同族.家族経営の二代目社長が直面する先代の影響

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:同族.家族経営の二代目社長のお助けコラム

同族.家族経営の会社では、先代が会長や相談役として会社に関与し続けるケースが多く見られます。長年組織を率いた創業者の存在は社員にとって大きな安心感となる一方で、二代目社長にとっては意思決定のスピードや方向性にズレが生じやすい要因にもなっています。
その背景には、立場の曖昧さや権限移譲の不徹底など複合的な構造が原因です。以下に、原因と対策を整理していきたいと思います。


原因①:役割の重複と曖昧な権限分担

先代が経営の第一線から退いたとはいえ、会長や相談役として残る場合、「経営への影響力」が根強く残ります。社員は「社長の指示より会長の意見を重視する」傾向が見られ、二代目の意思決定が実質的に後回しにされることにつながっていきます。これは、権限が形式的に譲渡されたとしても、実態として先代の影響力が強い場合に発生しています。

対策:権限と意思決定の範囲を文書化

先ずは、二代目と先代のそれぞれの役割と決裁権限を明文化し、社内に周知徹底することが重要になってきます。人事、財務、営業、事業戦略などの分野ごとに「最終意思決定者」が誰であるかを示すことで、社員も迷いなく行動できるようになります。
また、先代と協議のうえ「会長.相談役としての立ち位置」を再定義することで、意見を求める場面と意思決定を任せる場面の区分が明確になり、運用もし易くなります。

ワンマン社長

原因②:経営方針の世代間ギャップ

先代は過去の成功体験や価値観を基準に意思を示す傾向があります。市場環境や社会構造が変化する中で、それが現代の経営にマッチしないこともしばしばです。二代目が新しい戦略を示しても、先代が「昔のやり方」に固執し、意思決定が停滞するケースも、実際に事例として多く見られます。

対策:ビジョン共有と対話型意思決定の場

両者の経営観の違いを正面から取上げ、定期的な経営会議や1on1ミーティングを通じて、企業としての「将来ビジョン」や「経営方針」を共有することが大切です。
また、外部から経営全般の見識が深い専門家やコンサルタントを交えた対話の場を設けることで、感情ではなく実際のデータと論理に基づいた意思決定が可能になります。

親子経営会社前

原因③:社員の意識と組織文化の固定化

長年先代の指示で動いてきた社員は、「会長こそが本当の意思決定者」と感じているケースが圧倒的に多いです。二代目が改革を打ち出しても、「前はこうだったのに」と抵抗され、方向性のズレが表面化し争いになるケースもあります。

対策:組織風土改革と社長主導の仕組み構築

最初に、「社長が企業の現在と未来を牽引する責任者である」という認識を社内に根付かせる必要があります。役職だけではなく、社長が主導するプロジェクトや表彰制度、評価体系などの“目に見える仕組み”を通じて社員の意識を変えていくことが大切です。

並行して、先代から社員へのメッセージとして「今後は社長に任せる」という宣言をしてもらえば、移行はよりスムーズになります。

親子経営

結びに:両世代の共存と対話が企業の競争力を高める

意思決定のズレは、単なる世代間対立ではなく、「共存の仕組みが不十分であること」の表れでもあります。重要なのは、相互の尊重と役割の明確化、そして全社的な合意形成の仕組みです。

先代の知見と二代目の柔軟性が融合する時、同族.家族経営は“強いしなやかさ”を持つ組織へと進化していきます。二代目は肝に銘じて、取組んでいくことがとても大切になっていきます。



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上原輝夫
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上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

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