大人ピアノ指導法:「らくらくピアノ」基本の3つの柱
はじめに——「一つの畑」では限界がある
顧客が求めるものを提供できる音楽教室となるために、まず手放さなければならないものがあります。それは、長年染み付いた「固定観念」です。
かつて私自身も、自宅の一室で朝から晩まで生徒さんをお迎えし、何年もかけて少しずつ教室を育ててきました。しかし、あるとき気づいたのです。
「一つの畑で作物を育てるより、複数の畑を持った方が、収穫は何倍にもなる。」
教室も同じです。一つの拠点に縛られるのではなく、カルチャーセンター・企業・サークル・地域施設など、複数の活動拠点を持つことで、大人ピアノ指導のビジネスは大きく広がっていきます。
そのためには、これまでの常識を一度リセットする必要があります。
固定観念を手放すべき「6つの視点」
活躍の場を広げるために、ぜひ頭に入れておいていただきたい6つの要素があります。
楽器・場所・人数・金額・時間・指導法
この6つに縛られないこと——これが、新しいチャンスを生み出す鍵です。
目を閉じて、すらすらと言えるくらい体に染み込ませてください。この6つが自然に頭に浮かぶようになると、「あ、ここでも教室ができる!」という発想が自然と湧き出てくるようになります。
では、一つひとつ見ていきましょう。
① 楽器に縛られない
「ピアノを教えるには、ピアノがなければならない」——そう思っていませんか?
以前、数百人規模の体験会を開いたことがあります。もちろん、それだけの台数のピアノを用意することはできません。そこで活用したのが、A3サイズの紙でした。
A3の用紙を横長に使うと、ちょうど1オクターブ分の鍵盤を描くことができます。そこに著作権のないベートーヴェン「第九」の楽譜を添えて、らくらくピアノメソッドの弾き方を口頭でお伝えしたのです。
「ピアノなんて自分には無縁」と思っていた方が、「これなら私にもできるかもしれない!」と目を輝かせる瞬間が生まれました。そして、「楽器のある会場で体験会を開催しますので、ぜひいらしてください」とご案内することで、次のステップへとつなげることができます。
楽器がなくても、学びへの入口を作ることはできるのです。
② 場所に縛られない
「ピアノ教室はピアノ室や視聴覚室でなければ」——これも手放してほしい固定観念です。
実は私、調理室や美術室、和室でレッスンをしたことがあります。調理室は調理台が高くて弾きにくかったので、座布団を重ねて対応したこともありました(笑)。
持ち運びできるキーボードさえあれば、場所はどこでも構いません。最初は少人数から始め、人が集まってくると、「うちの空きスペースを使っていいですよ」と声をかけてくださる方が現れることもあります。喫茶店のオーナーだったり、使っていない部屋をお持ちの方だったり——思いもよらないご縁から、素晴らしい教室の場が生まれることがあるのです。
場所を探してから動くのではなく、動きながら場所が生まれてくる——そんな感覚です。
③ 人数に縛られない
「レッスンは1対1が基本」「グループは難しい」——その思い込みも不要です。
数百人への一斉体験会もあれば、1対1の個別指導もある。どんな規模にも柔軟に対応できることが、教室の可能性を広げます。
④ 金額に縛られない
「月謝は定額でなければならない」「高額レッスンは敷居が高い」——金額に関する固定観念もあります。
しかし実際には、提供する価値や場所・形式によって、料金体系はさまざまあって良いのです。定額にこだわる必要もなければ、高額を恐れる必要もありません。何を、誰に、どう提供するか
によって、適切な金額は変わってきます。
⑤ 時間に縛られない
「レッスンは30分・60分単位でなければ」——これも手放してみてください。
ある先生は、デイケア施設でこんな指導をされていました。夕方になると「帰りたい」と騒ぎ始める入居者の方がいらっしゃり、スタッフの方が対応に苦慮していたそうです。そこで、小さなキーボードを持ち出し、「そ〜れそれそれ♪」とメロディを奏でると、さっきまで騒いでいた方が「はーい」と穏やかになったというのです。
「それなら、ケアスタッフさんがメロディを弾けるようになったらもっと良いのでは?」と考えた先生は、施設に出向いて1人5分・500円
の超ミニレッスンを始めました。AさんにもBさんにも、少しずつ丁寧に。
スタッフ全員がらくらくピアノで弾けるようになると、施設全体がとても喜んでくださいました。そしてグループ傘下の別施設からも「うちにも来てください」とお声がかかり、活動の場がどんどん広がっていったのです。
5分でも10分でも、必要な場所に出向いていく——その柔軟さが、新たなビジネスチャンスを生み出します。
⑥ 指導法に縛られない
「ピアノ指導とは、効果的に上達させることだ」——この考えも、大人指導においては一面的です。
楽しみを提供すること、仲間との時間を作ること、生きがいを育むこと——指導法はその目的に応じて、いくらでも豊かに広げることができます。
まとめ——6つの視点を「空で言える」まで
今回お伝えした6つの要素を、改めて整理します。
手放すべき固定観念
① 楽器 楽器がなければ教えられない
② 場所専用の教室・ピアノ室でなければならない
③ 人数 1対1が基本・大人数は難しい
④ 金額 月謝は定額・高額は避けるべき
⑤ 時間 レッスンは30分・60分単位でなければ
⑥ 指導法 ピアノ指導=上達させること
楽器・場所・人数・金額・時間・指導法。
この6つを、目を閉じてもすらすら言えるくらい、自分の中に染み込ませてください。そうなったとき、日常のふとした場面で「ここにもチャンスがある!」という気づきが、自然と生まれてくるようになります。
固定観念を手放した先に、あなたの教室の新しい可能性が広がっています。


