なぜ病院・クリニックに医療接遇研修が必要なのか? 患者様満足度・医療安全・信頼につながる接遇力
「愛」の反対は?二つの視点から考える、ホスピタリティの原点
ホスピタリティ&マナー・ラボ代表
ホスピタリティコンサルタントの長澤さおりでございます。
「愛の反対は何でしょう?」
接遇マナー研修の冒頭で、私はこう尋ねています。
ご受講の多くの方が、
「憎しみ」「嫌い」「憎悪」
などと答えていらっしゃいます。
愛することの反対は、憎むこと。
確かに、そう考えることができます。
一方で、このような言葉もあります。
「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」
マザーテレサの言葉です。
一見すると、相反する二つの考え方です。
しかし私は、この二つはどちらも「人を大切にする」ということを考える上で、
とても重要な視点だと思っています。
そして、この二つの視点から考えていくと、
ホスピタリティとは何か、その原点は何なのか
が見えてきます。
「愛」の反対は「憎しみ」という考え方
まず、一つ目の視点です。
愛の反対は、憎しみ。
これは、とても分かりやすい考え方です。
愛する人に対しては、
「幸せでいてほしい」
「喜んでもらいたい」
「困っていたら助けたい」
と思います。
一方、憎しみを抱いている相手に対しては、
「傷つけたい」
「困ればいい」
「嫌な思いをすればいい」
という気持ちが生まれることがあります。
つまり、
相手を思う気持ちが「プラス」に向かうのが愛、
相手を思う気持ちが「マイナス」に向かうのが憎しみ
と考えることができます。
ただ、ここで少し考えてみたいことがあります。
「愛」と「憎しみ」は、正反対の感情のように見えますが、
実はどちらも相手に強い関心を向けている状態
とも言えるのではないでしょうか。
好きだから気になる。
嫌いだから気になる。
大切だから、その人の言葉に一喜一憂する。
反対に、憎しみを抱いているから、その人の言動が気になる。
つまり、愛と憎しみは正反対でありながら、
「相手を意識している」
「相手の存在を認めている」
という共通点があります。
では、もう一つの考え方を見てみましょう。
「愛」の反対は「無関心」という考え方
二つ目は、
「愛の反対は、憎しみではなく無関心」
という考え方です。
私は、ホスピタリティを考えるとき、この「無関心」という言葉がとても重要
だと考えています。
なぜなら、無関心とは、
「相手に関心を持たないこと」
だからです。
目の前に困っている人がいても、
「自分には関係ない」
誰かが不安そうな顔をしていても、
「まあ、いいか」
同僚が忙しそうにしていても、
「自分の仕事ではない」
そのような状態です。
そこには、
「どうしたのだろう?」
「何か困っているのかな?」
「自分にできることはないかな?」
という問いが生まれません。
つまり、相手の存在や変化に気づこうとしなくなってしまうのです。
ホスピタリティの反対は、「無関心」
ここから、ホスピタリティとは何かについて考えてみましょう。
ホスピタリティとは、単に「親切にすること」ではありません。
相手の存在や状況に関心を持ち、
「この人は今、何を感じているのだろう?」
「何か困っていることはないだろうか?」
「自分にできることはないだろうか?」
と考え、そして行動することです。
つまり、ホスピタリティのスタート地点には、「相手への関心」があります。
関心があるから、見る。
見るから、気づく。
気づくから、考える。
考えるから、行動する。
私は、これがホスピタリティの基本的な流れだと考えています。
これは、接客や接遇においても同じです。
決められたサービスを提供するだけではなく、目の前にいる相手に関心を持つこと。
そこから、その人に必要なことを考え、自ら行動する。
それが、ホスピタリティにつながっていきます。
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「見ている」と「見えている」は違う
私は、接遇研修の中で、
「相手を見ていますか?」
という問いかけをすることがあります。
仕事をしていると、人と接する職業の方は毎日たくさんの人を見ています。
お客様。
患者様。
ご利用者様。
同僚。
部下。
上司。
しかし、
「見ていること」と「見えていること」は違います。
目の前に人がいても、
「忙しいから」
「いつものことだから」
「自分には関係ないから」
と、相手の存在や変化に気づかなければ、見えているとは言えません。
反対に、
「今日はいつもより元気がないな」
「何か探しているようだな」
「少し不安そうな表情をしているな」
と気づくことができれば、そこには「関心」があります。
ホスピタリティは、相手を「人」として関心を寄せることから始まるのです。
「無関心」は、相手を傷つける
憎しみは、相手を傷つける感情です。
しかし、無関心もまた、人を傷つけることがあります。
例えば、
困っているのに誰も声をかけてくれない。
何度も質問しているのに、面倒そうな態度をされる。
一生懸命働いているのに、誰からも声をかけてもらえない。
こうした経験をすると、人は、
「自分の存在を認めてもらえていない」
「自分のことを大切にしてくれていない」
と感じることがあります。
特に、病院や福祉施設などでは、
患者様やご利用者様が不安や緊張を抱えていることも少なくありません。
私がサービスの健康診断(覆面調査)で医療機関などを訪れる際にも、
こうした「関心の有無」は、応対の印象を大きく左右するポイントだと感じています。
例えば、受付スタッフやメディカルスタッフが、
「おはようございます」
「初めてでいらっしゃいますか?」
「ご案内いたしましょうか?」
と声をかける。
たった一言の声かけでも、そこには、
「あなたの存在に気づいています」
「あなたを気にかけています」
というメッセージが込められています。
だからこそ、ホスピタリティにおいて大切なのは、「何か特別なことをする」ことだけではありません。
相手の存在に気づき、関心を持ち、それを言葉や態度、行動で伝えること。
それもまた、大切なホスピタリティなのです。
「関心を持つ」ことは、ホスピタリティの第一歩
私は、ホスピタリティを難しく考える必要はないと思っています。
まずは、「相手に関心を持つ」こと。
それだけでも、見える景色は変わります。
「この人は何を求めているのだろう?」
「今、どんな気持ちなのだろう?」
「困っていることはないだろうか?」
「自分にできることはないだろうか?」
この問いを持つことで、私たちの目と心は自然と相手に向きます。
そして、
観察する。
↓
想像する。
↓
行動する。
この一連の流れが、ホスピタリティへとつながっていきます。
ホスピタリティとは、「あなたを大切にしています」という行動
「ホスピタリティ」と聞くと、
おもてなし。
感動のサービス。
丁重な応対
そういったものを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、これらも大切です。
しかし、その根底にあるものは、
「相手を大切に思う気持ち」
ではないでしょうか。
そして、その気持ちは、行動にして初めて相手に伝わります。
「大丈夫かな」
「困っているのではないかな」
「何かしてあげたいな」
と思っているだけでは、相手には伝わりません。
だから私は、
ホスピタリティとは、「あなたを大切にしています」という気持ちを、具体的な行動に変えること
だと考えています。
これは、接客や接遇にも共通する大切な考え方です。
愛することも、ホスピタリティも、「関心を持つ」ことから
「愛の反対は憎しみなのか?」
それとも、
「愛の反対は無関心なのか?」
答えは、一つではないのかもしれません。
憎しみは、相手を傷つけたいという強い感情。
無関心は、そもそも相手に関心を持たない状態。
どちらの視点から考えても、私たちが大切にしたいのは、
「相手を一人の人として大切にすること」
ではないでしょうか。
そして、その「大切に思う」という気持ちを、日々の仕事の中で具体的な行動に変えていく。
それが、ホスピタリティです。
相手を見る。
相手を想像する。
相手のために一歩動く。
その一つひとつの小さな行動が、
「気づいてくれてありがとう」
「声をかけてもらえて安心した」
「あなたに応対してもらってよかった」
という、相手の喜びにつながっていきます。
そして私は、ホスピタリティとは、相手を幸せにするだけではなく、
**「人と人との関係を豊かにする力」**
だと思っています。
仕事は、ただこなすものではありません。
誰かの役に立ち、誰かに喜んでもらい、その積み重ねの中で、自分自身も成長していく。
そして、職場や組織も、より良いものへと変わっていく。
そのような力が、ホスピタリティにはあるのではないでしょうか。
だからこそ私は、人と接する仕事に携わるすべての方に、
接客や対応だけで終わるのではなく、
「相手に関心を持つ」というホスピタリティの原点
をより大切にしていただきたいと願っています。
相手の存在に気づく。
相手を一人の人として認める。
そして、その人のために、自分にできることを考え、行動する。
その行動は、相手の喜びや安心につながるだけではありません。
「ありがとう」と言っていただけた。
「あなたに応対してもらえてよかった」と言っていただけた。
そのような経験が、やがて自分自身の自信となり、
「この仕事を選んでよかった」
「この仕事をしていてよかった」
という、自分自身の仕事への誇りや喜びにもつながっていくのです。
つまり、
相手の存在を認め、大切にすることは、
同時に自分自身の存在意義を感じることにもつながるのです。
相手を幸せにすることと、自分が幸せになること。
一見すると別々のことのようですが、ホスピタリティを通して、その二つはつながっていきます。
「よろこんでもらうよろこび」を原点に。
私はこれからも、人と人との心が通い合い、
互いの存在を認め合える、
あたたかな社会づくりに貢献してまいります。
よろしければ、ホスピタリティ&マナー・ラボ公式サイトもご覧いただければ幸いです。
http://www.hospitality-m-l.com/
岡山を拠点に、岡山県内をはじめ、東京・大阪・兵庫・広島・香川・高知など、
中国・四国・関西エリアにおいて、
接遇マナー・ビジネスマナー・コミュニケーション研修の講師
ホスピタリティコンサルタントとして、接遇コンサルティングを務めております。


