『山月記』読解の最重要ポイントは?ここだけきっちり押さえましょう!
下人ははじめ、老婆が死体の髪の毛を抜いていることに気づいたとき、強い怒り=憎悪を覚えました。それは「悪」に対する怒りであり、「悪」を憎む正義感でもあります。本文の次の記述を、再確認しましょう。
この時、だれかがこの下人に、さっき門の下でこの男が考えていた、飢え死にをするか盗人になるかという問題を、改めて持ち出したら、恐らく下人は、なんの未練もなく、飢え死にを選んだことであろう。それほど、この男の悪を憎む心は、老婆の床に挿した松の木片のように、勢いよく燃え上がり出していたのである。
また、こんな記述もあります。
しかし下人にとっては、この雨の夜に、この羅生門の上で、死人の髪の毛を抜くということが、それだけで既に許すべからざる悪であった。もちろん、下人は、さっきまで、自分が
盗人になる気でいたことなぞは、とうに忘れているのである。
それほど、この時点での下人は悪を憎んでいた、言いかえれば、正義感に燃えていたのです。
ところが、逃げ出そうとした老婆の前に立ちはだかり、つかみ合って、ねじ倒したあと、「何をしていた。言え、言わぬとこれだぞよ。」と言って太刀をつきつけたところで、下人の心理は、「この老婆の生死が、全然、自分の意思に支配されているということを意識し」、「ある仕事をして、それが円満に成就した時の、安らかな得意と満足」に変わりました。
ここまでが、「国語力.com」で前回まとめたところです。このあとの、いよいよ下人が老婆の着物を奪い(「引剝(ひはぎ)」をし)、悪の道に落ちていくところの心理描写を、本日掲載の第5回<完結篇>で、くわしくご紹介しました。全5回をしっかり読みこんでいただくことで、『羅生門』という小説の全体像を、かなりしっかりつかんでいただけると思います。
なお、完結篇の「付録」として、テスト前の「語句チェック表」も、つけてあります。どうぞご活用下さい。
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国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師
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