思い込みをほどき、まっすぐに聴く 相手のせい、と思ったときに立ち止まる “もしかしたら”の視点が、関係をやわらげる。
安心して意見を伝え合う関係
言いたいのに言えない関係を変えるには
“伝える勇気”は、思いやりの中から生まれる。
はじめに
「本当は言いたいことがあるのに、うまく言葉にできない」
「伝えたら嫌われるかもしれない」「波風を立てたくない」
そんな経験は、誰にでもあると思います。
人との関係を大切に思うほど、 “言えない”瞬間は増えるものです。
でも、言葉を飲み込み続けていると、
少しずつ心の中に小さな苦しさが積もっていきます。
やがて、「どうせ分かってもらえない」というあきらめが、
信頼の橋を静かに壊してしまうこともあるのです。
今日は、「言いたいのに言えない」関係をやさしく変えていくための、
小さな勇気の出し方について一緒に見つめていきましょう。
1. “言えない自分”を責めないことから始めよう
まず大切なのは、「言えない自分」を責めないことです。
言葉にできないのは、あなたが臆病だからではありません。
むしろ、それだけ人を思いやり、関係を壊したくないと願っている証拠です。
「言わないほうがいい」と判断することも、
その時点ではあなたなりの最善の選択。
だからこそ、まずは自分にこう伝えてあげましょう。
「私は、人を大切に思っているからこそ、今は言えないだけなんだ」と。
自分を受けとめることで、心の中に少しずつ“安心”が戻り、
やがて言葉が自然に出てくるようになります。
2. “伝える勇気”は、思いやりの中から育つ
「伝えること」は、相手を変えることではなく、
自分の気持ちを誠実に差し出すことです。
怒りや不満のままに言葉を出すと、
相手を傷つけてしまうことがあります。
でも、 “思いやりの気持ち”の中から伝える言葉は、
不思議と相手の心にやさしく届くのです。
たとえば、
「こうしてほしい」ではなく「こうなると助かります」
「あなたが悪い」ではなく「私はこう感じています」
自分を主語にした言葉には、
攻撃ではなく理解のエネルギーがあります。
“伝える勇気”とは、強くなることではなく、
「相手との関係を信じて、思いを形にする力」なのです。
3. まず“安全な場所”で練習してみる
いきなり本番の場で伝えるのは、誰にとっても難しいことです。
まずは、安全に練習できる場所をつくりましょう。
・信頼できる同僚や友人に話してみる
・紙に書き出して、自分の気持ちを整理してみる
・頭の中で「どう言えば伝わるか」をシミュレーションしてみる
練習の中で、「自分は何を一番伝えたいのか」が見えてきます。
人は、いきなり上手に話す必要はありません。
“練習”という準備の時間を持つことで、
心が安心を取り戻し、自然に言葉が整っていきます。
4. “受けとめてもらえなかった”ときも、自分を否定しない
勇気を出して伝えたのに、
思ったように受けとめてもらえなかった――。
そんなとき、心が折れそうになることがあります。
でも、受けとめてもらえなかったからといって、
あなたの言葉が間違っていたわけではありません。
人はそれぞれ、受けとめる“タイミング”があります。
今はまだ、相手が準備できていなかっただけかもしれません。
「伝える」という行為そのものが、
あなたの誠実さと勇気の証です。
どうぞ、その努力を自分でそっと認めてあげてください。
本音を言える関係は、一度では育ちません。
何度も小さな言葉を交わしながら、
少しずつ築かれていくものなのです。
5. “言葉の温度”を整えると、伝わり方が変わる
同じ内容でも、言葉の温度によって伝わり方は大きく変わります。
焦りや怒りが混ざったまま伝えると、
言葉の温度は高くなり、相手の防御心を刺激してしまいます。
そんなときは、一度深呼吸をして、
自分の中の温度を少し下げてから話してみましょう。
「どうすれば伝わるか」よりも、
「どうすればお互いが安心して話せるか」に意識を向けると、
言葉の選び方が自然に変わります。
穏やかな空気の中で伝えられた言葉は、
時間をかけて相手の心にやさしく届いていきます。
よくある心のQ&A
Q1. 「言いたいことが多すぎて、どこから話せばいいか分かりません。」
まずは“いちばん心に残っていること”から始めてみましょう。
「全部話さなきゃ」と思うと、余計に緊張してしまいます。
ひとつの思いを丁寧に伝えるだけでも、関係は少しずつ動き始めます。
Q2. 「相手が話を聞いてくれないと感じます。」
相手にも“聞けない理由”があるのかもしれません。
タイミングを変えたり、「今、少しお話してもいいですか?」と
事前に声をかけてみるだけで、受けとめ方が変わることがあります。
Q3. 「言い方を考えすぎて、結局何も言えません。」
完璧な言い方を探そうとすると、言葉は出にくくなります。
「うまく言えないかもしれないけれど、話してみたい」と
正直に前置きするだけで、相手も聴く姿勢を整えてくれます。
Q4. 「伝えたあとに、後悔して落ち込みます。」
それは、とても人間らしい反応です。
大切なのは、後悔を責めるのではなく、
「次はどう伝えたいか」を見つめること。
その繰り返しが、あなたの言葉を育てていきます。
Q5. 「そもそも話すのが怖いです。」
怖いのは、 “関係を大切にしたい”という思いがあるからです。
少しずつ、小さな対話から始めてみましょう。
安心できる相手に練習することで、勇気は自然に育っていきます。
おわりに 〜やさしさの中にある勇気〜
“言いたいのに言えない”という気持ちは、
人と関わるうえで誰もが通る道です。
その奥には、関係を壊したくないというやさしさと、
「本当はわかり合いたい」という深い願いが隠れています。
勇気を出して伝えようとする瞬間、
あなたの中には、すでに思いやりの力が息づいています。
焦らず、少しずつ。
やさしい関係は、一言一言の積み重ねで育っていきます。
もし今、「伝えたいのに言えない」「関係を悪くしたくない」と感じている方は、
どうぞ安心して、その気持ちを抱えたままお話しください。
Amazing Graceのカウンセリングでは、
人間関係の中で生まれる“言えなさ”の背景を一緒に整理しながら、
やさしく伝えるための言葉と勇気を育てていくお手伝いをしています。
あなたの言葉が、誰かの心を温める日がきっと来ます。
どうぞ安心して、その一歩を踏み出してみてください。
Amazing Grace 内田梓
“やさしい勇気”を取り戻すカウンセリングを行っています。



