接客と接遇の違いとは?ホスピタリティを高める接遇力
「対応」と「応対」の違いとは?
「接客」と「接遇」の違いから
ホスピタリティ&マナー・ラボ代表の長澤さおりでございます。
前回のコラムでは、「接客」と「接遇」の違いについてお伝えしました。
接客とは、お客様の要望に応えること。
接遇とは、人を尊重し、思いやりの心を持って接すること。
この違いを理解すると、人と関わる仕事において大切にすべき視点が見えてきます。
そして今回は、もう一歩深く考えてみたいと思います。
それは、「対応」と「応対」の違いです。
この二つも似た言葉ですが、その意味には大きな違いがあります。
「対応」と「応対」の違い
「対応」は、事柄に向き合うこと
対応とは、起きた出来事や要望、問題に対して、適切に処理・対処することです。
例えば、
・お問い合わせに回答する
・手続きを行う
・クレームの内容を確認する
・道順を案内する
このように、求められたことに対して正しく行動することが「対応」です。
仕事を進めるうえで、正確な対応は欠かせません。
スピード、正確さ、公平性は、信頼を築くための大切な基本です。
「応対」は、人に向き合うこと
一方、応対とは、人に心を向けて接することです。
単に要件を処理するだけではありません。
「この方は困っていないだろうか。」
「安心していただけているだろうか。」
「もっと分かりやすくお伝えした方がよいのではないか。」
相手の気持ちや状況を考えながら関わることです。
実際に、私がサービスの健康診断(覆面調査)で訪問した総合病院でも、
この「対応」と「応対」の違いを感じる場面がありました。
レントゲン室の場所が分かりにくく、受付で尋ねた場面です。
【対応】
「レントゲン室は、あちらの廊下を進んで右側です。」
場所を伝えることで、目的は達成しています。
しかし、その病院の受付スタッフの方は違いました。
【応対】
「初めてお越しですか。少し分かりにくい場所ですので、ご案内しますね。」
そう笑顔で声をかけ、わざわざ受付を離れて、
レントゲン室まで案内してくださいました。
患者様にとっては、単に場所が分かっただけではありません。
「迷っていたことを気にかけてもらえた。」
「不安な気持ちに寄り添ってもらえた。」
という安心感につながります。
どちらも「レントゲン室へ行く」という目的は達成できます。
しかし、そこにある違いは、
対応は、目的を達成するために必要な行動をすること。
応対は、相手が安心して目的を達成できるよう、人に心を向けて関わること。
なのです。
大切なのは、
「案内できたか、できなかったか」
だけではありません。
“その瞬間、患者様はどのような気持ちになったのか”
を見ることです。
私は、この違いを、
対応は「事に向き合うこと」。 応対は「人に向き合うこと」。
とお伝えしています。
そしてホスピタリティは、すべての根底にあるもの
では、応対ができれば十分なのでしょうか。
私は、そうではないと考えています。
なぜなら、心のこもった応対を生み出すためには、
その根底に「相手を大切に思う気持ち」が必要だからです。
その心こそが、ホスピタリティです。
私はホスピタリティを、
「相手の心をプラスにするために、自ら考え、自発的に働きかける姿勢や行動」
と考えています。
ホスピタリティは、決して特定の人だけが持つスキル、
また感動を演出する特別なサービスではありません。
日々の仕事の中で、
「安心していただきたい。」
「気持ちよく過ごしていただきたい。」
「少しでも笑顔になっていただきたい。」
そのような思いを持ち、自分にできることを考え、行動することです。
その思いがあるからこそ、相手に寄り添った応対が生まれます。
「よろこんでもらうよろこび」という循環
ホスピタリティは、相手のためだけにあるものではありません。
相手の笑顔や「ありがとう」、安心や信頼は、やがて自分にも返ってきます。
「喜んでいただけた。」
「お役に立てた。」
その実感が仕事への誇りとなり、自信となり、
「この仕事をしていてよかった」
という働く喜びにつながります。
私は、この循環を、
「よろこんでもらうよろこび」
と表現しています。
接客から接遇へ。そしてホスピタリティへ
人と接する仕事では、正確な対応や接客はもちろん大切です。
しかし、それだけでは人の心は動きません。
相手を一人の人として尊重し、思いやりを持って応対すること。
そして、その根底にホスピタリティマインドを持つこと。
その積み重ねが、信頼を育み、選ばれる組織へとつながっていきます。
私は、次のように伝えています。
接客とは、相手の要望に応えること。
接遇とは、相手を尊重し、人として大切に接すること。
対応とは、事柄に向き合い、正確に処理・対処すること。
応対とは、相手に心を向け、一人の人として大切に接すること。
ホスピタリティとは、相手を喜ばせたい、幸せにしたいという思いを持ち、自ら考え行動すること。
接客を頑張る人は素晴らしい。
でも、接遇の意識を持つことで、その仕事は“作業”から“価値”へ変わります。
多くの方が、日々一生懸命に対応や接客に取り組んでいらっしゃいます。
その姿勢は、本当に素晴らしいことです。
しかし、私はこう感じています。
一生懸命働いていらっしゃるのに、「対応」や「接客」だけを頑張っているのは、とてももったいない。
なぜなら、接遇やホスピタリティの視点を持つことで、
仕事の意味そのものが変わるからです。
接遇を意識すると、「相手を見る力」が育つ
接遇とは、相手を人として尊重し、大切に接することです。
同じ仕事をしていても、接遇の意識を持つ人は視点が変わります。
「何をすればいいのか。」
だけではなく、
「この方は何を感じているだろうか。」
「何に困っているだろうか。」
「どうすれば安心していただけるだろうか。」
と考えるようになります。
例えば、受付でお客様をお迎えするとき。
ただ挨拶をするだけではなく、
「今日は初めてのご来館ではないだろうか。」
「迷われていないだろうか。」
「不安な気持ちで来られていないだろうか。」
相手の立場に立って考えることができます。
そこには、単なる作業ではない「人と人との関わり」が生まれます。
相手を大切に思う気持ちが、接遇となって表れるのです。
接客や対応は、仕事を正しく行うために必要な力です。
接遇や応対は、人を大切にする姿勢です。
そして、その根底にあるホスピタリティマインドが、人の心を動かし、信頼を育みます。
誰かに喜んでいただけた。
誰かのお役に立てた。
その積み重ねは、相手だけではなく、自分自身にも喜びや誇りとなって返ってきます。
この循環こそ**「よろこんでもらうよろこび」**です。
仕事は、ただこなすものではありません。
誰かを幸せにし、自分自身も成長し、職場や組織をより良くしていくものです。
だからこそ私は、人と接する仕事に携わるすべての方に、
接客や対応だけで終わるのではなく、
接遇とホスピタリティの視点を大切にしていただきたいと願っています。
そして、経営者・管理者の皆様には、
スタッフ一人ひとりの「人を大切にする力」を育む環境づくりにも目を向けていただきたいと願っています。
接遇やホスピタリティは、一人の努力だけで根付くものではありません。
組織全体で学び、共通の価値観として育んでいくことで、
患者様・ご利用者様・お客様から選ばれる組織へと成長していきます。
「接客はできている。でも、もっと信頼される組織になりたい。」
「スタッフの接遇力を高め、組織全体のサービス品質を向上させたい。」
そのようにお考えでしたら、ぜひ一度、ご相談ください。
私はこれからも、「よろこんでもらうよろこび」を原点に、ホスピタリティを通して、人を幸せにし、働く人を輝かせ、組織を強くするお手伝いを続けてまいります。
よろしければホームページもご覧いただけますと幸いです。
http://www.hospitality-m-l.com/
岡山を拠点に、岡山県内をはじめ、東京・大阪・兵庫・広島・香川・高知など、
中国・四国・関西エリアにおいて、
接遇マナー・ビジネスマナー・コミュニケーション研修の講師
ホスピタリティコンサルタントとして、接遇コンサルティングを務めております。


