「大阪ハリストス正教会」:木造ビザンチン様式
鉄筋コンクリート造地上2階/地下1階建てで1933年(昭和8年)に完成した「旧朝香宮邸」です。
当時流行した「アール・デコ様式」の粋を尽くした瀟洒な建築物であり、東京都の「有形文化財」に指定されています。 設計したのは「宮内省内匠寮」で、担当技師は「権藤要吉」といいます。
大広間/大客室/大食堂などの主要な部屋の内装デザインは「フランス」のインテリアデザイナーである「アンリ・ラパン」が担当し、正面玄関にある女神像のガラスレのリーフや大広間などのシャンデリアは「フランス」の宝飾デザイナーでガラス工芸家でもあった「ルネ・ラリック」の作品であるといいます。
1階には主に大広間/大客室/大食堂などの公的スペースが配され、2階には寝室など宮家の私室が並び、3階には「ウィンターガーデン」(温室)が配置、通常の展示では全体の半分ほどが展示室として公開されています。
軍事研究のため欧州に留学していた「朝香宮鳩彦王」は、1923年に「パリ」郊外で自動車事故のために重傷を負い、看病のため「允子妃」が急遽渡仏し、夫妻は「フランス」に長期滞在を余儀なくされたといいます。
夫妻は1925年の「パリ万国博覧会」(通称「アール・デコ博覧会」)を見学し、「ラパン」や「ラリック」の作品に接して感銘を受けたようで、帰国後に「アール・デコの館」と称される邸宅を建てるきっかけとなったそうです。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、欧州で流行した「アール・ヌーヴォー様式」(有機的形態と曲線文様を特色とする)に対し、大量生産と工業化の時代に対応した、従来の伝統にとらわれない新しいデザインをめざしたものが「アール・デコ」です。
「朝香宮邸」では、壁面のデザイン/照明器具/扉を装飾するエッチング・ガラス/ラジエターのグリルなど、至るところに「アール・デコ」のデザインが見られます。
(2014.12.11:讀賣新聞)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所