ファイトケミカルを野菜スープで。
30kmの壁を突破
オリンピックをご覧になりましたか?マラソンの優勝は男女ともにケニアの選手で、閉会式でケニアの国歌が2回流れました。男子マラソンは8日の日曜日だったので観ていたのですが、2位と3位と、4位になったケニアのチェロノ選手との銀・銅メダル争いはとても激しかったですね。
オリンピック前にNHKの番組で、ケニアのキプチョゲ選手が非公式で2時間切りの記録を出したことを見ました。食事は、朝はパンと砂糖をたくさん入れたチャイ、お昼はじゃがいもと豆を添えたごはん、夕方はおかゆ、砂糖をたくさん入れたチャイ、そしてケニアの伝統食のウガリを食べていて、他の国の選手と比べて、糖質の量が多いそうです。長期間、糖質を取り続けると、腸内の糖質の取り込み口が増え吸収力があがるので、ケニアの選手は腸での糖質の吸収力が高くなっているそうです。
マラソンでは30kmの壁と言われる、30km以降に急にペースダウンしてしまうことがあるそうです。筋肉の主要なエネルギー源はグリコーゲンと呼ばれる物質です。30km程走ると筋肉に蓄えられていたグリコーゲンが少なくなるため、素早くエネルギーを供給することができなくなり、今までのペースを維持できなくなることで30kmの壁が起こります。筋グリコーゲンが枯渇すると、エネルギー源として血中のグルコースが筋肉に取り込まれます。糖質が不足しないように、レース中にドリンクで糖質を補給することが重要なのです。
キプチョゲ選手が2時間切りの記録を出した時、普通のスポーツドリンクの倍の濃度の、糖質16%のスペシャルドリンクを飲んでいたそうです。十二指腸は糖質の量をチェックしていて、糖質の量が増えすぎるとインクレチンというホルモンを出して胃の動きを抑えて糖質を腸に送りにくくするようにしています。高糖質ドリンクは、胃酸に反応して糖質がゲル化するようになっているので十二指腸のチェックをくぐりぬけ、糖質はそのまま腸まで達し、たくさんの糖質を補給できます。そのため、失速しないで記録を出すことができたようです。
糖尿病と運動
スポーツ選手やよく運動をする方は、糖質をたくさんとる必要がありますが、あまり運動しない方は糖質を少なめにしなければ糖尿病になってしまうおそれがあります。インクレチンは膵臓からインスリンを分泌させる働きもあります。インスリンは、血液中の糖を肝臓・筋肉・脂肪組織に取り込ませ、肝臓・筋肉で糖をグリコーゲンという形で蓄えます。もう少し説明すると、インスリンが糖を取り込ませるために細胞の呼び出しボタンを押すと、GLUT4(糖を細胞内に搬入するトラックのようなもの)が細胞表面に移動し、糖を細胞内に取り込みます。このボタンは、血液中に糖がたくさんの状態が続くと重くなり、ボタンを押すためにたくさんのインスリンが必要になります。ボタンが重くなる理由は、脂肪組織から炎症性サイトカインの一つであるTNF-αが作られることです。また、歯周病でも免疫をつかさどる白血球の一つであるマクロファージがTNF-αを分泌します。炎症してボタンが錆びついてしまうとイメージすると分かりやすいでしょうか。そして、膵臓が疲れてインスリンがでにくくなると、血糖値が下がらなくなり糖尿病になってしまいます。
インスリンが少なかったり、呼び出しボタンが重くなっていて、細胞膜にGLUT4というトラックをあまり呼べなくなっても、筋肉が収縮する運動を定期的にすると、細胞膜のGLUT4が増え維持されます。トラックが糖の出待ちをしてくれて、インスリンの刺激(呼び出し)がなくても糖を細胞内に取り込んでくれるのです。これを知ったら運動したくなりませんか?是非今の気持ちを忘れずに、運動を続けてみてください。そして歯周病のケアも忘れずにしてください。