小学生になったら「手を離して目を離さない」
ハイハイは「移動手段」ではなく、発達を支える大切な運動です
赤ちゃんの発達には、一つひとつ意味のある段階があります。
首がすわり、寝返りをし、ずりばいをし、ハイハイをし、つかまり立ちへと進んでいく。
この流れは、単に「できることが増えていく」というだけではありません。
それぞれの動きの中で、赤ちゃんは自分の体を使いながら、脳、視覚、感覚、運動機能を育てています。
その中でも、特に大切に考えたいのが「ハイハイ」です。
ハイハイは、赤ちゃんにとって非常に高度な全身運動です。
手と足を協調させ、体幹を使い、左右のバランスを取りながら、目的の場所へ向かって移動します。
この動きの中で、赤ちゃんは
「見る」
「手を伸ばす」
「体を支える」
「前へ進む」
「背骨を強化する」
「距離感をつかむ」
といった複数の働きや目的を同時に司どっています。
つまり、ハイハイは単なる移動ではなく、目と手、体と脳をつなげる重要な発達の経験なのです。
目と手をつなぐ経験が、後の学びの土台になる
ハイハイをする赤ちゃんをよく見ていると、床にある小さなものを見つけたり、気になるものに手を伸ばしたり、指でつまもうとしたりします。
このとき赤ちゃんは、目で対象をとらえ、距離を測り、そこへ向かって体を動かし、手を使うという経験をしています。
これは、視覚と運動を一致させる大切な働きです。
のちに文字を目で追う、細かなものを見る、手先を使う、集中して取り組むといった力の土台にも、この時期の全身を使った経験が関係していると考えられます。
乳幼児期の発達は、机の上の学習だけで育つものではありません。
むしろ、体をしっかり使うことによって、後の学びの土台が整っていくのです。
言葉の発達にも、体の発達は深く関係しています
また、ハイハイをたくさんすることは、体幹や姿勢保持の力を育てることにもつながります。
姿勢を保つ力、呼吸、発声、口まわりの使い方などは、言葉の発達とも無関係ではありません。
言葉は、口だけで育つものではありません。
見る力、聞く力、感じる力、体を動かす力、まわりの人と関わろうとする意欲。
こうした全体的な発達の上に、少しずつ言葉が育っていきます。
ですから、赤ちゃんが自分の体を使って十分に動く時間は、とても大切なのです。
「早く立つこと」がよいとは限りません
保護者様の方の中には、
「早く立った」
「早く歩いた」
ということを成長の早さ=発達が早くて優秀、として喜ばれる方も多いと思います。
もちろん、それはとても嬉しい成長です。
ただ、専門的な視点で見ると、早く次の段階へ進むことだけがよいとは限らないことをお伝えしておきます。
ハイハイの時期には、ハイハイの時期に育つ力があります。
その時間を十分に経験することで、体の軸や手足の協調性、視覚と運動のつながり、探索する意欲などが育っていきます。
ですから、無理に立たせたり、歩かせたりするよりも、まずは床の上で自由に動ける環境を整えてあげることが大切です。
「うちの子はハイハイが短かった」
「あまりハイハイをせずに歩いてしまった」
という場合でも、必要以上に心配しすぎなくて大丈夫です。
発達には個人差がありますし、子どもはその後の生活の中でも、さまざまな経験を通して育っていきます。
大切なのは、今できる働きかけ、つまり「這う」という動作ができる遊びを考えることです。
たとえば、
床の上で遊ぶ時間を増やす。
トンネルくぐりをする。
雑巾がけのような動きを遊びに取り入れる。
四つ這いで追いかけっこをする。
親子で体を使って遊ぶ。
こうした経験は、ハイハイ期を過ぎたお子さまにもよい働きかけになります。
私は、レッスンの中で
ハイハイをしてこなかった子とは
あえて四つん這いで追いかけっこをして遊ぶことがあります。
毎日ご家庭でも四つん這いの体勢を意識してしていただくことで
赤ちゃん時代を補うことができることを
経験として知っています。
発達は、急がせるものではなく、満たしていくもの
乳幼児期の発達で大切なのは、早くできるようにすることではありません。
その時期に必要な経験を、十分に満たしてあげることです。
赤ちゃんにとってハイハイは、体を使って世界を広げ、自分の力で進み、見たいものに近づき、触れて確かめる大切な学びの時間です。
その姿を、急がせず、比べず、丁寧に見守ってあげたいものです。
ハイハイは、赤ちゃんの体だけでなく、脳、視覚、感覚、そして意
保護者の方にはぜひ、
「早く立つこと」よりも、
「今の発達を十分に経験すること」
に目を向けていただきたいと思います。
その積み重ねが、子どもの後の学びや心の安定、そして自分で育っていく力の土台になっていくのです。


