心理的な安心を育てる “言いにくい”をそっと越える会話の工夫 小さな勇気が、信頼の芽を育てる。

内田梓

内田梓

テーマ:職場の人間関係

心理的な安心を育てる
“言いにくい”をそっと越える会話の工夫
小さな勇気が、信頼の芽を育てる。

はじめに
職場で話をするとき、「本当はこう思っているけれど、言わない方がいいかな」と感じたことはありませんか?

人と関わる中で、 “言いにくい”と思う瞬間は誰にでもあります。
それは、関係を壊したくないという優しさの表れでもあります。
けれど、そのまま言葉を飲み込んでばかりいると、
心の中に小さな澱(おり)のようなものがたまっていき、
いつの間にか「どうせ分かってもらえない」と感じてしまうことも。

安心して話し合える関係は、一度にできるものではありません。
けれど、少しずつ“言いにくい”を越えていく工夫を重ねることで、
お互いを理解し合う土台が育っていきます。

今日は、「小さな勇気」をキーワードに、
やさしく関係を深める会話の工夫を見つめていきましょう。

1. “言いにくさ”の正体をやさしく見つめる
まず大切なのは、なぜ自分が「言いにくい」と感じるのかを知ることです。

多くの場合、そこには「傷つけたくない」「嫌われたくない」という思いがあります。
つまり、あなたが人とのつながりを大切にしている証拠です。

「言いにくい」と感じるのは、心が繊細に相手を思っているから。
無理に強い言葉で伝えようとせず、
“やさしい方法で伝える道”を探していくことが、信頼への第一歩です。

2. 「気持ち」を主語にして伝える
意見を伝えるときに、「あなたが悪い」「どうしてそうなるの」と言ってしまうと、
相手は防御的になり、心を閉ざしてしまいます。

大切なのは、「自分の気持ち」を主語にして話すこと。

たとえば、
「あなたは遅い」ではなく
「私は、少し焦ってしまいました」

「どうして言ってくれなかったの?」ではなく
「私は、前もって知っておきたかったです」

このように「私は〜と感じた」と伝えることで、
責めるのではなく、 “分かち合う対話”になります。

気持ちを主語にする言葉は、
相手の心にやさしく届き、安心を守りながら本音を伝えられる魔法のような方法です。

3. タイミングを整える
“言いにくいこと”ほど、伝えるタイミングが大切です。

忙しいときや感情が高ぶっているときは、
どんなに良い言葉でもうまく届きません。
相手も自分も落ち着ける“余白の時間”を選びましょう。

たとえば、会議の直後ではなく一息ついた後や、
「今少し話してもいいですか?」と声をかけてから話すだけで、
受け取る側の心が柔らかくなります。

伝えるというのは、 “相手に渡すこと”。
だからこそ、相手が受け取れるタイミングを大切にしてみてください。

4. “沈黙”を恐れない
本音を伝えるとき、相手が少し黙ってしまうと
「怒ってるのかな」「言わなきゃよかった」と不安になることがあります。

でも実は、その沈黙は“受けとめている時間”かもしれません。
人は、予想外の言葉を聞いたとき、すぐには反応できないことがあります。
沈黙の数秒の中に、理解しようとする動きが生まれているのです。

安心できる会話とは、言葉のキャッチボールだけでなく、
“沈黙も受けとめ合える関係”。
焦らずに待つ勇気が、信頼の芽を静かに育てていきます。

5. “伝えようとする姿勢”そのものが、関係を深める
どんなに上手に言葉を選んでも、完璧な伝え方などありません。

それでも、「ちゃんと話そう」とする姿勢があるだけで、
相手の心にはあたたかいものが残ります。

本音を伝えることは、相手を信じることでもあります。
たとえうまく伝わらなかったとしても、
あなたが“誠実に関わろうとした”その思いは、必ず伝わっています。

人と人との関係は、言葉の内容よりも、
“どう伝えようとしたか”で深まっていくのです。

よくある心のQ&A
Q1. 「相手を傷つけずに伝えるには、どうすればいいですか?」
まずは、伝える前に「相手を思う気持ち」を一度自分の中で確認してみましょう。
その思いがあるだけで、自然と声のトーンや言葉が柔らかくなります。
「伝える=関係を守る行為」と考えてみると、心が落ち着きやすくなります。

Q2. 「言いたいのに、怖くて言えません。」
その怖さは、あなたが“関係を大切にしている”からこそ。
無理に言葉を出さなくても構いません。
まずはメモや日記に書き出してみましょう。
気持ちを整理することで、「どう伝えたいか」が自然に見えてきます。

Q3. 「伝えたのに、分かってもらえないときは?」
相手にすぐ伝わらないのは、あなたの伝え方が悪いからではありません。
人にはそれぞれ“受け取る速度”があります。
時間をおいてもう一度話すことで、ゆっくりと理解が進むこともあります。
焦らずに、「伝わるまでの時間」も信頼の一部だと思ってみてください。

Q4. 「部下や後輩に注意を伝えるのが苦手です。」
注意は“叱ること”ではなく、 “支えること”です。
まずは「良かった点」を伝えたあとに、「次にこうするともっと良くなるね」と添えると、
相手の心に前向きに届きます。
“信頼を守る伝え方”を意識してみましょう。

Q5. 「話し合いがうまくいかず、気まずくなりました。」
どんな関係でも、行き違いは起こります。
気まずさを放置せず、「さっきは伝え方がうまくなかったかもしれません」と
自分から一言添えるだけで、関係はやわらかくなります。
“完璧”より“素直さ”が信頼を取り戻します。


おわりに 〜小さな勇気が、信頼を育てる〜
“言いにくい”をそっと越える瞬間には、
あなたの中の小さな勇気が息づいています。

その勇気は、誰かを変えるためではなく、
「自分を大切にしながら相手を尊重したい」という、
あたたかな思いから生まれるもの。

会話のひとつひとつが、信頼の芽を育てています。
すぐに結果が見えなくても、その種は静かに根を張り、
やがて関係の中に優しい花を咲かせるでしょう。

もし今、「伝えたいけど怖い」「どう話せばいいか分からない」と感じている方は、
ひとりで抱え込まないでください。

Amazing Graceのカウンセリングでは、
職場や人間関係の中で言葉を選ぶ難しさ、心の疲れ、伝える勇気の育て方などを、
一緒に整理していくことができます。

安心できる空間で、あなたの気持ちを少しずつ言葉にしていくうちに、
“もう一度関われる力”が自然と戻ってきます。

あなたの中にある優しさと勇気が、
また誰かをあたためていきますように。

Amazing Grace 内田梓
言葉の奥にある気持ちをそっと見つめ、
心が安心を取り戻すお手伝いをしています。

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内田梓
専門家

内田梓(メンタルヘルスカウンセラー)

Amazing Grace

発達障害、摂食障害、不登校から「やりたいことや気持ちをコントロールできない」といった悩みを抱える方まで、幅広いカウンセリング実績を持つ。数々の現場や理論で深めてきたカウンセリング術に定評がある。

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