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コラム
相続放棄で自宅と縁を切れるか?
2022年5月31日
「相続放棄したい」といったお話を聞くことがあります。相続放棄すれば完全に手離れできると思っていませんか。実はそうとは限りません。今回は不動産の相続放棄を取り上げます。
相続放棄の件数は増加傾向にあります。少し古いデータになりますが、最高裁判所の司法統計年報によると、「相続の放棄の申述の受理」件数は、平成16年の約14万件から平成26年の約18万件へと増加しています。年率2%強の増加率になります。
相続放棄をすれば、原則、相続人は被相続人が有していた権利や義務を相続しないことになり、相続財産には何ら責任を負いません。そして、法定相続人全員が相続放棄した場合は、相続人が一人もいない所有者不在の財産となります。例えば、配偶者や子が相続放棄すれば、次に親や兄弟姉妹が相続人になりますが、次順位の相続人を含め全員が相続放棄した場合を指します。
法定相続人全員が相続放棄すると、債権者等から家庭裁判所に申し立てがあれば相続財産管理人が選任されます。相続財産管理人が相続財産の清算等を行い、残った財産は国庫へ引き継がれるのが原則です。もし、債権者等に加え、相続放棄した相続人の誰かが申し立てをしなければ、相続財産管理人は選任されません。
相続放棄された財産が不動産の場合、その管理責任は相続人にあります。相続放棄したからと言って、当然に管理責任がなくなる訳ではなく、その不動産が原因で第三者に損害を与えれば、損害賠償責任問題になり得ます。
また、相続財産管理人を選任するには、多い場合には100万円程度の予納金が必要となります。財産管理に必要な費用はそれで負担し、それで賄えなければ相続財産から支払われます。しかし、不動産以外に相続財産がない場合には相続人の持ち出しとなります。
更には、相続放棄された不動産が最終的に国庫へ帰属できるとは限りません。寧ろ清算できない、売れない不動産を国は引き取らないと考えるべきでしょう。そうなれば相続財産管理人の業務は終了しません。
このように相続放棄したとしても、相続財産管理人を選任すれば清算できない限り費用負担が続きます。一方、選任しなければ所有権はない不動産の管理責任はなくなりません。だとすれば、単純相続し自ら維持管理しながら売却先を探す方が有利なこともあります。
つまりは、安易に相続放棄することは避けて、相続する場合との損得を慎重に比較検討することをお勧めします。それも時間的に余裕がある早い時期から始めるのがベターでしょう。
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