囲繞地通行権があっても土地評価は変わる?申告後に更正が認められた実例
相続税の土地評価を行う際、まず必要になるのが土地に関する資料の収集です。
登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税関係資料、建築計画概要書、道路関係資料など、確認すべき資料は少なくありません。
しかし、実務で難しいのは「どの図面を取得するか」だけではありません。
集めた資料の内容が一致しているとは限らないからです。
登記上の面積と建築計画概要書の敷地面積が違う。
公図の形状と現地の土地の形が合わない。
地図上では道路に接しているように見えるものの、実際の接道状況が分かりにくい。
土地評価では、このような資料の食い違いをどのように整理するかが重要になります。
1.土地評価の出発点は「評価する土地を特定すること」
土地を評価するためには、まず、その土地がどこにあり、どのような形状で、どの範囲を評価するのかを確認する必要があります。
当たり前のように思えるかもしれません。
しかし、相続税評価では、土地の形状や間口、奥行、接道状況などによって評価額が変わることがあります。
また、評価単位をどのように考えるかによっても結果が異なる場合があります。
そのため、路線価を確認して計算を始める前に、評価対象となる土地そのものを正確に把握することが必要です。
この確認に使われるのが、公図や地積測量図などの図面です。
1-1.公図と地積測量図は役割が違う
公図は、土地の位置関係や筆の構成を確認するために役立ちます。
一方、地積測量図は、実測による土地の形状や面積、境界点などを確認する際の重要な資料です。
つまり、同じ「土地の図面」でも役割は異なります。
| 資料 | 主な確認内容 |
| 公図 | 土地の位置関係、隣接地、筆の構成 |
| 地積測量図 | 土地の形状、面積、境界点 |
| 建築計画概要書 | 建物、敷地面積、建築時の敷地範囲 |
| 道路関係資料 | 道路種別、幅員、接道状況 |
| 都市計画図 | 用途地域、建ぺい率、容積率など |
実務では、1種類の図面だけを見て判断できるケースはそれほど多くありません。
複数の資料を照合しながら、土地の状況を整理していきます。
1-2.図面は「評価の根拠」にもなる
財産評価基本通達に基づいて土地を評価する場合でも、評価単位、地目、接道状況などを判断するためには、その前提となる資料が必要です。
また、税務上の照会や確認があった場合、なぜそのような評価を行ったのかを説明する必要が生じることもあります。
その際、
「現地を見てそう思った」
という説明だけでは、判断の根拠として十分とはいえません。
どの資料を確認し、どのような事実関係を前提として評価したのか。
土地評価では、評価額だけでなく、その評価に至った過程を整理しておくことも重要です。
2.地積測量図がない土地は評価できないのか
土地評価の資料を集めていると、
「地積測量図が見当たらない」
というケースがあります。
法務局に備え付けがないことも珍しくありません。
では、地積測量図がなければ相続税評価はできないのでしょうか。
結論からいえば、地積測量図がないという理由だけで、直ちに評価できなくなるわけではありません。
2-1.他の資料を組み合わせて確認する
地積測量図がない場合には、例えば次のような資料を確認します。
- 公図
- 住宅地図
- ブルーマップ
- 航空写真
- 登記事項証明書
- 固定資産税関係資料
- 建築計画概要書
これらの資料を組み合わせることで、土地の位置や利用状況、形状などをある程度把握できる場合があります。
ただし、重要なのは、どれか一つの資料を正しいものとして決めつけないことです。
2-2.資料の面積が違う場合は注意が必要
例えば、登記上の面積と建築計画概要書に記載された敷地面積が異なることがあります。
この場合、
「登記面積だから正しい」
「建築計画概要書の方が新しいから正しい」
と単純に判断することはできません。
建築確認の際に複数の筆を一体の敷地として申請している可能性もあります。
反対に、公図自体が古く、現況と大きく異なっているケースもあります。
資料に違いがある場合には、なぜ違うのかを確認することが先です。
3.土地評価で見落としやすい図面上の問題
土地評価では、資料を取得しただけで安心してしまうことがあります。
しかし、次のような点には注意が必要です。
- 私道などの非課税財産を見落としていないか
- 路線価が付いている道路を建築基準法上の道路と思い込んでいないか
- 対象地と道路の間に別の土地が存在していないか
- 公図と現況の土地形状が大きく異なっていないか
- 用途地域や建築規制を誤っていないか
特に接道関係は、土地評価に大きな影響を与える場合があります。
図面上では道路に接しているように見えても、土地の権利関係や道路の種別を確認すると、前提が異なっていたということもあります。
4.判断の流れは「収集→照合→現地確認」
土地評価の資料確認は、次のような流れで考えると整理しやすくなります。
まず、登記事項証明書、公図、地積測量図などの基本資料を収集します。
次に、固定資産税関係資料、建築計画概要書、道路関係資料などと照合します。
資料間に違いがなければ、その内容を前提として評価を進めます。
一方、面積、形状、接道状況などに違いがある場合には、その理由を確認します。
そして、資料だけでは判断できない場合には、現地調査を行います。
資料を集めることが目的ではありません。評価の前提となる土地の状態を確認することが目的です。
この順序を逆にしないことが重要です。
5.どのような土地は慎重に確認すべきか
すべての土地について、大がかりな調査が必要というわけではありません。
一方、次のような土地は、資料の確認を慎重に行った方がよいと考えられます。
5-1.地積測量図がなく、形状が分かりにくい土地
境界標が確認できない土地や、公図と現況が大きく異なる土地では注意が必要です。
特に古い分筆を繰り返している土地では、図面だけでは現況を把握しにくいことがあります。
必要に応じて現況測量などを検討し、土地の間口、奥行、形状を確認することになります。
なお、財産評価の資料として土地の現況を把握することが目的であれば、必ずしも最初から境界確定測量が必要とは限りません。
何のための測量なのかを整理することが重要です。
5-2.複数の資料で内容が異なる土地
登記面積、公図、建築計画概要書、固定資産税関係資料などを確認した結果、内容が一致しない場合があります。
このようなケースでは、資料のどれかを機械的に採用するのではなく、違いが生じた理由を確認します。
土地評価で難しいのは、図面を取得する作業そのものではありません。
複数の資料を照合し、どの事実を評価の前提とするのかを判断することです。
まとめ|土地評価では「図面の読み方」が重要
相続税の土地評価では、公図や地積測量図をはじめ、さまざまな資料を確認します。
しかし、必要な図面をすべて集めれば、正しい評価ができるとは限りません。
資料によって面積が違う。
公図と現況が合わない。
道路の種別や接道状況が分かりにくい。
このような場合には、複数の資料を照合し、必要に応じて現地を確認したうえで、評価の前提条件を整理する必要があります。
特に地積測量図が存在しない土地や、資料間に食い違いがある土地では、その判断が評価額に影響することもあります。
土地評価で迷ったときは、計算方法を確認する前に、そもそも評価の前提となる土地の状態を正しく把握できているかを確認することが大切です。
相続税の土地評価で使用する主な図面や取得先については、当事務所ホームページの記事で一覧にして詳しく解説しています。
「どの資料を、どこで取得すればよいのか」を確認したい方は、あわせてご覧ください。
相続税の土地評価で必要な図面一覧|地積測量図がない場合の対応


