古代中国における食医の役割とは?
漢方の世界では証が個々の体質や状態を見極める“ものさし”の役割を担い、これを元に治療や薬の処方が決められていくことは以前、お話ししました。
この“ものさし”のひとつに虚実という、体質や外見を分類する考え方があります。
このうち虚証とは、気力や体力が衰えて病に抵抗する力が弱まっている状態を指します。
このような場合は身体も冷えて血行が悪く、潤いがないといった多くを欲している身体に、足りないものを補う治療が施されます。
これを補法と呼んでいます。
一方、実証の場合は体力があり血行が良く、元気旺盛な状態を指します。
病にも果敢に立ち向かっていく姿勢がみられるので、実証における治療では病そのものに攻撃して治すという方法がとられます。
実証に対する治療を瀉法といい、こちらは補法とは対照的に不要なものを取り除くというものです。
たとえば、病原菌に対して直接働きかける抗生物質や、邪気を除去させる下剤などが代表的な瀉法になります。
このように、漢方では最初に虚実を見極めることが重要であり、それが決まれば自ずと治療法の決定や使う漢方薬が決まっていきます。
ちなみに、西洋医学ではこの間に病名が決定されるという過程が、ひとつ加わることになります。
虚実が決まった後、通常であれば弱っている虚証に対しては補法によって補う治療、正気は十分あるけれども邪気が強い状態に対しては瀉法によって払いのけるといった治療をします。
しかし、場合によっては邪気が強いにも関わらず体力も低下していて、抵抗力が衰えているときもあります。このようなケースでは虚証と実証が混在していると捉えられ、補法と瀉法の両サイドから病の治療を行う場合もあるのです。
足りないものは補完し、不要なものは取り除く。
私たちの日常生活でも何事もやりすぎは禁物で、食事も運動も適度にバランス良くが一番、元気でいられますよね。
漢方も、そのような自然の流れをうまく捉えているので効果的に作用していくのです。