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家庭用(個人向け)は、万人受けをするように造られている
●家電量販店に並んでいるパソコンのほとんどは個人用モデル(家庭用)で法人向けモデル(業務用)と言うのはあまり置いてありません。しかしパソコンにも業務等で使う「法人用モデル」というものがあってHPをはじめdynabook(旧東芝)や富士通、NECでは個人用と区別してラインナップされています。
●法人向けの業務用パソコンと言うのは操作性や耐久性、インターフェースなどに家庭用とは明らかな違いがあって、ユーザビリティーに基づいて内容構成が設計されています。また、業務の用途や企業ニーズなどに応じて機能や構成をカスタマイズできるように設計されています。
●プリインストールソフトも必要最小限となっていて余計なソフトはインストールされていません。また、Windowsならバージョンとして個人用はHomeエディション、ビジネス用はProエディションが主にインストールされています。
●色についてはビジネス用では通常は黒、白、シルバーなどの1色。あってもせいぜい2~3色ですが、個人用は様々なカラーがラインナップされていたりもします。
●そのほか個人用PCにはテレビチューナー内蔵とか高性能スピーカー内蔵、最新のデバイス内蔵といった多機能であったり先進機能を盛り込んだものもあります。また、メーカー独自をはじめとした各社のアプリケーションが満載されているものもあります。
●このように個人向けのパソコンは、万人受けをするように造られたマルチパーパスモデルであり、耐久性や操作性よりも付属ソフトの豊富さや機能・装備の新しさ、豪華さ、それに極薄というような外観が主なセールスポイントになっています。
●以上のようなことはカタログを見ればある程度違いが判る部分ですが、今回お話したいのは家庭用のものと業務用のものの本質的な違いの部分です。それを理解するためのわかり易い話があります。
業務用機器の本来の意味
●TVなどの放送局には業務用の専用ビデオ機器があります。その昔、VHSやベータ方式など家庭用ビデオ機器は次々と新製品が発表され、SONY、Panasonicなど各家電メーカーは業務用の技術をすぐに家庭用ビデオにもフィードバックし、技術を惜しみなく注ぎ込んでいました。
●当時、画質至上主義のマニアたちが専門雑誌をむさぼるように読み漁り、スペックなどを研究してビデオデッキを購入していたのですが、プチ評論家となって家庭用に飽き足らなくなった彼らが思いついた究極の選択肢が、実は放送局用の「業務用ビデオ機器」でした。
●業務用なら絶対的に高画質であろうと踏んだのです。そして家庭用の何倍もの値段であるにもかかわらず続々と購入していきました。
しかし、これが思わぬ展開に。
●業務用機器というのは、「いかに信号をフラットな状態で出力させるか」ということが至上命題です。これはオーディオにも言えることで業務用(スタジオ用)スピーカーやヘッドホンなどは周波数特性が限りなくフラットである事が良い物の証明でもあります。業務用は"リファレンス"(基準)としての位置付け自体に存在価値がある物なのです。
●ですから、そのようなスピーカーやヘッドホンは高額で高性能だけど「癖」がなく面白みと個性が無い音になってしまうわけです。大枚をはたいて買った高いものだから異次元クラスの良い音では?と飛びつくと音楽を楽しむという点では物足りなさを感じてしまうという「しろもの」で、拍子抜けすることがあるのです。
●これと同じことが業務用ビデオを買った一部のマニアに起こったのです。家電店に並んでいるビデオデッキのほとんどは画質が良く見えるようにメーカーや店側で画質を調整されていて、特に上級モデルになると他の普及タイプの画質と比べても明らかにきれいに見えるように回路自体にも「脚色」を施されていました。
●当然マニアたちは何倍もの価格で買ったからにはそれ以上の画質を期待したわけです。ところが、家電店の家庭用に比べて業務用ビデオは薄い色のまったくおとなしい画質だったのです。家庭用と比べてしまうと素人目で見ても「きれい」とは言えない画質です。しかし業務用とは本来そんなもので、マニアの趣味趣向を満足させるためにあるわけではないのです。リファレンス機としてはそれで最高の品質でノイズレスの最高の状態なのです。
●このことに一部のマニアたちは衝撃を受けたとか何とか・・・このような話は業務用の物には共通して存在している話だと思います。
個人向けノートPCの正体
●実はノートパソコンにも、同様の話があります。多くの一般ユーザーにとって、店頭での店員の説明やスペック内容の比較検討は難しいものです。余程のマニアでなければ貴重な休みにパソコンを買うためだけに長い時間をかけて選んでいる暇さえ惜しいと内心は思っています。また、最近のモデルはメーカーが違ってもデザインや仕様が一様な傾向にあり、一般ユーザーへのアピールに乏しくなっています。
●となれば最終的には分かりやすい、目の前の「画面がきれい」な方をユーザーは迷わず選択してしまうのです。メーカーはそういうこともちゃんと分かっています。
●店頭に展示品として並んだ時に、他メーカーに比べて画面がよりきれいに見えるほうが売れるというわけです。販売実績にダイレクトに影響するわけですから、メーカーはそういう趣向の液晶パネルを他メーカーに負けまいと続々と投入していきました。家庭用モデルが漏れなく光沢液晶仕様であったり、コントラストや輝度、彩度などが異様にぎらつき偏った画質となってしまっている大きな理由の一つになっていると言えるでしょう。
●目にやさしい、疲れないというよりも、ぱっと見、いかに隣の他社のパソコンより明るく鮮やかであるか・・・つまりこれらは店頭の消費者をいかに誘導できるかという「演出」が優先されている結果といって良いでしょう。
●そのようなものを業務で使用すると反射や脚色されたギラついた画質で、すぐに目が疲れてしまいとても仕事にならなくなってしまいます。
●それに比べて法人向けモデル(業務用)はほとんどが非光沢液晶で無用な脚色を排しているために長時間の作業でも疲れにくいように設計されています。
●以上は画面について違いを言いましたが、それ以外にも個人用PCにはプリインストールソフトが満載されていますが、店頭で店員さんにあれこれ使えて便利ですといわれると何だか得をしたような気分になります。
●しかし、個人用PCのプリインストールソフトはビジネス用途には全く必要ないどころか邪魔な存在です。不必要にリソースを消費するだけでメリットがありません。
●ですから業務で使うのに家庭用を流用するというのは、どんなに格安だからと言っても避けた方がいいのは言うまでもありません。
●物は高ければ良い、安ければ良いなど値段で選択するということは簡単ですが、他の判断材料を放棄することになります。そうやって選んだものは結果的に「帯に短したすきに長し」となることがあります。一見賢い選択に見えても、本質を理解しなければ絵に描いた餅になりかねません。
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