漢方に学びたい中庸という考え方
漢方薬は自然に存在する草や木、鉱物などを材料として複数組み合わせてつくられますが、同じく身近に存在するものを原料として作られているものに民間薬があります。
漢方薬と民間薬は同じだと考えられがちですが、この二つは全く異なるものです。
そもそも、民間薬は単一の種類で構成されることが多く、全く理論化されていません。「これを飲んだら痩せたから」「この薬草で頭痛が軽くなった」といった経験が元になっており、その作り方も人から人への伝承に委ねられています。また、伝聞による継承なので固有の地域に限定されていることが多く、使われる素材もその土地に根付いた植物などが多用されています。
併せて、体系的に作られていない民間薬では、配合割合などに対しても明確な基準がないので一定の質を保つことが難しくなっています。
とはいえ、民間薬が押し並べて効果が薄いわけではありません。
中にはゲンノショウコやセンブリのように高い評価を得ているものもあり、これらが漢方に取り入れられる場合もあります。
例えば、ハトムギは民間薬では“ものもらい”に効くとされていますが、漢方薬として他の生薬と組み合わせることで薏苡仁(よくいにん)と呼び名が代わり、鎮痛作用も発揮するようになります。
しかし、効果が明確な民間薬が存在する反面、低い効果しか得られないものも残念ながら見受けられます。効果が曖昧なまま終わってしまうことが多いところも、民間薬の特徴といえるのではないでしょうか。
近年は、通信販売などで手軽に手に入るサプリメントもよく見かけますが、こちらも全ての製品について、効果が実証されているとは言えません。
やはり、医食同源という言葉もあるように、私たちの基本は食からエネルギーを得ることであって、サプリメントはあくまで補助的役割を担っているにすぎないことを自覚しておくことが大切です。
民間薬もサプリメントも、漢方薬の対極に位置するものではなく、私たちの暮らしをより豊かにする選択肢のひとつとして認識しておくといいのではないでしょうか。