「子育て」は何通りもある
子どもに完璧を求めていませんか?―能力を伸ばす子育てと、可能性を狭める子育ての違い
子どもの可能性を最大限に伸ばしてあげたい。
これは、多くの保護者が持っている願いだと思います。
しかし、その願いが強くなるあまり、子どもにあらゆる分野で高い水準を求めてしまうことがあります。
学習面では満点を目指し、運動も得意であってほしい。
音楽でも結果を出し、絵画も得意であってほしい。
生活習慣もしっかり身につけ、集団生活でも問題なく行動してほしい。
一つできるようになれば、次にできていないことが気になる。
その結果、
子どもができるようになったことを喜ぶ時間より、
できていないことを改善しようとする時間が増えてしまう。
私は長年の幼児教育の経験から、こうした「完全主義の子育て」には注意が必要だと考えています。
子どもの発達には個人差があり、得意・不得意がある
子どもには、それぞれ異なる個性があります。
言葉で表現することが得意な子ども。
身体を動かすことが好きな子ども。
じっくり観察することを好む子ども。
一つの活動に深く集中する子ども。
その姿は実にさまざまです。
得意なこともあれば、苦手なこともあるのが自然です。
しかし、
保護者が「すべての分野で高い水準に到達すること」を理想としてしまうと、
子どものキラリと光る個性よりも、足りてない部分に目が向きやすくなります。
ここで考えたいのが、能力を伸ばすことと、欠点をなくすことの違いです。
苦手な分野を支援することは必要です。
ただし、
苦手な部分をなくすことばかりに意識が向くと、
その子が本来持っている興味や長所を伸ばす機会を減らしてしまう可能性があります。
「できたら認める」という条件が子どもに与える影響
子どもにとって、保護者に認めてもらえることは大きな喜びです。
その一方で、
「満点を取ったら褒めてもらえる」
「失敗しなければ認めてもらえる」
という経験ばかりが重なると、
子どもが失敗を過度に恐れるようになる場合があります。
間違えることを避ける。
確実にできることだけに取り組む。
自分の不得意な面を見せないようにする。
こうした姿が強くなると、新しいことに挑戦する機会が減ってしまうかもしれません。
教室でもよく見かける光景があります。
完全主義で育てられてきた子は
この取り組みは他の友達よりも時間がかかるな、と察せば
最初からやらないことがあります。
自分のマイナス面が露呈してしまうことを恐れているのです。
あるいは、講師がよそ見をしているすきに
隣の子の答えを見て、自分の答えを正しい答えに直して、
何食わぬ顔で
「できました」
と言うんです。
こういうことを子どもにさせてしまわないためには
結果だけで評価されない環境が大切だと考えています。
「苦手なことがあっても大丈夫」
「間違えても、またやってみよう」
「あなたのよいところを知っている」
「できても、できなくてもあなたの価値は変わらない」
このような関わりは、子どもが自分の弱さも受け入れながら、
前向きに挑戦していくための支えになります。
長所伸展は、苦手なことを放置する教育ではない
私が大切にしている教育理念の一つに「長所伸展」があります。
これは、苦手なことには取り組まなくてよいという考え方ではありません。
子どもの長所や興味を認め、それを伸ばす経験を大切にしながら、必要な課題にも向き合えるように支援するという考え方です。
子どもは、自分のよさを認めてもらうことで、自信を持ちやすくなります。
その自信が、苦手なことにも挑戦してみようとする気持ちに火をつけることがあります。
私は、
子どもを満点の状態に近づけることよりも、
一人ひとりが持っている可能性を豊かに育てることに、教育の大きな価値があると考えています。
子どもの可能性を伸ばすために、保護者ができること
まずは、日々の子どもの姿を見る視点を少し変えてみてください。
できなかったことを指摘する前に、
できるようになったことを見つける。
結果だけを見るのではなく、
挑戦した過程に目を向ける。
苦手なことへの支援と、
その子の個性を認めることを両立させる。
そして、何より大切なのは、
子どもの価値を成績や能力と結びつけすぎないことです。
高い目標を持つこと自体が悪いわけではありません。
努力を重ね、目標に向かって挑戦することは、子どもの成長にとって大切な経験です。
しかし、目標を達成できないからといってその子の価値が下がるわけではありません。
子どもを完璧に育てることと、子どもの可能性を豊かに伸ばすことは、同じではない。
幼児教育に携わる者として、私はこの違いを、保護者の皆さまにはぜひ知っていただきたいと思います。


