汎用USBメモリの歴史はここから始まった。USBメモリの原点、その現物はこれだ!
USBの弱点、問題点はこれだ!「電源供給の限界」
●USBのメリットのひとつに"バスパワード"という仕組みがあります。これはPC本体などのUSBポートにつなぐだけで電源が供給され、USB機器を動作させることができるというもの。「線を一本つなぐだけで使える」を可能にしたこの仕組みによってUSBというインターフェースは爆発的普及につながり、今日まで生き残ってきました。
●そんな便利なUSBの規格には「給電仕様」というものがあります。USBには減税1.0~3.2まで規格がありますが、USB1.1で供給される電流は150mA、USB2.0では500mA、USB3.xでは900mA~1000mA(3.2は1.5A or 3A)とそれぞれ規格上で供給容量の限界があります。
●例えばUSB1.1では1ポートあたり150mAしか供給できません。カードリーダやマウスなどが限界です。USB外付HDDの動作に必要な電力は大体500mA~1,000mAですから、USB1.1では給電量が不足となりバスパワードでは使用できません。つまり、つないでも動作しません。USB2.0は給電量が500mAなので低消費電力のHDDならOKですが、消費電力の大きいHDDは動作しないものもあります。
●よく、外付けHDDの製品レビューなどで「認識しません」とか動作しませんと言っている中には、そのような給電量が足りないポートにつないで騒いでいるというパターンがあります。そのような場合は製品の不具合とか不良品ではなく、単に使う側の知識不足です。
●USB3.xは2.0の2倍近い電力供給能力を持っていますが、これも、せいぜいUSB光学ドライブ1台くらいです。大きな期待はしないほうが良いでしょう。USBケーブルのみの給電で使えない機器は、付属かまたは別売のACアダプタなどで外部から本体に電源を別途供給して使用する必要があります。
USBは設計が信号線向きで電源線には向かない
●そんなケチくさい事を言わずに、パソコンのUSBでどんなものでもいくらでもつなげられるようにすればいいのに・・・と思われるかもしれません。なぜそうできないかというと、そもそもUSB自体は信号線として規格策定されていて、大電流を供給する電力線としては想定されていなかったという事情があります。
●USBがPCに搭載されるようになった当初は、バスパワードで使う用途としてマウスやキーボード、フラッシュメモリ程度を想定していたと思われます。それ以外の機器は自前で電源を持ったものを使用するという前提でした。
●データ信号とともに大電流を流すためには適したコネクタの形状や配線の大きさ、強固なシールドなどが必要です。そうするとコストがかかるだけでなく利便性を損なってしまう可能性があり、目的自体も違ってきますのでそう簡単に仕様を変更するわけにはいきません。
USB2.0ポートがまだ残る理由とは
●これまでの説明で、USBの電源供給には限界があることが分かったかと思います。前回のコラムの命題、なぜパソコン全部のポートが3.x化しないものがあるのかという答えはそこにあります。
【前回のコラム】
「USBの使用で気を付けたい「規格の混在」、簡単便利なUSBに潜む弱点や問題点を検証」
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4007686
●パソコンの基板に流れている電流でいくつもの機器に電源を送り出すことは非常に難しいものがあります。規格を無視するわけにもいきませんし、省電力設計も必要です。また、それに対応しようとすれば製品の原価も高くなります。ですから、マウス、キーボード用として十分なUSB2.0ポートがあえて用意してあるメインボードもあります。そのようなわけで、未だにバリューPCなどにはUSB2.0が残っているものがあります。
USBハブ使用の注意点
●最近はほとんどの周辺機器類がUSB接続になっているために、PC本体側のUSBポートが足りなくなってくることも多くなってきます。それならばと「USBハブ」というUSBを分岐させてポートを増やす機器を思いつくかと思います。しかしここで注意が必要なのは、1ポートあたりに供給される電流は決まってますから、分岐したからといって分岐させたポート全部をバスパワード機器で使用できるわけではありません。
●どういうことかというと、家庭のコンセントと同じで、ひとつのコンセントに割り当てられた容量は決まっているため、「たこ足配線」でたくさんの家電製品を使うと容量オーバーとなり危険だと言うのと同じ理屈です。
●ですからバスパワードのUSBハブには、USBからの電源供給の必要がないか電力消費が少ない機器、たとえばプリンタやマウス、キーボード、USBメモリなどを使用するようにしなければなりません。
●複数のバスパワードUSB機器を接続したい場合は、外部電源供給が可能なUSBハブが必要になります。
USBを家庭用コンセントのように使うのは故障の元です
●最近では、USBポートを充電や暖房、モーター機器などの電源として使用するようになってきましたが、本来のUSBの規格や目的からは乖離した使い方です。特に輸入雑貨の中には、USB接続の得体の知れないさまざまな周辺機器やアイデア商品があり、通販や量販店で続々と乱売されています。
●しかし、こういうものの中には品質もさることながら容量設計どころか保護回路がまともかどうか、もっと言えば保護回路自体あるのかないのか怪しいものもあります。機器側が壊れるだけならまだ良くても、パソコン側に問題が生じるなどして影響が及ぶこともあります。
●便利だからいいじゃん、商品として売ってるものだから大丈夫でしょ?などと言う楽観視は多いですが、私は間違っても自分の大事なパソコンに怪しげなUSB電気毛布やUSB冷蔵庫、USB電気ポット、USB扇風機などをつなぐ勇気は絶対にありません。
●また、USB機器の中にはわざわざ「パソコンにつながないでください」と注意書きが表示されているものがあります。つまり、その機器メーカーとしてはパソコンを壊したとなると保証だのなんだのでヤバいので事前に「パソコンで使えないシロモノだ、壊れても良いUSB電源アダプタを使え、空気よめよ」と言っているわけです。
●そもそもノートパソコンは省電力設計技術という世界でも競争が激しい高度な最先端技術の塊です。いかに電力消費を小さくして長時間ノートパソコンを駆動できるかということを追求した技術で作られている精密機器です。
●また、リチウムイオンバッテリーの制御もコンピュータ制御が必要で今でも研究開発の最先端にある超精密技術です。そういうものから熱源とか動力源として電力をガンガン引き出すことがいかに矛盾に満ちた行為であるか、また無謀であるか専門家としては声を大にして注意喚起をしたいと思います。
●要するに、パソコンが必死に電力を節約してやりくりしているのに横からドバドバと散財しているようなザル行為に等しいのです。次々と繰り出してくるアクロバティックなUSB関連商品の数々を見ていると、今の世相は楽しさや便利さが優先でそのためには多少の犠牲は仕方がないというような風潮なのでしょう。
●たかがパソコンのUSBの問題ですが、どんな使い方をしても安全性や安定性が担保されて当然だという勘違いはあまりに技術に依存しすぎです。そのような誤った考え方が社会の様々なその他の問題やトラブルにもつながっているといっても言い過ぎではないでしょう。
●USBの便利さの裏にはこういった問題点などがあることを知っていただいて、IT関連のトラブル回避に役立てていただきたいと思います。
九州インターワークス 注目のページ
「パソコンの安定化対策」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/antei.htm