生産性を上げる、戦略的人事考課 【商人舎magazine12月号】原稿
専門化は、従業員が特定の業務領域やスキルセットにおいて、その領域で高い専門知識と能力を持つことを意味します。
スーパーマーケットの場合、専門化は商品販売やサービス提供の各段階で重要な役割を果たします。
そして何より、今後さらに競争が激しくなる環境で、専門化がスーパーマーケットの営業戦略上重要な役割を果たすことは明白です。
専門化は、売上と粗利益、そして営業利益を拡大するための効果的な戦略として位置付けられます。
■専門化の目指すもの
具体的には、肉、魚、野菜、果物、惣菜やグロサリーなどの各部門において、専門的な知識を持つスタッフを配置し、顧客に適切な情報提供やアドバイスを行っていくことが目的です。
また、レジやサービスカウンターなど、顧客との直接の接点で専門的なサービスを提供できるスタッフを育成します。
さらに、データ分析や販促の専門化も考えられます。
売上データの分析や販促計画に専門的なスタッフを配置し、問題点や課題を素早く発見して予測や仮説を立てることや、フロントエンドとバックエンド戦略、実践的マーケティングなど、効果的な販促活動を展開します。
専門化の実践によって、各担当者はより専門的な知識やスキルを身に付け、顧客により高度なサービスを提供することが可能となります。
これによって顧客満足度が向上し、売上増加に繋がることが期待出来ます。
■専門化推進のメリット
専門化がなぜこのような成果をもたらすのか、そのメリットと具体的な取り組みについて解説していきます。
1.顧客のニーズへの適応
特定の商品カテゴリーに、専門化のスキルを持った担当者を配置することで、顧客のニーズ
により適応したサービスを提供できます。
たとえば、オーガニック製品やグルテンフリー食品などの特定の市場セグメント(ターゲット)
に特化することで、その需要に的確に応えることができます。
また、地域の特定の需要に合わせて専門化することが効果的です。
たとえば、ペット用品や健康食品の専門店として、オーガニックのキャット(ドッグ)フードや
猫(犬)用の健康製品を提供することで、ペット愛好家の強いニーズに的確に応えています。
2.差別化と競争力の向上
専門化により、他社との差別化をはかり独自の競争力を高めていきます。
特定の商品やサービスに特化することで、「あの店に行かないと・・・」と、顧客が
その店舗を選ぶ理由を提供し、競争力を高めます。
例えば、地元のメーカー(生産者)と独占的な提携を結び、競合店では手に入らない商品を
開発提供することで、顧客の興味を引きつけ差別化を行うことが出来ます。
3.粗利益の拡大
専門化は、上記事例のような商品やサービスの深耕を行うことで、他社との違いを明確に
して、価格を自由に設定することが可能となります。このことにより粗利益(値入)率を
向上させることができます。
特に高付加価値の商品に特化すれば、価格競争に巻き込まれることなく、高い値入率と
利益率を確保できます。
4.営業利益の増加
専門化は、各ターゲット市場への効果的なアプローチが可能になります。
たとえば、特定の地域の食文化やライフスタイルに合わせた商品やサービスを提供する
ことで、顧客満足度を向上させ、口コミやリピート購入を促進させることが出来き、客単価
もアップします。
これにより、売上高と営業利益も同様に増加します。
また、特定の商品カテゴリーやサービスに集中し深耕することで、効率的なマーケティング
戦略も展開できます。
ターゲティングを明確にすることにより、効果的なプロモーションや顧客獲得コストを削減
し、売上高と営業利益を増加させる可能性が高まります。
このように、専門化は、スーパーマーケットが、ドラッグストアやディスカウントなどとの激しい競争の中で生き残り、繁栄するための重要な戦略なのです。
顧客のニーズに合わせた商品やサービスの提供、差別化、粗利益と営業利益の拡大など、多くの利点があります。
結果として、競争が厳しい中でも専門化によって、持続可能なビジネスモデルを構築して成長する可能性を、確実に高めることが出来るでしょう。
■顧客満足度の向上のメリットを考える
上述したように、専門化により顧客は専門的なサービスやアドバイスを受けることができ、店舗や担当者に対する信頼性が向上し、顧客満足度が向上し、お互いの絆が醸成されることでリピーター率が増加することも考えられます。
また、顧客のニーズや要望により適切に対応できるため、顧客ロイヤルティが向上し、顧客からの口コミや推奨が増加します。
言うまでもなく、顧客満足度の向上は競争力の強化につながります。
会社は、「顧客が自社の店舗を選択する理由」として、
・高品質な商品やサービスの提供
・商品知識を提供
が重要であることを認識し、チーム一人ひとりが納得し、理解し、情報共有出来る環境を整える努力をすることが求められます。
■従業員満足度の向上のメリットを考える
専門化により、従業員は自身のスキルや知識を発展させる機会を得ることができます。
特定の分野に専門化することで、個々の従業員は自己成長を実感し、仕事に対するモチベーションが向上します。
専門化は、従業員のキャリアパス(積み重ねるべき経験)の明確化にも繋がります。
従業員は自身の興味や能力に応じて特定の分野に集中することができ、キャリアアップの方向性を見いだしやすくなります。
これにより、従業員の意欲や忠誠心が向上し、離職率も低下することも考えられます。
専門化により、担当者はスペシャリストとして専門的な役割を果たすことができるため、自己評価と自信を高めることができます。
そして、仕事への取り組み意欲が向上することは、チーム全体のパフォーマンスを向上させることにも貢献するでしょう。
従業員の専門化は、職場のエキスパート(専門化)としての役割を強固にして、社内で尊敬や信頼を得ることで、職場での存在感や貢献度が増すことにもなります。
■専門化の推進によって得られる会社のメリットのまとめ
専門化の推進は、厳しい経営環境の中でも生産性の向上が実現できます。
専門化により、従業員はより効率的に業務を遂行できるようになります。
作業の効率化や品質向上につながり、業務プロセスの改善を促進します。
結果として、付加価値生産性が向上し、労働コストや時間の節約も実現して生産性がさらに向上します。
結果として、店舗は商圏内における競合店との差別化を実現して競争力を高めることができます。
同じく、競合店では提供できない専門的なサービスや高品質な商品を提供することによって、顧客の信頼を得ることができ顧客生涯価値を高めることができます。
これらのことにより、市場シェアの拡大や新規顧客の獲得が可能が高まります。
社内には、「能力を発揮できないでいる社員が多くいる」と考えてください。
事実、私は今まで、多くのコンサルティングの現場でそれを数え切らないぐらい見てきています。
そしてそのことは、社長、部長、店長、チーフに限らず、パート社員の方々も例外ではないのです。
少しやり方を教えてあげただけで、スキルアップを実現し、今まで考えられなかった実績成果を出してくれる人が、あなたの会社にも多くいるはずです。
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