第2回 他力本願では店舗は救えない

チームのバラバラな方向性を一つにまとめたい。そう思った時、リーダーがすべきは言葉の羅列ではなく、明確な「目標」を示すことです。 第9回は、バラバラだった店舗スタッフを一丸にし、劇的な数値改善をもたらした、ある「張り紙」の物語をお話しします。
前回、店長が勇気を持って自分の意見をスタッフに伝え、チームワークの第一歩を踏み出したエピソードを紹介しました。 しかし、信頼関係が醸成され、コミュニケーションが取れるようになっただけでは、店舗経営は成り立ちません。 売上を上げ、利益を確保する。そのための「共通言語」が必要でした。私は店長に、チームの一体感を醸成しつつ、直接的に利益を改善できる目標設定を提案しました。 それが「店舗全体のロス削減」です。売上を上げるのは難しい。しかし、廃棄商品を減らすロス削減は、スタッフ一人ひとりの行動で明日からでも結果が出せる。かつ、店舗全体の数値意識を高めるのに最適な目標でした。
【「張り紙」が起こした奇跡】店長はすぐに行動に移しました。 彼がやったことはシンプルです。店舗のバックヤードに、以下の内容を記した張り紙をしました。
店舗の経営目的: 私たちは売上・収益を上げるためにここにいる。
ロスの意味: ロスは収益を直接的に減らし、スタッフの努力を無にするものである。
具体的な目標: 利益を上げるため、今月はロスを〇%減らす!
最初は、「そんなことで変わるのか?」と半信半疑だった店長。 しかし、結果は驚くべきものでした。なんと、次の月のロス率が約3ポイントも下がったのです。 なぜ、これほど劇的な成果が出たのか。それはスタッフ全員が「自分の仕事が利益にどう影響しているか」を理解し、「ロスを減らしたい」という思いを共有できたからです。
【成果を生んだ「3つのポイント」】この成功要因を分析すると、リーダーとしての「人に影響を与える力」の本質が見えてきます。
目標の共有: 何を目指しているのか、スタッフ全員が同じ認識を持った。
手段の共感: 目標達成のために「どう行動すればよいか」を共有し、スタッフもそれを納得した。
環境の整備: 張り紙という形で常に見える化し、意識し続けられるようにした。
ロス削減の成功は、スタッフにとって「自分たちの努力で成果が出た」という成功体験になり、店舗全体の参画意識を劇的に高めました。 店長は、この経験を通じて「リーダーが目標を明確に示せば、チームは変わる」という確信を得たのです。
【コーチの視点】あなたのチームのスタッフは、今月の目標を「自分事」として理解していますか? 「売上を上げろ」と言うだけでは、スタッフは動かない。 「なぜ利益が必要なのか」「ロス削減が自分たちにどうプラスになるのか」を論理的かつ情熱を持って伝えること。それがリーダーの仕事です。
次回は、「第10回 成功体験を「仕組み」に変えて、組織を自走させる」です。


