その親切は善意や無報酬でもやってはダメ!パソコンが得意でも知らずにやっている、無許可・無届のサポート行為とは

古賀竜一

古賀竜一

テーマ:ITのコンプライアンスについて

ITサポートにも許可や届出が必要なことがある

●以前コラムでも話しましたが、以前の話は知人のアドバイスを鵜呑みにしてパソコンでやってはいけないことをやってしまい、データを喪失した話でした。

ネットと知人の話を鵜呑みにしてデータを喪失してしまった事例・・やってはいけない「最適化」
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4005846/

●人のパソコンを扱って起動しなくなったとか、データを飛ばしたなどというのは決して起きてはならないことです。やってマイナスになってしまうような結果になれば友人同士だったとしてもお互い良い気持ちにはなりませんよね。

●ところが最近多いのは、そのようなデメリットになるとかマイナスになる以前にパソコンが詳しいという知人や友人が行っている行為そのものに問題があるパターンです。

●知り合い同士でパソコンの面倒を見てあげているだけで、親切でそれも無報酬でやっているのだから問題ないのでは?と思われるかもしれません。しかし、意外と気が付かない部分で問題行為になっていることがあるのです。

●ITサポート業はこれまで参入障壁が低い業界でしたが最近では様々な問題が起きるようになったため、省庁の許可や登録が必要なものが出てきました。つまりITのサポートを行う際には、許可や登録がないとできないことがあるのです。

●困っている人のパソコンの面倒を親切で見てあげているだけかもしれませんが、その行為が無許可・無届の行為になってしまうことがあります。その場合、善意からやっているとか無報酬だからということでも許されることにはならない場合があります。

●では、どのような行為が該当するのか、今回はそのような問題について述べてみたいと思います。

1.中古パソコンをお世話してあげる行為は「無許可での古物営業

●例えば、サークル活動や知人の集まりなどでその中にパソコンが得意な人というのは必ずいます。その人はそこでは「パソコン大先生」になっていろんな相談をされることになるわけですが、どんなパソコンを買ったほうが良いか相談されることもあるでしょう。

●その際に、中古パソコンが欲しいという相談を受けることもあると思います。ということで「自分が用意してあげる」と立替払いでどこからか購入してきて渡し、立替金をもらったとします。それ1度きりであればグレーゾーンですが、何度も行ったり他の人にもたびたびやってあげたりするとその行為が問題になる可能性があります。

●この場合はどんな問題があるのでしょうか?それは「古物営業法」上の古物商の無許可営業になる可能性があります。

●例え、調達時の金額のままで渡して利益をまったく載せていないとか、個人的に善意でやっていることだからといっても行為自体が仕入れ、販売、納品、入金という形になると販売となんら変わりません。前金でもらっても立替払いでも同様です。そういったことを反復して行うと古物商の許可が必要なのです。





参考記事

行政書士すがはらあきよし事務所
利益が出てないから古物商許可はいらない、とはなりません
https://kobutsu-hiroshima.com/bussiness/permit-profit.html

●中古品の売買を反復的に行う場合、古物商という許可を取得する必要があります。所轄の警察署の生活安全課などへ届け出を行い、公安委員会から許可を受けます。業者でなくても反復して売買する行為を行う場合は個人であっても該当します。最近ではオークションでも該当する物品や形態によっては古物商が必要な場合があります。

●ですから、中古パソコンが欲しいけどわからないからお世話してほしいと相談された場合、本人が自分で購入するまでのアドバイスなら問題がありませんが、どこからか買ってきてあげてお金と引き換えに渡す行為はダメです。

●一度だけなら・・と思うかもしれませんが、その人が他の人を連れてきてこの人にも世話をしてほしいと頼まれたら果たして断ることができるでしょうか?そうやって反復的な行為というのが生じてしまうのです。

●古物営業法の罰則規定は懲役刑まである厳しいものですから、よくよく留意が必要です。

●パソコンに詳しい人に中古パソコンを買ってきてもらったり調達してもらうということは、その人に無許可営業をさせていることになる可能性がありますので相談するほうも注意が必要です。

2.インターネットの回線契約をしてあげる行為

●中古パソコンの場合と同様、パソコンに詳しい人がネット回線契約の仲立ち(取次)をすることは無届で行うことができません。回線契約を取り次ぎする場合、そのやり方次第では届け出が必要な場合があります。

●電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)により、媒介等業務受託者(いわゆる販売代理店)の届出制度が新設されました。現在ではインターネット回線契約を行ったり勧誘する行為を行う場合は、総務省への届出が必要です。



●例えば、インターネット回線を新たに引き込みたいという人から相談されたとします。どんなサービスが良いのかを説明してあげる分なら問題ないですが一定の回線業者との契約を代理で行ったり、取次をする行為を繰り返すと無届の行為となります。(2022年1月21日 総務省 九州総合通信局に確認済み)

電気通信事業法の消費者保護ルール に関するガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_content/000730099.pdf

以上の中に以下の記載があります。

業務の委託
媒介等の行為を業として(反復継続して)行うよう委託することをいう。私的な媒介行為等や1回限りの媒介行為等についてまで対象となるものではない。

●私的な媒介行為とは、家族や親せきなどへの行為を想定していると思いますが、組織や会などで集まった人への行為は私的とはならないでしょう。無届での行為になる可能性があります。以上のように、インターネット回線の勧誘、契約手続きを反復して行う場合は「媒介等業務受託者」の届け出が必要になっています。

●販売代理店を対象とした届出制度等について
2021年9月 総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000680531.pdf



●以下の記事に詳しく紹介されています。

野田祥明行政書士事務所
電気通信事業「販売代理店届出制度」
https://office-noda.com/entry25.html

●届け出を行わずに行った場合は懲役刑も含む厳しい罰則があります。

3.DVDやブルーレイなどの複製、テレビ番組のデータ取込み

●著作権侵害が絡むこの問題も実際にサポートの現場で遭遇します。DVDやブルーレイなどでコピーガードがかかったものを解除して複製する行為はずいぶん前に違法になりました。ですから事例はかなり減っていますが最近は録画したテレビ番組をパソコンに取り込みたいというサポートの依頼が寄せられることがあります。

●先日ですが録画したテレビ番組を好きなシーンだけ集めてパソコンで編集したいという依頼がありました。テレビ番組自体は回数制限でコピーが可能ですが、コピーガードを解除してパソコンデータとして取り込んで編集できるようにすると、その編集物の扱いや行方によっては違法になります。

●個人的に自分で行い、視聴する分についてはコピーガードの解除がOKでも、依頼された他人が行うことについてはNGでしょう。そのようなことは親切心とか無報酬だからという理由でも行ってはいけない行為です。

●また、インターネットから著作権が存在する動画や漫画などをダウンロードしデータのやり取りをやってあげることは当然違法です。その上報酬を得るような行為はより悪質な違法行為になるでしょう。

余計なお世話が行きすぎた結果、著作権侵害幇助で御用
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4005934/

DVDリッピングソフト配布で初の著作権法違反による検挙。リンク行為も幇助に
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/716844.html

政府広報オンライン
漫画、小説、写真、論文…海賊版と知りながら行うダウンロードは違法です!
令和3年1月から著作権法が変わりました。
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202012/3.html




●これは最近本当にあった事例ですが、テレビ番組のコピーガード解除をしてほしいという依頼がありました。当然そんなことはできないので断ると、「無償でやれとは言っていない、有償ならやれるだろう」といわれたのです。

●これは正気の沙汰ではありません。要するに、業者なら多少リスクがあっても金になることならやるだろうという非常に人を蔑んだものの見方をしている人のようでした。

●「ITエンジニアとか言ってどうせ普段からそういうことをして儲けているのだろう」といった偏見が垣間見れます。さすがに、今のコンプライアンスが厳しい時代に多少の儲けのために違法行為は冒せません。

●このように、たとえ親切心や有償無償に関わらず著作権侵害行為を行うことは違法行為ですから、パソコンに詳しいからといってもやって良いことと悪いことの区別はしておきましょう。

これからのITサポートは有償でも確かな専門家に

●友人や知人に聞いたり、アドバイスをもらうことは悪いことではありませんし、教えてあげることも今の情報化社会では底上げのためにも必要です。しかし、対応する内容によっては正しい知識やスキルが必要であり、さらに許可や届出が必要なこともあります。また、個人間でもコンプライアンスは特に重要です。

●後でお互いが困らないためには自分がしている行為が無許可や違法でないかどうかを良く確かめて行いましょう。1度だけだから、ちょっとだけだからという気持ちはわからないではありませんが人間はその「ちょっと」がちょっとでなくなることは皆さんがよく知っていると思います。

●これからは、ITだけでなく社会の様々な部分でコンプライアンスを求められます。安易な楽観視は大きなリスクを伴いますので人のパソコンを扱う際はよくよく考えてサポートしてあげましょう。

●また、頼む側も知らずして違法行為をさせてしまっているかもしれません。できればきちんと有償で専門のサポート業者に依頼するほうが良い場合もあります。

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古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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