第18回 「やらされている仕事」から「自分で決める仕事」へ

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



スタッフが指示待ちで、主体的に動かない。そう嘆くリーダーは、スタッフの「責任感」のなさではなく、彼らに「責任ある決定権」を渡していない自らの行動を疑うべきです。 人間は、他人に強制された行動には熱意を持てませんが、自分で決めた行動には責任を持ちます。 第18回は、スタッフに権限を委譲し、チームのモチベーションを劇的に向上させた店長の物語です。

前回、判断基準を共有することでスタッフが自律的に動くようになった話をしました。 しかし、店長はさらに高い壁を感じていました。それは、スタッフの主体性が「決まったルールの中で動く」レベルに留まっていたからです。「指示したことはやってくれる。でも、新しい提案や、自分で考えてトラブルを解決する姿はまだ少ないです」私は答えました。 「それは、君が彼らに『失敗する権利』を渡していないからだ。」スタッフが自ら動かないのは、間違えた時に叱られる恐怖があるからです。または、指示に従うほうが楽だからです。私は店長に、自分の仕事のいくつかをスタッフに引き継ぐ「権限委譲」を促しました。

【「決めていい範囲」を明確にする】権限委譲とは、単に仕事を丸投げすることではありません。スタッフが安心して判断できるよう、明確な境界線を引くことです。私は店長に、スタッフに渡す権限を以下の3段階で設計させました。

報告不要で実行していい範囲: (例:日々の棚卸、POPの差し替え)

実行前に報告すればいい範囲: (例:通常とは異なる陳列の変更、10%以上の値引き)

判断を仰ぐべき範囲: (例:他店舗への在庫移動、大きなクレーム対応)

この定義をスタッフに伝えたところ、最初は戸惑いを見せていました。しかし、店長が「この範囲内なら、どんな結果になっても私が責任を取る。安心して挑戦してくれ」と伝えると、彼らの目が変わりました。

【スタッフの「自尊心」が熱意を生む】権限を渡されたスタッフの一人は、以前からやりたかった「季節のトレンド商品」を集めた特設売場を、自らのアイデアで作り上げました。 店長は、その売場に対して具体的なフィードバックを行い、スタッフの「判断の精度」を高めました。すると、そのスタッフは「次はもっとこうしたい!」と自ら新しい企画を持ってくるようになりました。 彼らにとって、仕事は「やらされている作業」から「自分の考えを表現する場所」へと変わったのです。結果として、スタッフのモチベーションは向上し、提案された売場は顧客からも好評で、数値にもプラスの効果をもたらしました。

【コーチの視点】リーダーがすべての判断を下すと、リーダーの限界が店舗の限界になります。 スタッフに「責任」という負荷をかけることは、同時に彼らに「成長」というギフトを贈ることです。 あなたが渡せる「判断のチャンス」は、まだ隠されていませんか?

次回は、「第19回 「リーダーの休息」は、チームの生産性を上げる」です。

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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