ドクターズクラーク
【相談内容】
近畿地方で開業2年目の整形外科クリニックの院長よりご相談をいただきました。
「開業以来、私が孤軍奮闘で診療と事務をこなしてきましたが、患者数・スタッフ数も増え、時間的にも体力的にも限界がきています。この先、長くクリニックを運営していくために、妻に手伝ってもらうことにしました。ただ、院長夫人がクリニックに入るとトラブルが多いと聞きます。どんな点に注意すればいいでしょうか?」
【回答】
以前は「奥様はできるだけ現場に関わらない方が良い」とお伝えすることが多くありました。
しかし近年は事情が変わってきています。看護師や事務スタッフの離職率が上がり、院長一人では組織を支えきれないクリニックが増えています。
そんな中で、院長夫人が補佐的マネジメントの担い手として関わることで、安定した運営を実現するケースも増えてきました。
とはいえ、夫婦で経営を行う以上、感情的な衝突や人間関係の摩擦も起こりやすいものです。
ここでは、院長夫人の力を最大限に生かすための3つのポイントをお伝えします。
■ポイント① 夫婦で「経営の課題」を共有する場をもつ
まず大切なのは、「夫婦で同じ危機感をもつこと」です。
院長には診療現場の課題が、夫人にはスタッフや運営上の課題が見えています。
この“異なる視点”を共有せずに進めてしまうと、意見がすれ違い、夫婦間の溝が深まることもあります。
定期的に1時間でもいいので「経営ミーティング」を設けましょう。
税理士・社労士・経営コンサルタントなどの専門家に同席してもらい、数字や労務の情報を交えて冷静に話すことで、感情に流されず建設的な意見交換ができます。
この「夫婦経営会議」は、クリニックを長く続けるための最強のリスクヘッジです。
■ポイント② 職務権限と役職を明確にする
次に重要なのは、「院長」と「院長夫人」の役割と権限の線引きです。
特に問題になりやすいのが“人事・待遇・指導”の分野です。
たとえば、あるクライアントでは、院長夫人が独自判断でスタッフ面談を行い、「あなたは常勤としての働きが不十分だからパートに変更するかも」と告げた結果、スタッフが辞めてしまったケースがありました。院長はまったく知らされておらず、信頼関係の崩壊につながってしまいました。
意思決定は院長が行い、夫人はその実行をサポートする立場であることを明確にしておきましょう。
スタッフへの説明も、院長本人の言葉で伝えることを原則にしてください。
「奥さんから給料をもらっているわけではない」という反発を防ぐためにも、待遇に関する話題は院長か、必要に応じてコンサルタントなど第三者が同席して説明するのが望ましいです。
また、意外に見落とされがちなのが「呼び方」です。
「奥さん」「奥様」ではなく、「事務長」「マネージャー」「チーフ」などの正式な役職名で呼ばれるようにしておくと、スタッフとの距離感が程よく保たれ、信頼関係を築きやすくなります。
■ポイント③ 業務を抱え込みすぎない
クリニック運営には、事務、採用、備品管理、業者対応、クレーム対応など、多岐にわたる業務が存在します。
これらを「とりあえず妻が手伝う」という形で始めると、どこまでが自分の仕事なのか曖昧になり、夫婦双方が疲弊してしまいます。
おすすめは、「業務分担表」を作成し、院長・夫人・スタッフそれぞれの役割を明文化しておくことです。
当社がサポートしている関西地方のH内科クリニックでは、子育て中の院長夫人が「税理士・社労士との連絡係」と「院内清掃の統括」だけを担当。給与計算などの専門業務は外部に委託し、**“できる範囲で長く関わる”**体制を整えています。
抱え込まず、外注や専門家をうまく活用することが、院長夫人の笑顔を守る秘訣です。
■まとめ
クリニックにおける「院長夫人の力」は、経営の安定に直結します。
しかしその力を発揮するためには、
①夫婦で経営課題を共有し、
②権限を明確にし、
③抱え込みすぎない工夫
が欠かせません。
当社ではこれまで、300名以上の院長夫人のマネジメント支援を行ってきました。
「夫婦でより良い関係を保ちながら、クリニックを成長させたい」――そんな院長・奥様の思いを、面談やZoomで丁寧にサポートしています。
ご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。



