非対応のパソコンにWindows11導入は何が問題なのか、その理由を専門家はこうみる

古賀竜一

古賀竜一

テーマ:Windows11の情報

●最近ですが、Windows11非対応のパソコンでも裏技で導入が可能になるという情報が拡散しているようです。

●クリーンインストールしたりアップグレードを制限する部分をいじって制限を回避すれば、非対応PCでも実際に導入できてします。しかし、Microsoft公式ページではそのような方法でアップグレードができたとしても推奨はできないといっています。

●そういうことを言うと「Windows10の時と同じように導入はできるけど、どうせまた責任回避の目的でお題目としてできないといっているだけだろ?」と思う人も出てきます。でも今度はどうも様子が違っていてそう単純な問題ではないようなのです。

●一体何がどう問題なのか、今回は非対応パソコンにWindows11を導入することについて専門家の見地から詳しくお伝えしたいと思います。

Windows10で大丈夫だったけど11ではそうはいかない

Microsoft公式ページ
最小システム要件を満たしていないデバイスに Windows11をインストールする

●上記の参照ページでMicrosoftが言っていることをかみ砕いて簡単に言うと「完全に自己責任でやれ、何かあっても絶対に知らんからな!!一応警告はした」といっています。

●Windows10の場合、Windows7や8からのアップグレードはよほどのことがない限り、ほぼ可能で導入後も使えなくなることはありませんでした。しかし、Windows10とは違ってWindows11は厳しいシステム要件があるOSです。今は導入できて大丈夫でもこれから先、非対応のパソコンで問題が起きない保証は何もありません。


Microsoft公式ページでWindows11に対応しているプロセッサ(CPU)が公表されています。そのリストに掲載がないCPU搭載のパソコンは非対応ということになります。

突然更新されなくなる可能性がある

●Microsoftが公式に言っているように、非対応PCではデバイスドライバーやセキュリティなどシステムの更新が配信されない可能性があります。現在、非対応PCでも導入できたという事例や情報では、導入後の更新もできているから大丈夫と言っているようです。しかし、それは今の時点で大丈夫というだけです。これから先どうなるかはわかりません。

●そもそも、Windows11がなぜ導入のシステム要件を厳しくしているかということを考えておく必要があります。その厳しさの大きな要因は、セキュリティ面の強化にあります。必須項目である「Core第8世代以上のCPU、UEFI+セキュアブート、TPM2.0」というのはすべてセキュリティに関する部分です。

●また、Windows11はグラフィックスのシステム要件としてDirectX12に対応している必要があります。対応していない場合、パフォーマンスが低下したり負荷が大きくなります。非対応のノートPCにインストールすると、CPUファンがWindows10の時よりも頻繁にしかもかなりの回転数で回り始めます。対応していないと処理が非効率化するのでCPU負荷が増大し、熱暴走気味になるからです。

●システム要件を満たさないPCの場合、それらの部分に関連した何らかの更新が行われた際にデバイスドライバーなどが自動的にパージされてしまう可能性があります。例えば追加パッケージの展開ができないとか組込めない、また大型更新の際に整合性の面でチェックが厳しくなる可能性もあります。そうなると動作が安定しなくなるだけでなく、起動すらしなくなってしまうことも充分に考えられます。

●Windows10でもこれまでアップグレードや大型更新の際に、対応していないデバイスドライバーやソフトウェアを自動的にパージしてきました。特に事例の多かった古いプリンタードライバやグラフィックスアダプタなどはいい例です。ということは、Windows11でもそのうち動作しなくなるデバイス、ソフトウェア、サービスなどが出てきてもおかしくはありません。

●手動やコマンド対応すれば更新が可能かもしれませんが、できない人にとってはお手上げ状態になります。ですから、今導入できてとりあえず更新もできているからということで、バリバリのメイン機として使用することは非常にリスクを伴います。

HDDでWindows11を導入していると・・・

●先日、気になるニュースが飛び込んできました。

Microsoft、2023年めどにHDDブートドライブのサポート廃止する方針か

●Microsofは、Windows11のインストールデバイスからHDDを外すかもしれません。今後のアップグレードでSSD(M.2)などのより高速なストレージデバイスをブートドライブとして必須とする可能性があります。CPUやメモリなどが年々高性能化する一方で、HDDの転送速度はすでに理論値上限に達しています。そのためシステム内でボトルネックになりやすく処理が間に合わなくなってきているという実情からの流れだと思われます。

●またWindows11自体、高速処理可能になった現世代または次世代のデバイスを想定した設計になっていて、それに合わせてOSのセッティングをしていることも大きな理由でしょう。Windows11のシステム要件ではデュアルコア以上のCPU、4GB以上のメモリとなっている点でも明らかにWindows10よりも要件が上がっていることでもそういえます。

●つまり、最近のデバイスが大容量で高速処理可能になってきたから、OSもそれに合わせて最適化するのでそれに追い付けない遅いデバイスは弾きます・・ということでしょう。確かに最近のHDD搭載パソコンの動作がおそくなってきたことはサポートの現場を見ても明らかです。

●そうなってくると現在販売しているHDD搭載の中古パソコンは、今後Windows11の再インストールが可能かどうか怪しくなってきます。古い対応外パソコンのほとんどがまだHDDを搭載していることを考えると、その点でも非対応PCにWindows11を導入することはリスクを伴う可能性が出てきます。

●以上のように、非対応のパソコンへのWindows11導入は様々なリスクがあります。サブ機とかネット専用機などのように、いつどうなっても良いというパソコンなら導入して使ってもいいですが、ビジネスや事業などで使うメインパソコンとして使うのは非常に問題があると思って良いでしょう。


パフォーマンスが極端に落ちてしまうことがある

●Windows 11で古いCPUがインストール要件から外される理由の一つは、CPUの命令セットが対応していないことにあります。対応していないと処理が非効率化するため、前述したようなCPUの過負荷や遅延が生じることになります。もう一つは古いCPUに存在する設計上の脆弱性にあります。ソフトウェア的な対策は講じられているものの、根本的な解決には至っていないため、古いCPUはWindows11で動作要件から外されています。

●CPUの脆弱性の中には、SpectreやMeltdownと呼ばれる、CPUの性能向上機能に関連したものがあります。Windows 11をインストールした非対応のPCではこれらの機能が利用できなくなるため、パフォーマンスが著しく低下する可能性があります。

●非対応のノートパソコンに実際にインストールしてみましたが、HDDをSSDに変えてもCPUファンは絶えずうなりをあげてとてもうるさくなりました。Windows10の時よりもCPU使用率が跳ね上がったり、動画がカクつくほど激重なパソコンになりました。メモリ使用率は大きくないのですが、CPUで大きく効率が落ちている状況です。特にバリューPC(Celeron)、HDDのPCなどは特にこの影響を受けやすくなります。とても実用向きとは言えなくなるので、その点でも非対応PCにWindows11の無理な導入はお勧めではありません。

「できる」と「使える」は意味がまったく違う

●ブログや動画サイトなどでWindows11非対応PCでも導入できる裏技ということで紹介されているものがかなりの数あるようです。実際にそれを見て導入をしてしまう人も出てきています。

●また、ネットオークションや通販の中古パソコンでは、Windows11インストール済みということで販売している業者なども数多くいます。問題があるのなら売らないはずだから大丈夫だろうとすっかり信用して購入してしまう方もいると思います。

●しかし、専門家として判断させていただくならそのようなものは前述した内容から言ってもかなり問題があると思います。業者と専門家は違います。業者は売れればいいという勢いで売ります。Windows11非対応のPCに導入することは違法というわけではありません。なので法律に抵触さえしなければ何でもやります。

●問題があったらその時々で対処するから大丈夫という業者もいます。リスクマネジメントなんて考えている業者はわずかです。しかし、違法ではなくても同義的にどうなのかといえば、ユーザー目線の真っ当で良心的な業者ならそのような売り方はしないでしょう。

●特に専門家は、いつか誰かに問題が発生する可能性がはっきりとわかっているものを一か八かで推奨するようなことはしません。事前に情報をキャッチしてできるだけリスクを回避することが専門家の役割です。

●また、SNSや動画サイト、ブログなどで「ネタとしてちょうどいい」、「アクセス数が稼げる」というだけの動機で拡散している情報についても問題です。そういったものを鵜呑みにしてありがたがるのは情報リテラシーが浅すぎです。

●最近そのようなエンタメ的な情報を専門家が発信する情報より確かだと思ってしまう傾向があるようです。そのようなエンターテーメントのネタと専門的知見を同列に考えるのは問題です。これは他の問題でもネット上で広く起きていることです。

●要するに「できる」ことと「使える」ことを分けて考える必要があります。Windows11をパソコンにインストールすることが「できる」という事実はあってもその後問題なく「使える」ということとは同義ではありません。

●一見有益に感じる情報でもエンタメとして発信する目的はほとんど自己の利益のためです。専門家のように社会的責任や公益性などを考えているものはほとんどないといって良いでしょう。要するに無責任ということです。エンタメなら最後に「知らんけど」をつけ加えれば済むと思うかもしれませんが、専門家がそうなってはおしまいです。

人は自分に耳触りの良い情報が本当と思う

●マーケティングなどで言葉を使う際にはできるだけ肯定的な表現が好ましいと言われます。確かに否定的な言葉や表現では人の好感は得られないかもしれません。しかし、商売やビジネスのシーンではそういうことが当てはまっても、人の生活や安全について情報を発信する場合はそういうわけにもいきません。

●ダメなものをダメといわなければ人は聞きたいことだけを聞いてしまう傾向にあります。最近、気象関係のアラート表現が強くなりました。それは空振りでも安全を優先させなければならないからです。

●自分が今触れている情報が自分にとって都合が良いものだけになっていないか、今一度ふりかえってみてください。もしそうであれば、ネット情報社会でリテラシー向上のためにもメリットとリスク両面で常にものを考える習慣を身につけましょう。

筆者実績 http://www.kumin.ne.jp/kiw/index.htm#ss

NetProve ネットプローブ「情報管理サービス」
九州インターワークス
http://www.kumin.ne.jp/kiw/security.html

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ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

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