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事業承継は社長交代の日に終わるのではなく始まる【事業承継後のゴタゴタ整理1】

橋本貢

橋本貢

テーマ:事業承継後のゴタゴタ整理


社長が交代しても会社が変わらない本当の理由

会社の事業承継というと、多くの人は「社長が交代した日」を一つの区切りとして考えます。

株式を引き継ぎ、代表取締役が交代し、金融機関や取引先への挨拶も済ませる。登記も終わり、新聞やホームページで新社長就任のお知らせを出せば、一つの大仕事が終わったように感じるかもしれません。

しかし、私がこれまで経営コンサルタントとして数多くの現場に関わってきた中で実感していることがあります。

事業承継は、社長交代の日に終わるのではありません。むしろ、その日から本当の事業承継が始まります。

「社長は代わった」のに、会社は変わらない

新社長が新しい取り組みを提案すると、「先代はそんなやり方をしていなかった。」という声が上がります。

社員は新社長へ相談した後、念のため先代にも確認を取りに行きます。

取引先からの重要な電話は、いまだに先代の携帯電話へかかってきます。

銀行担当者も、大切な話になると無意識に先代へ視線を向けます。

新社長は社長になったはずなのに、最終的な判断は先代の一言で決まってしまう。

形式上は事業承継が終わっていても、会社の中では「二人の社長」が存在しているような状態です。

問題は「人」ではなく「構造」にある

こうした状況になると、「先代は口を出し過ぎだ。」「後継者にリーダーシップがない。」という話になりがちです。

もちろん、そうした面が全くないとは言えません。

しかし、多くの場合、原因は個人の性格ではありません。

会社の中で、
・誰が最終決裁をするのか
・誰に相談するのか
・誰が社員へ指示を出すのか
・誰が取引先との窓口なのか

こうした役割が整理されないまま社長だけが交代しているのです。

つまり、人ではなく会社の構造が承継されていないのです。

社員もまた、不安の中にいる

後継者からは、「社員がついてきてくれない。」という相談を受けることがあります。

一方で社員から話を聞くと、

「誰の指示に従えばいいのか分からない。」
「言うことが人によって違う。」
「新社長についていけばいいのか、先代の考えを守ればいいのか迷う。

そんな声が返ってきます。

社員は反対しているわけではありません。

混乱しているのです。

会社という組織は、方向性が見えなくなることを何より不安に感じます。

そのため、多くの社員は無意識のうちに「以前のやり方」に戻ろうとします。

これは変化への抵抗というより、自分たちの仕事を守ろうとする自然な行動なのです。

承継後に最初に整理すべきこと

事業承継後、私がまず確認するのは、経営計画や組織図ではありません。

次のような「会社の現実」です。

・社員は誰に相談しているか
・最後に判断しているのは誰か
・取引先は誰を信用しているか
・社内で最も影響力を持っている人は誰か
・会議では誰の発言で結論が決まるか

こうした現実を整理すると、形式上の組織図とは違う「本当の会社の姿」が見えてきます。

その姿を見ないまま制度だけを変えても、混乱はむしろ大きくなってしまいます。

事業承継とは「会社を再編集する」こと

私は、事業承継とは単に経営者を交代させることではないと考えています。

会社には長い歴史があります。

先代が築き上げてきた信用があります。

社員一人ひとりの経験があります。

地域とのつながりがあります。

それらを一度壊して作り直す必要はありません。

一方で、新しい社長がこれから会社を成長させるためには、今の時代に合った意思決定の仕組みや役割分担、新しい経営方針も必要になります。

つまり、過去を否定するのでも、過去をそのまま残すのでもありません。

これまで積み重ねてきた歴史を尊重しながら、新しい会社としてもう一度編集し直す。

私は、このプロセスを「経営の再編集」と呼んでいます。

事業承継とは、社長を交代するイベントではなく、会社という一冊の本を次の時代に向けて書き継ぐ作業なのです。

だからこそ、社長交代の日はゴールではありません。

新しい会社づくりが始まる、スタートラインなのです。

次回予告

「事業承継後に先代社長が口を出して困る…その原因は『性格』ではなく役割の曖昧さです」

先代社長が経営に関与し続ける会社では、何が起きているのでしょうか。

感情論ではなく、役割と権限の整理という視点から、その原因と解決の考え方を掘り下げます。

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橋本貢
専門家

橋本貢(経営コンサルタント)

しずおか経営サポート

表面的な課題ではなく、売上・組織・戦略の根本構造を見極め、本質的な打ち手を実行まで伴走支援します。経営者の意思決定に寄り添い、成果に直結する改善を行います。

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