囲繞地通行権があっても土地評価は変わる?申告後に更正が認められた実例
相続税や贈与税の申告で土地を評価するとき、最初に路線価を調べて計算を始めればよい、というわけではありません。
その前に確認しなければならないのが、
「何を、どの範囲で、どの面積を使って評価するのか」
という評価の前提条件です。
財産評価基本通達の第二章第一節には、土地評価の出発点となる基本的な考え方が定められています。
実務では、一見単純に見える土地でも、登記上の地目と現況が違っていたり、複数の土地が一体として利用されていたり、登記面積と実際の面積が異なっていたりすることがあります。
そこで今回は、相続税・贈与税における土地評価を始める際に確認したい基本的な判断ポイントを整理します。
第1章 土地評価は「計算する前」の確認が重要
1-1 土地評価の出発点となる4つのポイント
財産評価基本通達に沿って土地評価を考える場合、まず確認したいのは次の4点です。
地目をどう判定するか
どこまでを一つの評価単位とするか
どの地積(面積)を採用するか
土地にどのような権利が設定されているか
これらを整理してから、具体的な評価計算へ進むことになります。
つまり、土地評価では「路線価はいくらか」だけを見るのではなく、評価対象そのものを正しく確定する作業が先にあるということです。
1-2 登記情報だけでは判断できないことがある
特に注意したいのが、登記簿の情報と実際の利用状況が必ずしも一致しないことです。
土地の評価では、課税時期における現況が重要になります。
たとえば登記上は別々の地目であっても、実際には一体として利用され、機能的に切り離すことが難しい土地もあります。
そのため、
- 登記上の地目
- 現況の利用方法
- 土地相互の位置関係
- 建物や施設との関係
- 権利関係
などを総合的に確認する必要があります。
第2章 「地目」と「評価単位」は別々に考える
2-1 地目は課税時期の現況から判断する
土地の地目というと、登記簿に記載された「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」などを思い浮かべるかもしれません。
しかし、税務上の土地評価では、登記だけで機械的に判断するのではなく、課税時期の現況を確認することが重要です。
たとえば、店舗の敷地が宅地、その店舗専用の駐車場が雑種地として登記されていたとします。
駐車場が店舗利用の一部として不可分の状態であれば、両者を別々に評価するのではなく、一団の宅地として評価することが合理的な場合があります。
逆に、クラブハウスと練習場から構成されるゴルフ練習場のように、主たる利用状況から雑種地として一団評価することが適切となるケースも考えられます。
2-2 「1筆=1評価」とは限らない
もう一つ重要なのが評価単位です。
登記簿では土地は「筆」によって区分されていますが、登記上の筆と税務上の評価単位は必ずしも一致しません。
複数筆であっても一体として利用されていれば、一団として評価する場合があります。
反対に、同じ所有者の土地であっても、利用状況などによって評価単位を分けて考える必要が生じることもあります。
評価単位を誤ると、その後の評価計算全体に影響するため、土地評価の初期段階で特に慎重に確認したいポイントです。
第3章 登記面積をそのまま使ってよいとは限らない
土地評価では面積の確認も欠かせません。
登記簿に記載されている面積と現況面積が一致していれば問題は比較的少ないのですが、実務では両者が異なることがあります。
その場合には、登記面積だけで判断せず、利用できる資料を確認します。
代表的なものとしては、
- 地積測量図
- 現況測量図
- 建築計画概要書
- 公図
- 地籍図
- 道路台帳
- 上下水道関係の資料
などがあります。
特に測量図がない場合、建築確認申請時の敷地求積図などが現況面積を判断するための有力な資料となる場合があります。
重要なのは、一つの資料だけで結論を出さないことです。
複数の資料を照合し、必要に応じて現地の状況も確認しながら、採用する面積の合理性を検討します。
第4章 土地そのものではなく「権利」を評価する場合もある
土地評価では、所有権だけを考えればよいわけではありません。
土地にはさまざまな権利が設定されていることがあります。
たとえば、
- 借地権・地上権
- 区分地上権
- 永小作権
- 耕作権
- 占用権
- 温泉権
などです。
こうした権利が存在する場合には、所有権とは異なる評価方法が必要になります。
特に借地権については、契約書に「借地権」と書かれているかどうかだけでなく、土地利用の実態や取引慣行なども確認しなければならないケースがあります。
そのため、権利関係が複雑な土地では、通達の数字を当てはめるだけでは十分とはいえません。
第5章 どこまで確認できれば評価を進めてよいのか
5-1 評価開始前のチェックリスト
土地評価に入る前に、少なくとも次の事項を確認しておくとよいでしょう。
- 登記上の地目と現況が一致しているか
- 複数の土地が一体として利用されていないか
- 登記上の筆と評価単位を混同していないか
- 登記面積と現況面積に大きな差がないか
- 地積測量図など面積を確認できる資料があるか
- 建築計画概要書や道路台帳など補完資料を確認したか
- 借地権など所有権以外の権利が存在しないか
- 現地の利用状況と資料の内容に矛盾がないか
ここで問題が見つかった場合、そのまま評価計算へ進むのではなく、一度立ち止まって評価の前提を確認することが重要です。
5-2 判断に迷ったときの実務フロー
土地評価の判断フローを文章で整理すると、次のようになります。
①課税時期の現況を確認する
→ ②地目を判定する
→ ③評価単位を確定する
→ ④採用する地積を確認する
→ ⑤土地上の権利関係を確認する
→ ⑥評価方法を決定する
→ ⑦具体的な評価計算へ進む
ポイントは、いきなり⑦から始めないことです。
地目、評価単位、面積、権利関係のどこかに疑問があれば、その段階で追加資料や現地状況を確認します。
そして、複数の地目が一体利用されている場合や、評価単位の判断が難しい場合、登記と現況に大きな違いがある場合などは、専門的な検討が必要になることがあります。
まとめ|土地評価では「入口」を間違えないことが大切
相続税・贈与税における土地評価では、路線価や倍率を使った計算に目が向きがちです。
しかし、その前提となる
「どの土地を、どの範囲で、どの面積により、どの権利として評価するのか」
を正しく整理することが重要です。
特に、
登記と現況が違う
複数筆・複数地目が一体利用されている
面積に疑問がある
権利関係が複雑である
といった土地では、単純に資料上の数字を当てはめるだけでは判断できない場合があります。
当事務所では、財産評価基本通達だけでなく、土地の現況、利用状況、資料の整合性、不動産としての実態を確認しながら評価を検討しています。
土地評価の入口で判断に迷う案件や、通常の評価方法をそのまま適用してよいのか疑問が残る案件については、評価を進める前に不動産鑑定士へ相談することも選択肢の一つです。
適切な評価方法を選ぶためには、計算結果を確認すること以上に、評価の前提条件が正しいかを確認することが重要といえるでしょう。
財産評価基本通達第二章第一節について、地目判定や一団評価の具体例、評価単位の考え方、地積測量図がない場合の確認資料などをさらに詳しく知りたい方は、当事務所ホームページの記事で実務的な視点から解説しています。
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