第9回 チーム一体化!共通目標は「ロス削減」から

「あの人とはどうも価値観が合わない」「何度言ってもやり方を変えてくれない」。 リーダーであれば、一人や二人は「苦手なスタッフ」がいるものでしょう。 しかし、自分が正しいと確信している時ほど、無意識に相手を否定し、心のシャッターを閉ざしてはいないでしょうか。 第22回は、正論で相手を追い詰めるのではなく、相手をそのまま受け入れる「器」の作り方についてお話しします。
店舗運営が軌道に乗り、数字も改善してくると、リーダーにはある「落とし穴」が待ち構えています。それは、「自分の成功パターンが正解だ」と強く信じすぎることで、異なる意見を持つ相手を排除しようとする心理です。店長には、以前から関係構築に苦労しているベテランの女性スタッフがいました。 「彼女は、私が提案する新しい仕組みに対して、いつも『昔はこうだった』『そんなの無理だ』と否定的なことばかり言うんです。正直、彼女と話すだけでストレスを感じます」店長が正しい理論(正論)を伝えれば伝えるほど、彼女は頑なになり、現場の空気は重くなっていました。店長にとって、彼女は「改革を阻む壁」のような存在になっていたのです。私は店長に、一つの問いを投げかけました。 「君は彼女を変えようとしているけれど、彼女の『背景』を理解しようとしたことはあるか? 自分が正しい時ほど、相手を否定したくなる。だが、リーダーの仕事は相手を言い負かすことではなく、相手を活かすことだ」
【「正論」は時に相手を傷つける武器になる】私は店長に、相手を受け入れるための「器」を作る3つのステップを伝授しました。
「正しさ」を一度横に置く 自分が100%正しいと思って接すると、相手の言葉はすべて「間違ったノイズ」に聞こえます。まずは「自分のやり方は一つの方法に過ぎない」と自分に言い聞かせ、相手の話を聞くスペースを心の中に作ることです。
相手の「大切にしていること」を探す 彼女が「昔はこうだった」と言う裏側には、何があるのか? もしかすると、長年店を支えてきたという自負や、急激な変化への不安、あるいは顧客とのこれまでの絆を守りたいという思いがあるのかもしれません。その「価値観の源泉」を探り当てることが、理解の第一歩です。
「YES, AND」で応える 相手の意見を「NO」で否定するのではなく、「なるほど、〇〇さんはそう考えているんですね(YES)。その上で、こういう視点も加えてみませんか?(AND)」と、相手を包み込んだ上で自分の意見を添える技法です。
【対立が「補完」に変わる瞬間】店長は勇気を出して、その苦手なスタッフと改めて向き合いました。 今度は指示を出すためではなく、彼女の経験を聞くために。「〇〇さんが長くこの店を見てきて、一番大切にしてきたことは何ですか?」 そう問いかけた時、彼女の口から出たのは、今の店長が効率化の中で見落としそうになっていた「常連客一人ひとりの好み」や「地域に根ざした接客の細やかさ」への強いこだわりでした。店長はハッとしました。彼女は「否定」していたのではなく、店長が壊してしまいそうな「大切なもの」を必死に守ろうとしていただけだったのです。店長が「その視点は今の私には欠けていました。教えてくれてありがとうございます」と、自分の「負け」を認めるように感謝を伝えた瞬間、彼女の頑なな表情が和らぎました。それ以来、彼女は店長の改革を支える「最強のアドバイザー」へと変わったのです。
【コーチの視点】リーダーの器の大きさは、「自分と異なる人間をどれだけ許容できるか」で決まります。 自分が正しい時ほど、相手を論破したくなる誘惑に駆られますが、それでは人は動きません。 相手を否定せず、その人の背景にある正義を認めること。 その「器」が深まれば、チームの多様性はそのまま組織の強みへと昇華されます。あなたの周りにいる「苦手なあの人」は、実はあなたが成長するために必要な「別の視点」を持っている鏡なのかもしれません。
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