おとそ
生きるということは食べることであり、食なくして生きていくことはできません。
そんな当たり前のことを最近は、忘れがちになっていることはありませんか?
時には暴飲暴食をし、そして体型を気にして過度なダイエットに励む。
そのような食生活をしていては、健康的な体は遠のいていき代わりに病の足音が忍び寄ってくることでしょう。
と、少し脅しをかけてしまいましたが、私たちが食べているものが体を作っていることは事実です。
つまり、健康な体になれるかどうかは、食生活の内容によって大きく左右されるのです。
かつての中国で、このような考え方をまさに言い当てているような職が存在していました。
それは、食医という人たちです。
古代の中国、周の時代まで遡りますが、かつて“食医”と呼ばれる人たちがいました。
彼らは、皇帝の食事を作ったり管理することで、疾病を治したり、健康を維持させることに大きく貢献した人々です。
この時代の制度や習慣を載せた「周礼」という書物にその言葉が出てくるのですが、食医のほか薬を用いて内科的治療を施す疾医、メスを使って外科的治療を行う傷医、そして動物を扱う獣医の存在についても言及しています。
この中で最も地位が高かったとされるのが食医でした。
当時から、食に対する考え方がいかに重要視されていたかがわかりますね。
またもうひとつ、食にまつわるエピソードがあります。
清朝最後の皇帝である宣統帝が、わずか3歳で即位した当時を振り返った書物には「幼少時の空腹が辛く厳しいものであった」との記載があります。
それは決して物が不足していたわけではなく、食生活が厳しく管理されていたということを裏付けているのです。
確かになるほど、そう言われてみると漢方で用いられる生薬には、普段の食事で口にしているものも少なくありません。
例えば、生姜やシナモンなどはそれの代表ですし、その他にも実に様々なものが使われています。
漢方薬だから、料理だからと使い分けるのではなく、明確な線引きをせずに素材の特性を大事にしている漢方には非常に奥深い世界が広がっています。