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高塚哲治

欠陥住宅問題を解決し良質な建築の創造へ導く一級建築士

高塚哲治(たかつかてつじ) / 建築家

タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所

コラム

「瓦屋根」の告示改正

2020年10月12日 公開 / 2020年12月28日更新

テーマ:技術

コラムカテゴリ:住宅・建物

 近年、気候変動などに伴い、襲来する台風の大型化や台風進路の変化から、強風による木造建築物の被害が増大しています。特に、屋根に被害が多く発生し、補修費用の高額化や補修ができる業者の不足から、長期間「ブルーシート」による応急処置の状態が続いていたり、被害を受けたまま放置され、空家となった住宅も各地で見受けられます。
 7月14日、国土交通省において「社会資本整備審議会建築分科会」の「建築物等事故・災害対策部会」の第27回会合が開催されています。この部会は、建築物の事故および災害に関する調査・審議を通じて、必要な対策を検討し、重大事故の発生防止を図ることを目的に設置されています。今回の会合において、今後の建築物の強風対策についての方向性が示されています。
 「令和元年房総半島台風」(2019年台風15号)の通過後に、専門家による被害の原因分析調査が実施された結果、千葉県を中心として木造住宅の屋根に大きな被害が発生し、被害のあった屋根の内の8割が「瓦屋根」であった事実を受けものです。
 現行の建築基準法施行令第39条第2項の規定に基づく告示第109号の規定において、屋根平部に施工する「瓦」への緊結は求められていません。
 一方、2001年に業界団体である「全日本瓦工事業連盟」「全国陶器瓦工業組合連合会」「全国厚形スレート組合連合」が定めた『瓦屋根標準設計・施工ガイドライン』(以下「ガイドライン工法」という。)においては、原則として全ての瓦を「ねじ」や「釘」で緊結する施工が必要となっています。
 今回の専門家による調査結果によると、「ガイドライン工法」に基づき施工された「瓦屋根」に関しては、55%の家屋に被害はなかったももの、「ガイドライン工法」に基づかない施工の家屋の「瓦屋根」においては、被害の無い家屋の割合が44%に留まっていたといいます。
 この調査結果を受けて、屋根ふき材に関する強風対策として、新築の建築物の「瓦屋根」の施工に際しては、「ガイドライン工法」の採用を徹底すべきとし、同部会としては、建築基準法施行令第39条第2項の規定に基づく告示第109号の改正に向けた検討を進める方針となっています。
 部位ごとの被害発生割合については、「ガイドライン工法」に基づき施工された「瓦屋根」の被害の割合は、「軒・けらば部分」が11%、「むね部分」が27%、「平部分」が45%にとどまりますが、「ガイドライン工法」に基づかず施工された「瓦屋根」の被害の割合は、「軒・けらば部分」が43%、「むね部分」が68%、「平部分」が57%と、「ガイドライン工法」に基づき施工された「瓦屋根」と比較して高い割合となっています。
 このように、国土交通省は、建築基準法施行令第39条第2項の規定に基づく告示第109号を改正し、「ガイドライン工法」を告示の基準と位置付け、新築時の「瓦屋根」の施工時に義務付けるようです。
 尚、既存建築物の屋根ふき材の改修促進へ向け、既存の支援制度活用への周知と、さらなる支援策について検討していく模様です。
 また、沿岸部の強風にも耐えられるよう、「国土技術政策総合研究所」などで試験を実施し、将来は屋根ふき材の耐風性能の見える化を推進し、全国規模での最新の気象データ分析により、現行の基準風速の妥当性を検証する計画も進められています。
 さらに、「ガイドライン工法」に適合しない既存建築物の屋根ふき材についても、耐風性能を向上させるため、改修を促進すべきとし、これらの対策を踏まえて、住宅性能表示制度における耐風等級についても見直しを検討していく方針のようです。
 このほか、「小屋組」の強風対策として、沿岸部における仕様の検討と、現行の建築基準法の基準風速の妥当性についての検証を進めていくとしています。



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