農業と知的財産(1)
前回に続いて「時代の大転換期」における中小企業の特許・商標等の活用戦略について書きたいと思います。
時代の大転換期では、新しい商品やサービスが生み出されますが、一方において、それまでの商品やサービスも少なくとも一部は残存するとともに、これらの商品やサービスはすでに成熟した域に達していると言えます。
例えば、ある商品のライフサイクルに着目した場合、初期の段階では、新技術による新しい機能等の側面が注目されます。しかし、このような技術的な側面は、次第に成熟することになります。そして、この後は、デザインやネーミング等に注目が集まり、このような外観的側面の価値が相対的に高まってきます。
商品における技術的側面の場合、その性能や品質を確保する必要があり、他社と同様の商品は、同等或いはそれ以上の水準を確保する必要があります。このため、資金面や時間面、さらに労力面でも一番大変な部分になります。
一方、デザインやネーミングは、いわば、紙と鉛筆があれば創作することが可能であり、資金的にはさほどお金はかかりません。したがって、中小企業にとっては大きな武器になります。
この場合、知的財産権の視点からは、デザインは意匠権により保護され、ネーミングやマスコットマーク等は商標権により保護されます。
消費者(需要者)にとって、商品のデザインの善し悪しは、購買意欲を高める重要な要素になるとともに、ネーミングやマスコットマーク等は、繰り返し使用することにより信用が化体され、リピート購入に繋げるためのブランド力を高めることができます。
中小企業やスタートアップ企業等にとって、知財サイクルの観点からは、初期の段階では、技術を保護する特許権や実用新案権の確保や蓄積は、相対的に重要度が高く、企業の技術力や信用力を確保する上で大きな武器になりますが、頑張ってこの初期段階を乗り切ることができれば、この後は、デザインを保護する意匠権やネーミング等(ブランド)を保護する商標権を確保することが、中小企業やスタートアップ企業の発展を後押しする重要な武器になります。
このような知財サイクルの観点からも一つの商品は成熟することになります。もちろん、これらを同時に進める戦略、いわゆるミックス戦略により進めることもできます。そして、一定の保護期間(特許権の場合は出願日から20年間)を経ることにより、権利は満了するため、特許権や商標権等により増額できた利益を次の商品の開発投資に振り向け、知財サイクルと商品サイクルを車の両輪として長期的に進めることができます。
特に、現在のインターネットが普及した時代では、意匠権(デザイン)や商標権(ブランド)を活用する戦略も、特許権を活用する戦略と同様にビジネス戦略の重要なツールになります。