離婚をするか迷ったときに知っておきたい、5つの大切な知識
欠乏の心理学から考える、夫婦関係と家族の幸せ
「もっと愛してほしい」 「もっと私の気持ちをわかってほしい」 「もっと家族を大切にしてほしい」
夫婦関係や家族関係の相談を受けていると、こうした言葉を耳にすることがあります。
相手が何もしてくれていないわけではありません。それでも、してくれなかったことや、期待どおりにならなかったことばかりが気になってしまう。
なぜ、私たちは「あるもの」よりも「ないもの」に目を向けてしまうのでしょうか。
その心理を理解するヒントになるのが、「欠乏の心理学」
です。
1.欠乏すると、人は視野が狭くなる
心理学者のセンディル・ムッライナタンと経済学者のエルダー・シャフィールは、著書『Scarcity(欠乏)』で、お金や時間などが不足している状態が、人の思考や判断に与える影響を論じています。
何かが足りないと感じると、人はその不足しているものに注意を集中させやすくなります。
例えば、お金に余裕がないときには、目の前の支払いのことで頭がいっぱいになる。時間が足りないときには、締切ばかりが気になり、ほかの大切なことを後回しにしてしまう。
このように、特定の問題に意識が集中し、ほかのことが見えにくくなる現象を「トンネリング」と呼びます。
2.愛情が足りないと感じると、愛情を受け取れなくなる?
例えば、夫が仕事で忙しく、以前より会話が減ったとします。
妻は「最近、私に関心がないのでは?」と不安になり、夫が家事を手伝ってくれても、休日に一緒に過ごしてくれても、会話が少ないことばかりが気になります。
反対に夫は、「こんなに頑張っているのに、どうして不満ばかり言われるのだろう」と感じるかもしれません。
ここで起きているのは、単なる愛情不足とは限りません。
お互いが、自分の望む形で愛情を受け取れていない可能性があるのです。
もちろん、実際に相手からの愛情や配慮が不足している場合もあります。大切なのは、欠乏感を単なる思い込みとして片づけず、何が満たされていないのかを理解することです。
3.「もっと、もっと」が夫婦関係を苦しくする
欠乏感が強くなると、人は安心を求める行動を繰り返すことがあります。
「私のこと、好き?」 「どうして連絡してくれないの?」 「私と子ども、どっちが大切なの?」
不安を感じること自体は自然なことです。しかし、安心を得るために何度も相手の気持ちを確認したり、愛情を試したりすると、相手が負担を感じて距離を置く場合があります。
この悪循環から抜け出すには、相手を責める前に、自分が何を求めているのかを整理することが大切です。
「もっと愛してほしい」という言葉の奥には、「話を聞いてほしい」「一緒に過ごす時間がほしい」「大切にされていると実感したい」など、具体的な願いが隠れているかもしれません。
4.ステップファミリーに生まれやすい欠乏感
子連れ再婚家庭、いわゆるステップファミリーでは、家族それぞれが異なる欠乏感を抱えている場合があります。
継親は、「継子から親として認められたい」「パートナーにもっと自分を優先してほしい」と感じることがあります。
実親は、「子どもにもパートナーにも愛情を注ぎたいのに、どちらにも十分なことができていない」と悩むことがあります。
そして子どもも、「お母さんを新しいパートナーに取られてしまうのではないか」「離れて暮らすお父さんとの時間が減ってしまうのではないか」と不安を感じることがあります。
ここで注意したいのは、誰か一人の欠乏感を満たそうとして、ほかの家族の気持ちを置き去りにしないことです。
例えば、継親が「家族として認めてほしい」と強く求めるあまり、子どもに親としての愛情や親密さを要求してしまうことがあります。
しかし、子どもには子どものペースがあります。
家族だから愛さなければならないのではなく、安心できる関係を少しずつ育てていくことが大切なのです。
5.自分が満たされていないと、人を幸せにできないのか?
「自分が幸せではないのに、誰かを幸せにできるのだろうか」
そんな疑問を抱く人もいるでしょう。
自分が満たされていなくても、誰かを思いやり、支えることはできます。
ただし、自分の欠乏感を相手に満たしてもらおうとすると、その思いやりが苦しみに変わってしまうことがあります。
「これだけ尽くしているのだから、感謝してほしい」
「私はあなたのために頑張っているのだから、私を必要としてほしい」
このような気持ちが強くなると、相手の幸せを願っていたはずが、いつの間にか相手の反応によって自分の価値を確かめようとしてしまうこともあります。
誰かを支えるために、自分が完全に幸せである必要はありません。
しかし、自分自身の寂しさや不安にも目を向けることは、相手との健全な関係を築くうえで大切です。
6.欠乏感から抜け出すための3つの習慣
① 自分が本当に求めているものを知る
「愛情が足りない」と感じたとき、それが会話なのか、スキンシップなのか、安心できる言葉なのかを考えてみましょう。漠然とした不満を具体的な願いに変えることで、相手にも伝えやすくなります。
② すでにあるものにも目を向ける
今日、相手がしてくれた小さなことや、一緒に笑えた時間を思い出してみましょう。ただし、感謝することと、我慢することは違います。満たされていない大切な欲求まで否定する必要はありません。
③ 自分の幸せを相手だけに委ねない
趣味や友人との交流、自分をいたわる時間など、パートナーや家族以外にも安心できる場所を持つことが大切です。自分自身を満たす方法が増えると、相手にすべてを求めずに済むことがあります。
7.幸せとは、足りないものをすべて手に入れることではない
私たちは、何かが足りないと感じると、それを手に入れれば幸せになれると思いがちです。
しかし、一つの願いがかなっても、また新しい願いが生まれることがあります。
大切なのは、足りないものを求めることをやめるのではなく、欠乏感に自分の幸せを支配されないことではないでしょうか。
夫婦も家族も、すべての願いを満たし合えるわけではありません。
相手にできることとできないことがあり、自分にも同じように限界があります。
だからこそ、「どうしてしてくれないの?」という問いを、ときには「私たちは、これから何ができるだろう?」に変えてみる。
そして、相手に求めるだけではなく、自分自身が何を必要としているのかを理解する。
幸せな家族とは、何も欠けていない家族ではなく、お互いの足りなさを理解しながら、安心できる関係を育てていける家族なのかもしれませんね。


