所得の場合は先の必要経費を差し引いた額がそのまま課税対象となる点で違いがあります。


 以上、私が昨年初めて経験した副業での収入の取り扱いやコロナによる給付金関係の取り扱いの違いを簡単にまとめてみました。今から申告される方で同じような状況にある方に少しでも参考になれば幸いです。

この記事を書いたプロ

寺田淳

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寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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