先代は結果で語り二代目社長はプロセスが大事

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:同族.家族経営の父子対立

同族家族経営の会社の、先代である父親は結果で語るが、息子はプロセスに意味を見出すことが好きで、社内で意見の食い違いが起こり揉めます。以下に、原因と手っ取り早く出来る改善策を整理したいと思います。

世代間の評価軸とコミュニケーションスタイルの衝突

父親である先代の「結果で語る」ビジネススタイルは、高度経済成長期を生き抜き、会社の基盤を築き上げた経営者に多く見られます。
この価値観は、成果主義や効率性を重視し、明確な数値目標の達成こそが企業の成長に直結するという考えに基づいています。
経験上、プロセスに時間をかけるよりも、結果を出すことに集中することが最も効率的だと考えている現れです。

一方、息子である二代目社長の「プロセスに意味を見出す」という考え方は、現代の多様な働き方や従業員のエンゲージメントを重視する傾向に合致しています。
プロセスを重視することで、従業員の主体性や創造性を引き出し、納得感を持って業務に取り組んでもらうことで、長期的な視点での組織力強化を目指していると思われます。
また、失敗から学び、改善を重ねる過程そのものに価値を見出すことで、持続的な成長に繋げたいという意図もあると思われます。

このような「結果」と「プロセス」の重視度の違いは、多くの意見の対立の根本原因となります。どちらの考え方も、会社をより良くしたいという共通の目標から生まれていますが、そのアプローチ方法が異なるために対立 が生じ、社内や家庭内で揉め事を引き起こす可能性が高くなります。

具体的には、以下のような問題が発生します。

評価基準の不一致:

どちらの評価軸に合わせれば良いか混乱します。結果を出してもプロセスが評価されなかったり、プロセスを重視しても結果が出なければ評価されないといった状況は、モチベーションの低下に繋がります。

コミュニケーションの齟齬:

会長は結果を求めるため、具体的な指示や報告を簡潔に求めがちです。一方、社長はプロセスを重視するため、詳細な進捗報告や意見の交換を求めます。
これにより、コミュニケーションのミスマッチが生じ、互いに不満を抱く原因となります。

意思決定の非効率化:

意思決定の非効率化: 新規事業の企画や業務改善の際、会長は「結果が出るのか」を最優先にし、社長は「そのプロセスが適切か」を問うため、議論が平行線を辿り、意思決定が遅れる可能性があります。

はぐらかす

改善策1. 相互理解と共通言語の構築

先ず、なぜお互いがその価値観を持つに至ったのか、背景にある経験や考え方を理解し合うことが重要です。

目的の共通化と「対立解消図」の活用:

会長と社長は「会社を良くしたい」という共通の目的を持っているはずです。結果とプロセスの対立の背景には、それぞれ異なるニーズとそこに至るための仮定が存在します。
経営コンサルタントのような第三者を交え、「対立解消図」などのツールを用いて、それぞれの主張(結果を重視する、プロセスを重視する)の裏にあるニーズ(例:会長は「会社の安定」、社長は「社員の成長」)を明確にします。その上で、これらの異なるニーズを両立させるような共通の目的(例:「持続的な企業の成長と社員の幸福」)を設定し、言語化します。

言葉の定義の統一:

結果」と「プロセス」という言葉が、お互いにとって何を意味するのかを明確に定義し、共通認識を持つことが重要です。
例えば、「結果」は単なる売上だけでなく「顧客満足度」や「従業員エンゲージメント」といった非財務指標も含むこと、また「プロセス」も単なる手順だけでなく「効果的な学び」や「改善の機会」といった意味合いを持つことを合意します。
これにより、同じ言葉を使っていても認識のずれが生じる「論点のずれ」を解消します。

改善策2. コミュニケーションプロセスの改善

意見の食い違いを乗り越えるためには、建設的な対話の場を設け、コミュニケーションの質を高めることが不可欠です。

定期的な経営会議でのアジェンダ設定:

経営会議において、「結果の報告」と「プロセスの共有」の両方をアジェンダに含めることを習慣化します。
会長には、結果だけでなく、その結果に至るまでのプロセスでの工夫や学びにもコメントを求めるように促します。
社長には、プロセスの説明だけでなく、それが具体的にどのような結果に繋がり、今後どのような成果を目指すのかを明確に説明するよう求めます。

フィードバックの質と方法の改善:

会長は、結果だけでなくプロセスにおける努力や工夫に対しても具体的なフィードバックを与えることを意識します。
社長は、結果だけでなくプロセスの課題や改善点についても率直な意見を求め、双方向のコミュニケーションを強化します。この際、批判ではなく、改善を促す建設的なフィードバックを心がけます。

第三者によるファシリテーション:

意見の対立が感情的になりやすい場合には、経営コンサルタントなどの第三者がファシリテーターとして対話に参加することも有効です。第三者は中立的な立場で、双方の意見の聞き取りを通じて対立を整理し、合意点を見つける手助けをします。

改善策3. 明確な役割分担と権限委譲を通じた共存

「結果」と「プロセス」それぞれに意味を持たせ、役割を明確化することで、両者の強みを活かす体制を構築します。

会長は「指標と評価」、社長は「戦略と実行」:

会長には、会社全体の最終的な結果指標(例:利益率、市場シェアなど)を明確にし、その達成状況を評価する役割に注力してもらいます。
社長には、その結果を出すための具体的な戦略立案、プロセス設計、そして日々の実行を担う権限を委譲します。
社長は、計画したプロセスがどのように結果に貢献しているか、あるいは課題がある場合はそのプロセスをどのように改善していくかを会長に報告します。

「結果」を出すための「プロセス」の実験的な導入

社長は、新しいプロセスや取り組みを導入する際に、最初は小規模なプロジェクトや特定の部署で試行し、その効果を「結果」として示すことを提案します。
この成功事例を積み重ねることで、会長の「結果重視」の姿勢に訴えかけ、プロセスの重要性を具体的な成果で理解してもらうことができます。

人材育成における両面からのアプローチ:

組織全体として、結果を重視する文化とプロセスを重視する文化の両方を育成します。目標達成のための結果へのコミットメントと、それを支えるための効果的なプロセス改善や学びの機会提供をバランス良く取り入れます。
例えば、成果に応じた報酬だけでなく、新しい知識やスキル習得のための研修など、プロセスを評価する仕組みも導入します。

親子背中

結びに

これらの改善策を継続的に実践することで、会長の「結果を出す」ための強い推進力と、社長の「プロセスを通じて価値を生み出す」という柔軟な思考が融合し、強固で持続的な企業へと発展していくことが期待されます



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上原輝夫
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上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

上原輝夫プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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