第30回 効率よりも先に「効果」を求めよ

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



「もっと手際よく」「もっと短時間で」。 生産性を上げようとする時、私たちはつい「効率(スピード)」ばかりを追い求めてしまいます。しかし、間違った方向に全力疾走しても、ゴールには辿り着けません。 大切なのは、その作業がどれだけの「効果」を生んでいるかを見極めることです。 第30回は、優先順位の最終判断基準である「効果」と「効率」の優先順位についてお話しします。

前回、無駄なルールを削ぎ落とし、本質的な対策に集中することで現場の混乱を鎮めた店長。スタッフの動きは軽やかになりましたが、店長にはまだ迷いがありました。「スタッフから『効率化のためにこの作業を省きたい』という提案がよく出るんです。確かに時間は短縮されますが、何かが欠けていくような気がして……。何を基準に判断すればいいのでしょうか」店長は、「時短」という目先のメリットと、「店舗としての質」という目に見えにくい価値の間で揺れていました。私は彼に、優先順位の究極の物差しを伝えました。 「効率よりも先に『効果』を求めよ。効果のない効率化は、ただの手抜きだ。」

【「効果」と「効率」の定義を分ける】私は店長に、二つの言葉の違いを明確に理解させました。

効果(Effectiveness): その行動が「目的(売上、顧客満足、信頼)」にどれだけ寄与するか。

効率(Efficiency): その行動を「いかに少ない労力・時間」で遂行するか。

「例えば、お辞儀の角度を簡略化して1秒短縮するのは『効率化』だ。しかし、それによってお客様が『雑に扱われた』と感じたら、リピート率という『効果』は激減する。これは最悪の選択だよね」店長はハッとしました。スタッフからの提案の多くは、自分たちの作業を楽にする「効率」の話ばかりで、その先の「お客様への効果」が抜け落ちていたことに気づいたのです。

【優先順位の最終判断基準】私は店長に、新しい判断基準を定着させるよう指導しました。

ステップ1: その作業の「目的(期待する効果)」は何かを再定義する。

ステップ2: 現在のやり方がその「効果」を最大化しているか確認する。

ステップ3: 「効果」を損なわない範囲で、初めて「効率」を追求する。

店長は、野菜の霧吹き作業を例にスタッフに説明しました。 「作業を早く終わらせる(効率)ために霧吹きの回数を減らすのはダメだ。野菜を新鮮に見せて、お客様に手に取ってもらう(効果)ために、最も効果的な霧吹きのタイミングを考えよう。その上で、どうすればその作業を短時間でできるかを工夫しよう」この「効果ファースト」の考え方が浸透すると、現場の判断基準が「楽かどうか」から「価値があるかどうか」へと劇的に変わりました。

【自律したチームの完成形】「効果」を意識し始めたスタッフは、自ら新しい提案をするようになりました。 「効率を重視してやめていた『手書きPOP』ですが、やはりお客様の反応(効果)が良いので、隙間時間を使って再開したいです」 といった、本質的な意見が出るようになったのです。店長は、自分が細かく指示を出さなくても、スタッフが「これはお客様のためになるか?」と自問自答しながら動く姿を見て、強い手応えを感じました。

【コーチの視点】 忙しい現場ほど、「早く終わらせること」が正義になりがちです。 しかし、リーダーが忘れてはならないのは、その作業の先にある「お客様の笑顔」や「利益」という効果です。 「それは何のためにやっているのか?」 この問いを常に持ち続けることが、効率の罠に陥らない唯一の道です。

#コーチング#パーソナルコーチング#リーダー育成#店長育成

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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