絶妙なバランスをとる補と瀉の考え方
最近は、この暑さで農家までが、熱中症で倒れるそうです。また、昨年中でも部活動の多くの学生が倒れたと聞きます。私の年代は、部活動中に水を飲んではいけない教育でしたので内心驚いてしまいますが、暑さが違うようです。確かに、私も日曜日に続けている5Kmのジョギングでは、真夏に数回意識を失いかけました。また、汗腺が少ないペット(特に犬)の熱中症も増加しているようです。
熱中症は、脱水症状による頭痛、吐き気、疲労感、こむら返りを起こす熱性けいれんの症状が知られていますが、重症では視床下部の体温を正常に保つ機能が低下し、汗が出なくなり体を冷やすことが出来ず体温が上昇していきます。救急処置は水分補給や体を冷やすことが大切なのですが、何よりも予防が大切です。
熱を冷まし、体液を補給する白虎加人参湯
金匱要略(きんきようりゃく)という難しそうな漢方医学書の最初に出てくる病気の中に「暍(えつ)」があります。これは今で言う日射病です。汗が出て、寒気がして、身熱があって、のどが渇く時に、白虎加人参湯が良いとあります。石膏で熱を冷まし、知母で渇きを潤し、甘草で保湿し、人参と玄米で体力を補います。相性が合えば抜群に効果を発揮します。煎じ薬で服用することが大切です。
脱水症状には、五苓散の原末とおも湯が力を発揮する
傷寒論(しょうかんろん)という漢方のバイブルの中の「霍乱(かくらん)病篇」に出てくる五苓散(ごれいさん)という薬があります。頭痛、発熱、体が痛く、熱が多く水を飲みたがる方に良いとあります。当薬局でも手作りで作っていて、汗が出すぎて胃の中が渇いた時に水分を速やかに吸収させてあげる水分補給の漢方薬です。夏負けしやすい方は、前もって服用していくと、暑さに苦しめられません。水分の取りすぎによる消化不良にも良く使われます。原末薬をおも湯に溶かして服用するとよく効きます。
牛黄(ごおう)起死回生の霊薬
オーストラリアの牛の胆石で出来ています。救心や救命丸に含まれ、古人は牛黄の効果を「魂(精神)ヲ安ンジ魄(肉体)ヲ定メ、驚癇(おどろき、恐れ、動悸など)ノ霊薬ナリ」と述べています。勿論、非常時だけでなく、暑さで疲れたり、気力が出ないとき、気持ちが不安定になったときにもよく使われます。ペットの体調不良にもよく効きますから、ぜひ一度試してみてください。