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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

高齢化進む自営業

2019年3月26日 公開 / 2021年3月2日更新

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 退職 手続き


【今日のポイント】

 自営業の4割は「65才以上のシニアが占める!」

 最近発表されたデータを基に、この件について考えてみました。

【総務省「労働力調査」】

 この調査に拠りますと、2018年の自営業者総数は約535万人で、前年比としては約7万人の増加とありました。

 このうち65才以上で自営業に従事しているのは昨年で約213万人、これは前年比2%増、さらに自営業に従事する総人数に占める割合として、実に39,8%、約4割にまで達していたとあります。65才以上の自営業従事者の人数は10年前に比べて14%増になっているともありました。

【シニア増の原因は?】

 このデータにある「65才以上」の内訳が分かりませんが、最近の傾向として、定年後(60才以降)に第二の仕事として、自営業を選択するケースが増加したのではと言えますし、雇用延長で65才前後まで会社員だった方の参入も考えられるでしょう。

 無論、一度も会社勤めを経験せずに若いうちから独立、開業という選択をした方も少なくないでしょう。 「いつから自営業に従事したか?」「自営業初年度は何才だったか」というデータがあれば、より正確な自営業の実態が分かるのですが…

 少なくとも、自営業には定年が無いこと=生涯現役が可能という点はシニア世代が増加する要因の一つと言えます。

【世代別の傾向の違い】

 では、65才以下の世代では自営業の従事者の動向はどうなっているでしょうか?
先のデータによりますと、45~54才の世代でも自営業従事者が増加中とありました。2018年は約102万人、前年比では3%増という実績でした。

 これは、この世代前後から会社員が定年前に早期退職し、自営業に転職、または起業・独立を選択したことが原因と思われ、60~65才で会社を定年退職した後の「長く続く第2の人生」をどう過ごすかを考えた結果と言えるでしょう。

 偶然ですが、私は自身が起業後、暫くしてからこのコラムの中で、またブログ「新・先憂後楽」で、50才からの第二の人生についての考えを紹介することを始めました。
 
 特に、自身の経験から定年前にこれからの生活の基盤(=仕事)を考えることの重要性を一つのメインテーマとして扱ってきました。 

 ここに来て、その懸念が私の前後の世代間に浸透し、第二の人生を託す仕事の選択肢の中に「自営業」が占める割合が増加したのではと思っています。

 ちなみにこれに対し、20~30代の自営業従事人数は約68万人で、10年前の人数に比べ19%減となっています。 どうもこの世代では、自分の周囲から感じ取る厳しい経済環境等から「寄らば大樹」の意識が依然として優勢?という事でしょうか。

【後継者問題】

 生涯現役で働くことは、社会との接点を持ち、生活に張りと生きがいを持たせてくれます。
ですが、飲食業にしても物販にしても、次代を託せる後継者の問題があります。 
 所謂「町中華」といったチェーン店ではない「味の老舗」のような店の場合、繁盛していながら後継者問題で(自営業のオーナーの健康問題も含めて)閉店~廃業というケースは決して少なくありません。

 私のような士業の事務所でも同様で、個人事務所の場合には後継者もそうですが、何かあった際に依頼者からの受任業務が履行できなくなるリスクを抱えています。 このような場合のリスク回避としては同業者との連携や共同受任という方法がありますが、なまじ健康に自信があるとそういう対応に及び腰になるのも否定できません。

 物販でも士業でも、自分で辞めたいと思わない限り、生涯仕事に従事できるのが自営業の「メリット」であることは間違いありませんが、一代限りで「店じまい」に追い込まれるリスクも考えなくてはいけないのも自営業の宿命です。 

 自分の子供に承継する? 
 信頼するパートナーに将来を託す?
 きれいさっぱり閉業する? 

 どういった選択をするかは別として、表題にある65才以上の「自営業者=経営者」はこの問題を先送りにせずに、正面から向き合う時期が来たと思うべきではないでしょうか?

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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