高校生の期末テスト対策 『こころ』(夏目漱石)の解釈はこれで万全!
もっちゃん 3 おともだち
(画像のねこちゃんは、「茶トラさん」ではありません)
もっちゃんはおひっこししてから、仲(なか)良(よ)しのタヅくんと会えなくなってしまいました。パパが心配(しんぱい)して、時々むかしのおさんぽルートにつれて行きましたが、もともとやくそくをして会うような仲(なか)ではなく、おたがいおさんぽの時にばったり会って、
「よかったねえ。」
と飼(か)い主(ぬし)さんどうしが言い合うのがふつうでしたから、あてなく出かけて行って、会えることはなかったのです。
もっちゃんは、ちょっと変(か)わった子で、同じ犬の仲間(なかま)より、その犬をつれている人や、ねこが好(す)きです。あたらしくひっこしたおうちでのおさんぽコースでは、ひきがえるさんや白へびさんとも仲(なか)良(よ)しになりました(もちろん白へびさんは神社(じんじゃ)の神(かみ)さまのおつかいで、ほんとうのへびではありませんが)。でもなんといってもいちばんの仲(なか)良(よ)しは、とちゅうのおたくのかいだんのところにいつもすわっている、茶(ちゃ)トラのねこさんです。すこし年をとっているようです。
パパには聞こえない動物どうしの会話(かいわ)で、もっちゃんと茶(ちゃ)トラさんは、こんなことを話していました。
「こんばんは、茶(ちゃ)トラさん。」
「あんたはめずらしい白柴(しろしば)注1さんだね。としはいくつだい。」
「いま七才です。もうすぐおたんじょう日で、八才になります。」
「そうかいそうかい。まだまだこれからだねえ。おうちの人はやさしいかい?」
「ええ、パパがとってもやさしいんです。あたしの写真(しゃしん)をいっぱい撮(と)ってて、みんなに見せてるんですよ。」
「そういえば、この前(まえ)わしの写真(しゃしん)も撮(と)ってたねえ。たしかにやさしそうなパパさんだ。あんたは幸(しあわ)せだねえ。」
「でもこのごろ、みんなでおいしいものを食べてても、あたしにはくれないんですよ。みんないじわるになったんです。」
「いやいや、それが人に飼(か)われてる犬やねこの、幸(しあわ)せなところなんだよ。あんたのパパさんなんか、あんたに健康(けんこう)で長生(ながい)きしてもらいたいから、心を鬼(おに)にして、好(す)きなものを食べさせないようにしてるんだろう。人のそばで長く生きてきたわしには、よおくわかるよ。だから飼(か)われてる犬やねこは、長生(ながい)きができるんじゃよ。」
パパはもっちゃんが茶(ちゃ)トラさんと話している間、じゃまをしないように、気長(きなが)に待(ま)っていてくれます。もっちゃんと茶(ちゃ)トラさんがゆっくりおしゃべりを終(お)えて、もっちゃんが立ち上がると、パパは茶(ちゃ)トラさんに手をふって、あいさつしてくれました。
茶(ちゃ)トラさんと話したあと、もっちゃんはごきげんさんです。パパとおうちへ帰る道すがら、いつもより元気に、草むらの中のかえるさんをさがしたりします。茶(ちゃ)トラさんの長老(ちょうろう)注2のパワーが、もっちゃんに力をくれているのかも知れませんね。
注1 白柴(しろしば)・・・白っぽい柴(しば)犬のこと。赤っぽいと赤柴(あかしば)、黒っぽいと前(まえ)に出て来たタヅ君のように、黒柴(くろしば)とよばれるようです。もっちゃんは赤ちゃんのころはおもちのようにまっ白で、だんだん赤茶色(あかちゃいろ)の毛がふえて来たとも、言われています。
注2 長老(ちょうろう)・・・お年よりで、いろいろなことを知っていて、ときにふしぎな力を持っていたりする人(ここではねこ)のこと。
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