スーパーの売上を上げる8施策まとめ 買い上げ点数を上げ、客単価向上を目指せ
「どうしたら、もっと売上を上げれますか・・・?」と、
スーパーの売上を上げる方法について質問をいただくことが頻繁にありますが、売上は、ごくごくカンタンな仕組みでできていることをまず理解することが重要です。同様にスーパーでの利益の出し方も含めて事例を踏まえてご紹介します。
スーパーの売上向上は3つのシンプルな方法
「売上を上げる方法とは、どんなものですか?」
マーケティングや業務改善のセミナーで、私がそうたずねると、参加者からなかなか答えが返ってこないことがあります。
重ねて訊ねると「お客様の満足」という答えが返って来ることもあります。しかし、これは売上を上げるための基本的な考え方(コンセプト)であって、私がたずねている「方法」ではありません。
では、スーパーの売上を上げるたった3つの方法とは?
それはズバリ、
①客数を増やす
②客単価を増やす
③顧客の来店頻度を増やす
この3つです。
たった3つだけ、なのです。
「そんなこと誰でも知っているよ!」と、お叱りをいただくかもしれません。実際、新入社員でも答えられるかもしれません。しかし、問題は、単に文言として知っているだけではなく、この3つの方法の本質をどれくらい理解して、売場で実行いるかということです。
客数を増やす
「売上=客数×客単価」という公式は、それこそ誰でも知っているでしょう。この計算式を細分化して考えてみましょう。
「売上」は1日だけのものではありません。商売は継続して行うものですから、1カ月、3カ月(4半期)、6カ月(半期)、1年(期)と期間で捉えます。
この場合、頭数として、何人来店してくれたかということもありますが、ある期間中に1人の顧客が何回来てくれているか、つまり、来店頻度が重要になります。「売上=客数×客単価」の公式にあてはめれば、次のように表すことができます。
売上=客数×来店頻度×客単価
客単価を上げる
レジに並ぶお客様のカゴの中には商品が入っています。その個数はまちまちですが、1人あたりの平均個数を出すことはできます。それが「1人あたり買上点数」です。また、1品あたりの単価も分かります。
すると客単価は「客単価=1人あたり買上点数×1品単価」という計算式になります。
この計算式から、客単価を増やすためには「1人あたりの買上点数」の向上と、「1品あたりの単価」の向上が必要であることが明らかです。
そして、買上点数の向上の方法にはクロスセル(関連商品の推奨)や「〇〇円お買い上げの方のみ」などの条件をつけた条件購買などがあり、
1品あたりの単価向上の方法として、アップセル(高単価商品の推奨)などがあります。
さて、「売上=客数×客単価」という公式に、これまで細分化した計算式を組み込んでみましょう。すると次のようになります。
売上=客数×来店頻度×1人あたり買上点数×1品単価
時折、店長さんが「売上げ2倍増計画」と勇ましい声を上げるものの、店舗スタッフの多くは「そんなことは無理ですよ」とさめた反応しか見せず、かけ声倒れに終わってしまったという話を耳にします。しかし、上記の計算式の4つの要素を、仮に1.2(=20%アップ)として計算してみると次のようになります。
客数1.2×来店頻度1.2×1人あたり買上点数1.2×1品単価1.2=2.07
つまり、売上げ2倍増が達成されるということです。
各要素の20%アップは難しすぎるとお考えでしょうか。では、4つの要素を1.1(=10%アップ)で計算してみましょう。次のようになります。
客数1.1×来店頻度1.1×1人あたり買上点数1.1×1品単価1.1=1.46
つまり、売上46%アップということになります。
売上を上げたいと思うと、目玉商品の赤字を切って、特売チラシを配るということになりがちです。確かに新規顧客の獲得などには効果を見込める方法ですが、印刷代や折り込み代など大きなコストがかかります。また、フロントエンド(呼び込み商品)だけで、バックエンド(利益を出す商品やサービス)のない販売企画では、利益(儲け)がほとんど残りません。この点は、企画段階で十分に検討する必要があります。
そして、店舗の継続的な発展を図るためには、短期的な施策ではなく、「売上=客数×来店頻度×1人あたり買上点数×1品単価」の計算式を頭に置きながら、各要素に対する施策を検討することが大切になります。
売上向上のための3つの方法、「①客数を増やす」「②客単価を増やす」「③顧客の来店頻度を増やす」には、こうした意味があるのです。
トマト売上3倍の営業戦略(売上構成比の高い商品に着目)
次に、別の角度から売上向上について考えてみましょう。それは、「売上構成比の高い商品で全体の売上を推し上げる」という方法です。
私は普段、これを重点(管理)商品と言っています。
総務省が出している「家計調査年報」の「1世帯当たり年間の品目別支出金額(総世帯)」を見ると、トマトは生鮮野菜の中で支出金額が圧倒的に高いことが分かります。2020年8月公開版で6459円。ちなみに、ジャガイモ1751円、キャベツ2154円、ハクサイ924円という数字も出ています。
私がコンサルティングをしている店舗の事例を紹介しましょう。
この店舗でもトマトの売上構成比は高く、野菜部門の売上高の10%程度を占めています。そこでトマトを重点商品として売り込み強化を図りました。品質(産地)、鮮度、種類など品揃えを充実させ、お客様にもその点を強くアピールしました。
その結果は、
・平成26年(2014年) 7月の実績(前年同月比)が、金額ベース182.1%、数量ベース141.1%
・平成27年(2015年)7月の実績(前年同月比)が、金額ベース166.9%、数量ベース181.3%
前々年比で見れば金額ベースで303.9%を達成しているのです。つまり3倍です。
売上構成比が高い商品は、言いかえれば顧客の支持が高い商品です。顧客の支持の高い商品を売り、店も売上を伸ばす。
私は常々、「売ることよりも先に、売れることを考えよ」ということをクライアントに言っています。
顧客に無理して売り込むのではなく、顧客のためになるものを、顧客が納得して買っていく。つまり、「自然に売れていく」状態をつくるという意味です。
この店舗のトマトの事例は、そうした意味で、顧客と店舗のwin-winの関係を形成するものであり、マーケティングとして最高の形と言えます。
トマトはサラダやパスタ、煮物など、料理の応用範囲が広い商品です。そのため、サラダ関連の野菜の購買も期待でき、野菜カテゴリー全体の売上を押し上げることになります。
また、ドレッシング、オリーブオイルなどをはじめとする調味料など、店舗全体でのクロスセル(関連購買)も期待できます。その結果、1人あたり買上点数が上がり、客単価の向上、そして売上向上につなぐことが可能になるのです。
売上アップを図る売場づくり
その際、売場づくりも十分に検討を加えましょう。大切なのが「売り場づくりの4P」を明確にし、実践することです。
「売り場づくりの4P」は次の4つになります。
①何を売るか?→Product(商品や企画テーマ)
②どこで売るのか?→Place(売場の展開場所)
③どのように売るのか?→Promotion(販促方法)
④いくらで売るのか?→Price(価格)
「①何を売るか?(Product)」については、その時期、その季節の重点商品や企画テーマになります。その際、重要なことは品揃えの充実と欠品させないことです。
「②どこで売るのか?(Place)」も大切です。店舗レイアウト上、通過率と視認率の高い場所(マグネット売場)を選定します。通過率と視認率の高い場所で重点商品の売場を展開し、顧客の立寄り率や接触率を上げるということです。
「③どのように売るのか?(Promotion)」は、重点商品をいかにアピールするかということです。
POPや有人推奨(試食)販売は高い効果が見込めます。野菜部門であれば、品質(味)や鮮度、産地などを際立たせる仕掛けが求められます。また商品のアピールに加え、メニュー提案や使い方提案なとで、楽しさ、面白さ、感動など情緒的価値も十分に打ち出しましょう。
「④いくらで売るのか?(Price)」。ここで言う価格(Price)は、基本的に絶対価格ではなく相対価格を考えます。つまり「どのように売るのか?(Promotion)」において、商品の価値を十分に引き出し、お客に伝える努力をする。ということに重点を置くという考え方です。そうすることで値入れを適正に設定することができ、粗利益の拡大を図ることができます。当然ですが、お客が、その商品の価値と価格に納得して商品を選択するということです。
売上構成比の高い商品(企画)に着目して、その商品を「重点商品」として販売に力を入れることは、最も効果的な売上向上戦略となります。
スーパーの粗利益の出し方
スーパーマーケットの経営を考えるうえで、売上が重要であることは言うまでもありません。しかし、売上ばかりに気をとられ、粗利益の伴わない売上を立てても元も子もありませ。ここで基本的な事柄を確認しておきましょう。
1:値入を上げる
1個70円の商品を仕入れ、販売価格を100円にしたとします。
商品の販売価格を決めることが「値入」ですが、この商品を100個仕入れた場合、値入高は「(販売価格100円×100個)-(仕入原価70円×100個)=3000円」になります。これを値入率でみれば、「販売価格100円-仕入れ価格70円÷100×100=値入率30%」です。
値入率を上げれば当然、売上も増えるわけですが、そのためにはそれに見合う価値のある商品でなければなりません。そして、販売においては、お客が理解できるように、その価値を鮮明に押し出すプロモーションが必要になります。価値ある商品を、価値あるタイミングで提供し、その価値情報を発信するということが重要です。
2:商品ロス(値引や廃棄)を減らす
ところで、「(販売価格100円×100個)-(仕入原価70円×100個)=3000円」という計算は、販売前に立てた計算です。この予定通り販売できれば、粗利益3000円になります。率で考えても値入率30%=粗利率30%です。
しかし、実際に商品を売場に陳列してみると当初の予定通りにはいかないことも発生します。見込み通りには売れず、値引きせざるをえないことも起こりますし、商品を廃棄することにもなります。値引きや廃棄が5%発生した場合、粗利率は26%程度に落ちてしまいます。売上を確保するには、商品ロス(値引や廃棄)を減らすことが大切になります。
値引きや廃棄などのロスは、店舗の業績に大きく影響します。天気や気候による顧客動向の変化を注視するウエザーマーケティングの活用やPOSデータの活用、競合店調査など、データに基づいた対策がポイントになります。特にPOSシステムの単品データの管理と日々の活用、その仕組みづくりは、重要なことになります。
スーパーマーケットのピーク時間帯はお昼と夕方ですが、値引きのタイミングを間違えると売れ残りが多くなってしまいます。ピーク後に値引きを行っても客数が少なく商品をさばききれません。結果的に、売れ残りを少なくするため、さらに値引率を高めることになってしまいます。
売場スタッフの経験や勘で行っている場合が少なくありませんが、データとつき合わせることで、ロス削減の精度が向上します。
また、値引きのタイミングや(単品ごとに)何%の値引きにするか、この点もPOSデータを基に一定の法則を立て、実地確認を行い、売場の状況とつき合せて日々柔軟に対応することが必要です。
3:売れ筋商品の欠品をなくす
そして、もう一つの課題となるのが、商品の欠品をなくすことです。欠品は、せっかくの販売機会を失うということです。モノのロスではなく、機会(チャンス)のロスです。
欠品をなくすには、やはりPOSデータ(ベストレポートなど)によって単品ごとに、陳列数量や発注数量などを精査します。ただ、全アイテムを確認して対策を立てるのは現実的ではありません。まずはアイテムを絞り込んで実績数値を確認し、対策を立てていきましょう。販売の時間帯、販売場所、販売日(曜日)、値引き量など、さまざまな調整が考えられるはずです。
また、売場の状況を確認することも忘れてはなりません。POSデータだけでは分からない欠品時間や売場状況などがありますし、欠品の原因もメーカーの品枯れ、発注担当者のミス、問屋の欠品などさまざまです。
欠品が、「どこで、どのように起きている」か、その原因を正しく調査して、どう対応するか対策を具体的に立て、実行する仕組みを作ることが大切です。
欠品は「お客様の不満」の中でも最たるものですし、信用低下にも繋がり粗利益を大きく低下させしまう原因になります。
しかし、欠品を恐れ、むやみに発注をかければ過剰在庫になり商品ロスを生みます。
この項のタイトルを単に「商品の欠品をなくす」ではなく、「売れ筋商品の欠品をなくす」としてある点に注意してください。欠品があってもいい、というのではありませんが、売れる商品に欠品があっては、売上も粗利益も上がらないということです。売れ商品の欠品をなくすことは、スーパーマーケットの重要課題なのです。
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