NASにトラブル発生!RAIDでバックアップ出来ていると思って実はできていなかった事例

古賀竜一

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テーマ:ITサポートの事例と実例

バックアップには様々な運用形態がある

●昨日サポート依頼があったのは、ネットワーク簡易NASのトラブルです。データが読み出せなくなったということでデータを復旧して欲しいと言う依頼です。

●簡易NASと言うのは、ネットワークで使用するファイルサーバで、価格はさほど高額ではなく設定も簡単で手軽なため、様々な事業所などで数多く使用されています。

●今回のNASは内部にHDDが2台入った"RAID"(レイド)という方式のものです。通常のUSB外付けHDDなどの外部記憶装置は、HDD構成としては1台のみになっています。RAIDという方式は複数のHDDで構成されていて、データ保護の信頼性というメリットからこちらの方式を選択する場合も多いようです。


※今回持ち込まれた簡易NAS ただの機械ですから壊れることもあります。

●さて、今回持ち込まれたものですが、確かにHDD2台でRAIDで運用されています。しかし最初に気が付いたことは、設定が"RAID0"になっていたのです。

●HDD2台以上で運用するRAIDには2種類あって

RAID0(ストライピング)
RAID1(ミラーリング)

があります。

●RAID0(ストライピング)は2台のHDDの場合データを交互に書き込んで高速性を確保しようというもの。メリットは一度に2倍の速度で読み書きが出来るのでアクセス速度が速い、そして2台の容量を足し算できるので大きな容量を使えることです。デメリットは連続したデータを扱う場合高速性からくる発熱で酷使するような状態になることと、故障も多くどちらか片方が壊れてしまうとデータが全く復旧できなくなることです。

●RAID1(ミラーリング)はデータを書き込む際にHDD2台に全く同じデータを書き込むというもの。これならばどちらかが故障しても、片方のHDDには必ずデータが残っているので復旧可能になると言うわけです。ただし全く同じデータを書き込みますからHDDの容量は2台でも1台分です。それにデータの安全性は故障の際だけの期待であって、誤消去やウイルス被害については2台が全く同じデータ状況になるためバックアップとしての効果はありません。

●RAID0はリスクよりも高速性を活かしたメリットを最優先に考えて運用する方法。たとえば大容量のデータを高速転送し頻繁にやり取りする動画編集などに有利です。 RAID1は、アクセス速度や容量よりも故障の際にデータの保持を最優先に考えて運用する方法です。

●このように、それぞれの方式は用途も挙動も全く別のものになるために両方のメリット、デメリットには共通性がありません。運用する前にどちらを目的で使うのかしっかりとした方針で使わなければ、どちらも満たさない結果となって導入した意味がほとんどなくなってしまいます。


内部には2台のHDD。RAID0、1は2台のHDDを使用して生じるそれぞれのメリットを活かす。

設定一つで勘違い運用。悲劇はそこから始まる

●さて、前置きはこのくらいにして、早速調べてみるとこのメーカーのこの機種はデフォルト(標準値)がRAID0になっていて、RAID1を使いたい場合は設定を手動で変えなければならない仕様になっています。

●設定はデフォルトのままの「RAID0」つまりストライピングで使い続けて運用されていました。HDDの1台は物理的な故障で壊れてしまっていて、データが読み出せなくなっています。

●HDDから発生する音から、プラッタ上をヘッドが引きずっている音がしますので通常では回復不可能。ラボ作業でもおそらく望みは薄く、かかる費用次第では復旧断念となりそうな状況です。

●依頼者の話ではこのNASは以前、業者が持ってきて取り付けて行ったということですが、設置した業者もRAIDのモードなどをきちんとオーナーに確認せずに、そのまま取り付けて帰ってしまったようです。

●もし今回のトラブルがRAID1で起こっていたら片方のHDDは生きていたかもしれずデータは復旧可能だったかもしれません。

外付けだけではバックアップしたことにはならない

●ですが根本的な問題があります。ユーザーも、NASがRAIDになっていることでバックアップを取っているという間違った認識になっていたことも原因です。RAID1はあくまでもHDD故障のリスク回避であって、バックアップを取っていることにはなりません。

●NASのデータを同期させた別の外部記憶装置などが必要で、それをバックアップにしておくことが必要だったのです。

●本来、バックアップというのは同じデータが複数箇所に存在していて初めて意味があります。ところが、ユーザーによっては外部記憶装置にしかデータが存在しておらず、ただのデータの保管場所にしているのにそれを"バックアップ"と言って運用している危うい状況にある場合も多いのです。

●確かにOSと同じHDDではない外部へ保存しておけば、OSが起動しなくなった際にデータを巻き込まなくて済みます。しかし、外部とは言えHDDも機械ですからトラブルや故障の可能性があり、そこにしかデータがないという状況は非常に危険です。

●このように設定1つでデータが御破算になってしまうことは珍しくありません。何でも業者任せにせず少しでも意識を高めていただき、未然にトラブルを回避できるようになれば不必要なリスクを被らずに済みます。

●外付けHDDのみが頼り・・という状況で運用されているバックアップ環境もいろいろと問題です。「機械は壊れるもの」ですから過度な依存は危険。バックアップやデータ管理についても自己流ではない確かな情報を積極的に取り入れて運用していくことも必要です。


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古賀竜一(システムエンジニア)

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ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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