第2回 他力本願では店舗は救えない

「私が休むと、店が回らない」。そんな言葉を誇らしく話すリーダーがいますが、それは組織が未熟であることの裏返しです。 リーダーが疲弊し、心に余裕がなくなれば、正しい判断ができず、スタッフにも不穏な空気が伝染します。 第19回は、リーダーが勇気を持って「仕事を離れる」ことが、いかにチームの主体性を育み、組織のパフォーマンスを最大化するかについてお話しします。
前回、スタッフに権限を委譲し、主体性を引き出す手法をお伝えしました。店長はスタッフの成長を実感していましたが、一方で「それでも、最終的な確認は自分がしなければならない」という思い込みから、休みの日も頻繁に店舗に電話をかけ、業務をチェックしていました。
スタッフからすれば、権限をもらったはずなのに、監視されているようで安心して動けません。
私は、店長に極めて重要な「勇気」を求めました。 「次は、一日完全に店舗の業務から離れなさい。電話もメールも禁止だ。」
店長は青ざめました。「そんなことをしたら、店がめちゃくちゃになってしまう!」と。 しかし、私は言い切りました。「崩壊するなら崩壊すればいい。それは、君がこれまで『仕組み化』を怠ってきた証拠であり、その事実に向き合うことが、チームが真に自走するための最後のステップだ。」
【「休み」を準備するプロセスこそが仕事】
店長は腹を括り、自分が不在になる日に備えて、以下の「準備」をスタッフと共有しました。
1.予測可能なトラブルの共有: 「この時間帯はレジが混む」「〇〇さんが来るかもしれない」といった、過去のデータに基づくリスクをリスト化した。
2.判断マニュアルの再確認: 以前共有した「判断基準」を読み合わせ、その場で迷わないようにした。
3.責任の明確化: 不在時の責任者を指名し、「何かあっても、責任は後でまとめて私が取る」と伝えた。
この「休みに入るための準備」こそが、これまで店長が一人で抱えていた「店全体の状況」を、スタッフ全員が理解するプロセスとなりました。
【店長不在の店舗がもたらした奇跡】
店長が完全に休みを取った日。 店舗ではいくつかの小さなトラブルが発生しましたが、責任者となったスタッフを中心に、共有された「判断基準」に基づいて迅速に対応されました。 さらに、店長に頼らずに自分たちで決断できたという体験は、彼らに計り知れない自信をもたらしました。
翌日、店長が出勤した時、スタッフは笑顔で「店長がいなくても大丈夫でしたよ!」と報告しました。 店長は、自分の不在が店舗の限界ではなく、むしろ「新たな可能性」を開いたことに気づきました。
【コーチの視点】
リーダーが休めないのは、仕組みが機能していないか、あなた自身が手放せないかのどちらかです。 あなたが現場を離れる時間は、スタッフがリーダーシップを経験する時間です。 最高のチームを作りたいなら、リーダーはまず、「自分がいなくても回る組織」を作る努力をし、そして勇気を持って休んでください。
次回は、「第20回 リーダーの「自己承認」が、チームの限界を突破する」です。


