『山月記』読解の最重要ポイントは?ここだけきっちり押さえましょう!
五月雨をあつめて早し最上川 松尾芭蕉
あまりにも有名な『おくのほそ道』の句です。現在、沖縄地方と奄美地方が梅雨入りしていますが、「五月雨」は、この梅雨どきの雨のことを言います。「五月の雨」が梅雨である理由は、これまでにもいく度か述べた「旧暦」の5月のことであり、今の太陽暦とは1ヶ月程度のずれがあるためです。
芭蕉はこの句を、山形県の大石田というところで詠みました。はじめ高野一栄という人の家で歌仙の発句として詠んだ時は、「五月雨をあつめて涼し最上川」としていたのを、あとで実際に最上川の急流を下る舟に乗って、「水みなぎつて舟あやふし」(本文の記述)という水流の凄さを実感したことから、「あつめて早し」に改めたのだと言われます(この稿、旺文社/古典解釈シリーズ 文法全解『おくのほそ道』参照)。
最上川は、長さ229㎞、国内第7位の長さの川ですが、複数の県にまたがることなく、山形県内に終始しています。また明治~大正~昭和のアララギ派の歌人斎藤茂吉には、次の歌があります。
最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも
こちらは、「吹雪く」冬の歌ですから、季節は異なりますが、やはり最上川の激しさ、力強さを感じさせます。芭蕉と茂吉、二人の巨人が最上川を詠んでいるため(もちろん茂吉は、芭蕉の秀句を意識していたことでしょう)、後の時代の人たちは、なかなか「最上川」を直接詠みこむことはむずかしいのではないかと思います。
関東地方はまだ梅雨入りにはすこし間があるかと思いますが、5月もあと一週間、晴れ渡る空を眺めていて、これからの五月雨と、一度だけたずねた最上川のこととを、あわせて思いみた次第です。
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