生産性を上げる、戦略的人事考課 【商人舎magazine12月号】原稿
皆さんの会社では部門別の損益管理をしているだろうか?
会社の損益管理は勿論、店舗の損益管理までしている、というころは少なくないと思う。
しかし、実際に店舗の営業利益をアップさせるにしても、その一つ一つは各部門の損益で成り立っている。
それを知ることは、戦略策定上非常に重要なことになる。
部門別損益の実績を知ることにより、幹部だけではなく、店長や部門のチーフの考え方や、日々の行動にも変化が現れる。
部門別損益を知ることで、日々の行動を変えて、大きな成果を出し、自身が成長をしている人も多くいる。
しかし、中小のスーパーマーケットで、部門別損益を求めて管理している会社は少ないと感じる。
非常に重要なことであるのに、そのことの本当の意味と重要性に気付いていない社長も多い。
部門別損益管理は、業績改善のための必須ツール
特にこれだけ厳しい競争の中にあっては、店舗のカルテというべき部門別損益を知ることは非常に重要である。
当然、私は業務改善のコンサルタントとして、基本的には部門別損益を各クライアントには作成してもらっている。
十数年前の競争がそれほど厳しくない時代は、それがなくても運営はできたし、それなりの利益を出すことができた。
ところが、ここ数年の環境の変化と、そのスピードが増し、競争は劇的に激化し、ドラッグストアやディスカウントストアとの業態を超えた競争が益々厳しくなっている。
また、ここへ来て、すさまじいほどの電気代など固定費の高騰と、仕入れ原価の度重なる値上げ。そして、人件費のアップと人手不足の問題が経営を難しくしている。
当然のこととして、競争が厳しいわけであるから、グロッサリー商品を中心にコモディティー商品の売価も下がる方向に向かうため、何もしなければ全体としては、粗利益も低下しやすくなる。
グロサリー部門では、その対策として、商品開発(導入)、そしてPBの開発が重要となる。
スーパーマーケットの競争戦略上は、独立性を出すということで生鮮食品を強化して、ドラッグストアとの差別化をはかる。
しかし、これらの戦略を実行するにあたって、従来の様な売上と粗利益の管理だけでは、実際の儲けである営業利益の拡大という目標は実現しにくいと言える。
経営者意識は、正しい実績数値が解るから芽生える
部門別損益管理は、担当者の意識を変えると言った。
これは単純なことであるが、「自分の部門が儲かっているのか、儲かっていないのか」、実績数字を見て、気にならない人はいないと思う。
そして、その実績数値の中身を正しく教えて、活用の仕方を教えると、担当者の意識が変わり、言動が変わり、行動が変わることが起こる。
経営者は、部下が「経営者意識があるとか無いとか」言う以前の問題として、部門別損益を算出して自身も知る必要がある。
そして、部下と共有することが、重要なポイントとなる。
このことによって、利益改善のための現場からのアイデアも出てくることも多い。
数字の意味や中身も知らないで、経営者意識といったところで、意識を持つ人がどれくらいいるだろうか。
私の経験から言うと、部門損益の実績数値を見た、バイヤーやチーフなどの担当者の多くは、意識が変わる。
そして、考え方変わる。当然行動が変わる。
当然、日々の言動にも変化が現れる。
このことを、私は今まで、多くの事実として、クライアントの現場で見てきている。
エンパワーメント(権限移譲)でチームは確実に強くなる
部門別損益を求めて管理するということは、権限移譲にも当たる。
今まで、社長からバイヤーや店長レベルまでで管理していた損益管理を、チーフレベルまで落として任せ運営させるということである。
そしてそれを最終目標として行動していくことになる。
そのことによって、個人個人のマネジメントスキルは確実に向上し、チーム全体としても強くなる。
単純に言ってしまえば、部下の全てが、それらを実現するわけではないが、少なくとも前述したように、私の経験から言うと多くの割合で意識を変え、行動を変えてくれることが起こる。
商圏人口が緩やかに伸びて、競争もそれほど厳しくなかった時代は、店舗の客数もそれに合わせるように増えた。
売上も年々伸びたような時代であれば、店長やチーフが損益管理をする必要もなかった。
しかし、これだけ厳しい環境になると営業戦略を確実に策定して無駄なく行動しなければならない。
そして何より、コロナ禍などによって外部環境が大きく変化した。
そして、変化のスピードは、経験したことのないような変化を示す。
その時に、経営者や経営幹部だけが頑張っていても、営業利益を向上させることは非常に難しいと言える。
また、人件費も確実にアップする方向に向いているのであるから、その解決策としても、マネジメント能力を高めて、店長やチーフの仕事の質を高めてもらうことが重要と言える。
このことは、賃金のアップと人手不足に対する対策としても、重要であり、パート社員も含めた、部下の教育と訓練の必要性も見えてくるのではないかと思う。
結果を変えたかったら、改善のスタートを切ること
業績が思うような結果になっていなければ、当然のことながら、いち早く課題を発見して、改善のスタートを少しでも早く切ることが重要となる。
過去にもよくあったことであるが、「部門損益の計算の仕方が解らない」「いろいろ問題があってできない」というような意見も出てくる。
この様なことを言っていては、結果を変えることはできない。
単純な話であるが、税理士や実績を積んでいる専門家に聞けば、簡単に帳票を作ることはできる。そして、その意味も正しく解説してくれると思う。
もしその様なことが出来ない税理士に仕事をしてもらっているのなら、早急に違う人を雇った方が良い。
重要なことは、部門別損益表から、少しでも早く問題を発見して課題を設定し、その改善のための行動計画を策定して、実行することだ。
そして、行動結果から検証を加え、またそれを元にPDCAのサイクルを回すこと。
そこに経営者、経営幹部は集中することだ。
良い結果を出せない人のほとんどは、単純な最初の段階でつまずく。
そして、「結果の出す仕事の仕方」ができないというのが、私の今までの経験則で非常に多いパターンだ。
例えば、スポーツをするにしても、勉強するにしても、自己流でコツコツやるのも悪くはない。
しかし、先述するように、これだけ競争環境が厳しく、そしてそれが止むどころか、これから先もなお厳しくなると考えられる。
この様な環境の中において、ゆっくりと構えること自体が、経営者のマネジメント能力不足だと言える。
繰り返しになるが、少しでも早く行動を起こすこと。そのためには、目標設定と正しい行動計画を立てることが重要となる。
そして、一にも二にも、行動することだ。
そして、部下の力を借りて、チームとして行動することだ。
改善のための部下のスキルが不足していれば、教育をすることだ。
私のクライアントには、営業利益を2倍3倍。場合によっては、10倍以上に変化させた会社がある。
その全てに、共通して言えることは、スピードを持って改善行動を起こしたチームだ。
その重要ツールが、部門別損益管理表であり、目標を変えるということだ。
(念のため・・・、理念やコンセプトを変えることではない。)
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