知財雑感 … 「IoT」関連発明と特許
今年のはじめに書いたコラム「これでいいのか日本」の中で、日本の特許出願件数が中国や米国に比べて芳しくない点について触れました。このときの件数は、日本全体の件数を見たものであり、どちらかというと大企業のデータが大きく反映しています。
一方、中小企業に着目した場合はどうでしょうか。今回、中小企業に着目したデータを見てみたいと思います。
下のグラフ(出典:特許庁)は、中小企業による特許出願件数の推移を示しています。
このグラフから判るように、中小企業の場合、ここ最近では毎年増加する傾向が続いており、2015年の件数は、2011年の件数に対して、約16%増加しています。
ところで、2015年を見た場合、日本全体の特許出願件数は、317,647件であり、中小企業の特許出願件数は、上のグラフから36,017件です。したがって、中小企業の出願件数の割合は、全体の約11.3%です。
日本の場合、中小企業の全体数は約420万社(約99.7%)であり、従業員数は全体の約3割になっています。一方、大企業は、約1.2万社(約0.3%)存在し、従業員数は全体の約7割を占めています。
単純に見れば、0.3%の企業が、88.7%の特許出願を占めていることになります。新しい技術や改善が逐次生まれている視点に立てば、同じ人間同士が働いているにも拘わらず、この数字はあまりにもバランスを欠いた数字に見えてしまいます。
中小企業の特許出願が増加していることは、歓迎すべき良い兆候の現れとは思いますが、2011年ごろといえば、国の施策として、知財に対する無料相談等の様々な支援を行う知財総合支援窓口や特許出願に関連する印紙代の減免制度拡充など、中小企業に対する支援を本格化させた時期にも重なるため、この施策の効果が現れてきていると見ることもできます。
日本には、420万社もの膨大な数の中小企業が、同じ土俵の上で頑張っていることを考えれば、中小企業の人達が自らの力により更に出願件数を押し上げるとともに、ビジネスへの活用を図りつつ、企業としての望ましい成長につなげて行ってほしいと思います。また、我々は様々な視点からその手助けをしていかなければと思っています。